大手町のゴースト2024 12 私は私がわからない | 新庄知慧のブログ

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私のいろんな作文です。原則として日曜日、水曜日および金曜日に投稿します。作文のほか、演劇やキリスト教の記事を載せます。みなさまよろしくお願いします。

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すると、「ぼっ」と目の前に閃光が見えました。

 

赤色ランプ光線を照射されたかのように、あたりが真っ赤になりました。

 

しかしそれは本当に一瞬のことで、すぐ、真っ暗になりました。

 

漆黒の闇。

 

「!」

 

停電?違うか。「電気」とかいったから、電気を切りやがったか?

 

そして、声がしました。

 

「わからない」

 

声。闇の底からの、ひっそりした声でした。

 

「わからない。・・・九階? ・・・三井菱物産?・・・わからない」

 

それはドアの向うから聞える声でした。

 

「それで、あちらこちら歩いたのだ。わからない」

 

「・・・」

 

その、意外に落ち着いた相手の声に、課長はかえって動揺してしまいました。そして闇から声は課長にたずねて、

 

「あなたは総務課長・・・」

 

「・・・」

 

「さっき、そう、おっしゃいましたね」

 

「ええ」

 

「私に、見覚えはありませんか」

 

「見覚え?」

 

見覚えったって・・・ドアにさえぎられ、しかも今は真っ暗闇じゃないですか。

 

しかし相手は続けて、

 

「あなたに、これから、おたずねしてもいいですか」

 

「おたずね?」

 

「はい。私はわからないのですよ。何もかも」

 

「わからない。どういうことです。ご自身のこととか、所属部署とか、ですか」

 

「そうですね」

 

「ご記憶を喪失されましたか」

 

「そういうことでしょうか?」

 

「そんな。私にきかれても困ります・・・九階に行かれてはいかがです。それで、守衛さんに連絡してください」

 

「九階?なぜ?」

 

「だってあなた、三井菱の方じゃないのですか?三井菱様の情報システム部。そうききましたよ」

 

「そうですか。どなたから」

 

「うちの部下です」

 

天野調査役の顔が浮びました。舌をだしました。がせねたか?ありそうなことです。課長は不安になりました。

 

さらに、ドアの向うの声はいいました。

 

「総務課長様ですね」

 

「そうですよ」

 

「どうも気になる」

 

「何がです」

 

「あなたが」

 

「・・・・・・?」

 

 

・・・・・つづく

 

 

 

 

 

 

関係なきおまけ。ききたくなってしまいましたので添付。