製氷室のマリア25 この子たちは、ここが、こう | のむりんのブログ

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私のいろんな作文です。原則として日曜日、水曜日および金曜日に投稿します。作文のほか、演劇やキリスト教の記事を載せます。みなさまよろしくお願いします。

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それは車体のどこもかしこもが四角い自動車だった。いわゆるジープの一種で、色は黒だった。車体がもともと黒く塗られているのか、排気ガスや泥をかぶりつづけながら一度も洗車したことがないせいで黒いのか、よくわからなかった。

 

その自動車は、目に突き刺さる金色のライトを輝かせ、装甲車みたいな勢いで、私たち3人が平和に缶コーヒーを飲んでいるベンチの前まで来てとまった。

 

彼女は、凍りついたような、青ざめた顔になった。山猿少年は、目に狂暴な色をあらわした。

 

私は、非現実の世界から現実に帰った気持ちだった。缶コーヒーの幻想から、ジープの現実…?つまり、たかが缶コーヒーに、これほど感動しているような変な気持ちは、やはり変なんだ、と、このジープの騒音が怒鳴りつけている感じがした。

 

ジープのドアが開き、男が降り立った。

 

「何よ、おまえら!」

 

男は地の底から響いてくるような迫力ある声でいった。

 

「何してる?」

 

怪訝な表情で、困ったもんだといいたげだった。

 

彼女も山猿も、凍ってしまったみたいに身動きせず、男を見たまま無言だった。

 

男は20代半ばくらいの年齢に見えた。身長は180センチくらいか。髪の毛はやや長く、だらしない感じだが、それでもどうやら七三に分けていた。

 

眉は太くて濃く、目はぱっちりしていて、口もとには少し無精ひげがあった。薄いベージュ色の建設会社の社員のような上着に、同じ色のズボンをはいて、黒いゴム長靴をはいていた。服の胸のあたりを見ると、朱色の刺繍で、「されむ町」という字があった。

 

私はいった。

 

「コーヒー、飲んでいるんです」

 

「あんた誰?」すかさず男はいった。

 

「旅行者です」私は答えた。「道に迷ってしまって。こごえてたところを、この人たちに救われて。今、一休みしてたところで…」

 

「そう」男は、胸ポケットから煙草を出しながら言った。「どこ行くとこだったの」

 

「さあ」

 

「さあ、って…。この子らといっしょにいたら、凍死するとこだったよ、あんた。あんた、なんも知らねえから、仕方ないけどさ」

 

「凍死?」

 

「この子たち、ここが、こうだから」煙草を持った手を、頭のあたりでくるくる回しながら言った。

 

「そうですか?」

 

「そうだよ。知らないから仕方ないけどさ。逃げてきたのさ、この、クマと、ぼんず」

 

山猿は敵意の目で男を睨み、うなり、飛びかかろうとするような姿勢になった。男は煙草に火をつけながら、凄みのある声でいった。

 

・・・・・・つづく

 

 

 

この男、木枯らし紋次郎か?

やはり、もう、旅にでなければいけませんね!

木枯らし紋次郎は上州にったごおり三日月村の貧しい農家に生まれたという 

10歳のときに故郷を捨てその後一家は離散したと伝えられる

天涯孤独の紋次郎がなぜ無宿渡世の世界にはいったかはさだかでない

・・・でしたか