梟塚妖奇譚 ・ 火車 【七】 | ぼくはきっと魔法を使う

ぼくはきっと魔法を使う

半分創作、半分事実。
幼い頃の想い出を基に、簡単な物語を書きます。
ちょっと不思議な、
ありそうで、なさそうな、そんな。

さても北棟、職員室。

職員室にはぼくたち同様、明日の配布資料の運搬を担任に命じられた生徒たちが何組かいた。

文句を言う男子生徒と、それを軽くあしらう教師を横目に、ぼくたちは担任から配布資料を受け取った。

確かに一人で運ぶには無理のある量だ。

それらを三人で手分けして運ぶ。

今来たルートをなぞり、別棟の教室まで戻るのだ。


葛城の話は未だにぼくの夜更かしの件が気になるらしい。

「千昭くんも気になるよね」なんて言いながら、ぼくを先頭に教室へ向かう。

いつの間にか柚原の呼称が千昭くんになっていた。

後ろを振り返り見る。柚原は葛城の話に愛想笑いで答える。

彼の風に美しく馴染む彼の髪は元々色素が薄いようで、赤みがかって見える。

その髪は耳や首筋が隠れるほど長く、細身の体と相まって遠目にみると女の子に見えなくもない。

――柚原千昭か。

彼に話せば何か判るのではないかと一瞬でも考えた自分自身を心の中で嘲笑した。

柚原が「見える」という噂を信じ、ぼくの昨日の体験を彼に話したところで、ぼくの腰抜けで情けない話になるだけ。

何の解決にもならないだろう。

だが、気になると言ったら嘘になる。

この件で、ぼくは一晩眠れなかったのだ。

噂の真偽を――


「よし。話そう」

「え」

そんなに聞きたいなら教えてやろう。

そう言ってぼくは話を始めた。



梟印1