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「とんでもない!」
すると重低音の男が、
「カバン・・・、よこせ」
課長はカバンをさし出す。
すかさず、カバンをあけて逆さにし、中身を路上にぶちまけました。
ビジネス雑誌、新聞、ボールペン、捨てずにもっていたピンク関係のガイドブック(上野の風俗ガイドセンターの店頭に置いてあった無料のやつ)もある、恥ずかしい、こんなもの捨てておけばよかった・・・しかし、「書類」はない。
「もって・・・ない・・・のか。どこへ、隠した・・・?」
「隠した、なんて・・・」そのとき、課長はふと思いついたのです、ひょっとして、幽霊のいっていた、不正がらみの書類か?
「どこへ・・・、隠したんだ?」
「隠してません、どこにも。本当に私は」
「何の・・・書類だと・・・思ってる?」
「それが全然、何も、私はわからなくて」
背の高い男が機敏に動き、課長をはがいじめにして捕え、刃物を首におしつけました。
「馬鹿にするなといってるでしょ!めんどくさいのはだめだよ。さっといえよ、さっと!」
課長は気を失いそうになりながら、
「ふぉ、ふぉ、ほんとうなんです、う私も、きえ、きえ、今朝、しゃ、しゃがしたんですが、ぬ、あ、なかった。なかったです」
「何を・・・、さがした・・・のだ?」
「しゃ、しょ、しょりうい、しょるい!」
「何の・・・、書類・・・?」
「お、おしょ、おしょ、おしょっくしょん!」
「汚職・・・・?」そういい、背の低い顔のでかい男は、カエルのように横一文字の口をぱっくりと開いて、笑ったかのように、目を細くした。
「よく・・・、知ってる・・・、おまえ、・・・知ってる・・・、な?」
「ねえ、おしょくって、何?」
背の高い男が、でか顔の男にききました。
でか面は、もっと目を細めて、ただの線にしてしまい、空を仰ぎ、沈没しかかった豪華客船が夜霧の海に流す汽笛のような重低音で、
「ぼぼぼ・・・ぶわおお、・・・ぶわおー・・・んんーん」
こちらも、かなりテンションが上がっています。
「なんだよ、馬鹿にしてるよ、もう殺していい?刺したいよ、ぼく、ここ、刺したいんだよ切りたいんだよ、めんどくさいのいやなんだよ、ぼく」
刃物は、ぐいぐいと、課長の首もとに押しつけられた、刃を寝かせているから、どうやら大丈夫なだけだ、
少しでも立ててしまったら、ざっくりと切り込み、頚動脈が切断され血液がシャワーのように噴き出す!
・・・・・つづく
エラー発生!
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