日下紀子『不在の臨床-心理療法における孤独とかなしみ』2017・創元社 | ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人)  

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 2017年のブログです
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 日下紀子さんの『不在の臨床-心理療法における孤独とかなしみ』(2017・創元社)を読みました。
 日下さんの本は初めて読ませていただきましたが、少し難しかったものの、テーマが興味深く、一所懸命に読ませてもらいました。
 メインテーマは、心理療法における不在について、ということだと思いますが、それに伴うクライエントの孤独とかなしみ、そして、「待てる」ようになることの意味、などではないかと思います。
 日下さんはこれらのテーマを、ケースをもとにていねいに説明されています。
 日下さんは、まず、現代社会は、「待つ」ことができにくい社会になっていることを指摘し、フロイトさんの、いないいないばあー、やウィニコットさんの、ひとりでいる能力、などを挙げて、「待てる」ことの大切さを説明します。
 さらに、心理療法における、喪の作業、に言及し、かなしみを味わうことの大切さを指摘されます。
 そして、葛藤を葛藤として抱え、持ちこたえることで、心理的に成熟することを説明されます。
 その際、セラピストがふらふらになりながらも、なんとか生き延びること、これが重要だ、と指摘されています。
 かなしみを味わうこと、葛藤を抱えて生きること、なんとか生き延びること、などは、じーじもこれまで、いろんな場面で大切なことだと感じてきましたし、ブログの中でも少しは触れてきていると思いましたが、日下さんの本を読んで、これらが一本の線で結ばれてきたような印象を持ちました。
 まだまだ読みが甘いと思いますし、自分のケースとの照合も不十分だと思いますが、これからも実践を深めて、さらにこれらのテーマを考えていきたいと思いました。     (2017 記)

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 2019年冬の追記です
 今ごろになって気がつきましたが、よく考えると、「待つこと」も中井久夫さんがシェイクスピアさんに見出した「わからないことに耐えること」につながりそうです。

 臨床の世界は奥が深いです。    (2019.2 記)