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「そうだよ、やめなさい、いじめは駄目だよ、みんなあ!逮捕しちゃうぞ」
どっと女たちの笑い声が聞えました。課長は、かの美男刑事を見た。刑事は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
「つまんないなあ・・・」
女の一人がつぶやくと同時に、また、タイヤのパンク音がしました。
ぱん、ぱん、と二発鳴ったあと、少し間をおいて、今度は爆竹が鳴るように、続けて数え切れない破裂音が鳴りまくった、
「くうわああああ」という男の恐ろしい悲鳴が、その破裂音の合間をぬって、一瞬聞え、しかしすぐに、ぱぱぱぱぱぱぱん、という連続射撃の音にかき消された。
静寂・・・
硝煙の、鼻をつくにおいが、あたりにたちこめました。
「もう、終わり?・・・」
ぽつりと女の声。
「ねえ、もう、おわりなのかしらあ?」
すねるような女の声・・・
彼女たちは、手に手に短銃を持って、警視の方を見た。警視はにやりと笑い、
「もう、弾がないでしょ?」
「ないの?あるでしょ、まだ。頂戴よ。今日はもう終わりなの?ねえ、頂戴よ」
警視は、困ったねえ、という顔で肩をすくめ、課長の顔を見ました。
「次は誰をやるの?それとも、終わりに、します?」
その目は、終わりでなければ、課長が次の獲物だといっていたのです!課長は背筋が凍りつき、完璧に固まった。
「終わりにしたいなら課長さん、早くすませましょう、話してください、汚職のこと」
「そ、そんなことをいわれても、私は、何も・・・」
「何も?知りませんか?それじゃあ、終わりにならないぜ」
迫力のある顔で、警視が唸った。
そのとき、ぴぴぴ、という音。携帯?課長の胸ポケットで携帯のベルが鳴ったのです。
「お?何か鳴ってますよ、課長。電話だ。出てもらっていいですよ。ひょっとして、何かのてがかりになるかな?さあ、でなさい」
強制され、課長は震える手で携帯を懐から取り出す。
「も、もしもし・・・」
携帯の向うから、聞き覚えのある声がしました。
-課長、おひさしぶりです。-
「 熱田くん!」
-いま、よろしいでしょうか。おとりこみ中でしょうか。でも、いいかげん、うんざりしてきたんじゃありませんか、課長?-
「うん。まったく、そうだ、とりこみ中だ、うんざりだ」
・・・・つづく