大手町のゴースト2024 17 巨額の不正? | 新庄知慧のブログ

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私のいろんな作文です。原則として日曜日、水曜日および金曜日に投稿します。作文のほか、演劇やキリスト教の記事を載せます。みなさまよろしくお願いします。

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「・・・」

 

「私は、どうも幽霊か何かです」

 

「幽霊?」

 

「どうでしょう?」

 

「しかし足があります」

 

「確かに。でも存在はないようです」

 

「あるじゃありませんか、そこに、そうして」

 

「今はね。でも、随分ながらく、真っ暗だったようです。それで、自分と同じ、真っ暗な人々も見た」

 

彼は、話しました。

 

それは、ビル街の底を蟻の群のように日々歩き、働き、消えてゆく人間たちの見聞録でした。

 

課長は仕事を手伝ってもらったてまえ、その話の聞き役になりました。

 

おしつけがましい感じはしなかったのです。言葉が自然に流れ出し、抵抗もなく課長の耳に入ってくる。

 

しかし、どうも普通の感じではないのは確かでした。が、なぜか潮騒の音が体にしみこむように、聞けてしまうのでした。

 

「トイレの中で、どうしようもなくうめいて吠えていた人もいます。

 

人間です。

 

小さな声ですが、鋭く、鳴いていました。それはまるで動物だった」

 

「メンタルのひと」

 

「そういうんですかね。それから、ビルの高い窓から、人が降ってゆくのも見ました。何人も、何人も」

 

「そんなに飛び降り自殺がありましたでしょうか」

 

「闇から闇に消されてしまった飛び降りも多かったようです」

 

「・・・・?」

 

「あ!」

 

「どうしました?」

 

「私も、暗い中を、一直線に墜落した気がします」

 

「そうですか・・・」

 

 自分はかつて飛び降り自殺した、とでもいいたいのだろうか。まるでおかしな話だ。

 

しかし、彼のセリフは断片的で静かながら、着実で基礎がしっかりしている経験談に思えました。

 

ちょっと、仕事を頼みすぎたか。それで疲れちまったか、なにかに憑かれちまったか。

 

「あ。いけない。つまらない話でした」

 

彼は自嘲の笑いをもらし、首を振り、

 

「それで、ですね。気づいたことを申し上げましょう」と、真顔になりました。

 

「気づいたこと?」

 

「わりに重要なことです」

 

「重要?何ですか」

 

「御社のビル工事は、巨額の不正につながっているようです」

 

「はい?」

 

・・・・・つづく