先日、小松原さんのライブが近くで開かれたので、鑑賞に行ってきました。
このお話は小松原さんの『お釈迦様の花供御』という曲を聴いて、僕が想像した情景をお話に直したものです。
しばらくこの、小松原さんとのコラボシリーズ(?)が続くと思います。
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昔々、江戸の町の外れに小さな村がありました。
その小さな村のそのまた外れで、その夫婦は暮らしていました。
男の方は生まれつき体が弱く、仕事もろくにできませんでした。
そのため、二人はとても貧しい暮らしをしていました。
しかし、女は男を労わり、貧しいながらも幸せに暮らしていたのです。
そんな男がある日、ついに病に倒れてしまいました。
貧しいため医者にかかるお金も無く、女は布団に横たわる男をただただ見つめ、途方に暮れていました。
そこへどこからともなく、男の枕元に一筋の光が差し込みました。
そしてそこに、お釈迦様が現れたのです。
お釈迦様はこう言いました。
「村の東の外れの森の中、その奥地に湖がある。そこに咲く一輪の赤い花に祈りなさい。もしその花びら全てが自然と散った時、夫の病はすっかり治るであろう」
女は早速森へと出かけました。
森の奥にはお釈迦様の言う通り、小さな湖があり、その岸辺には一輪の赤い花が咲いていました。
女は毎日そこに通い、懸命に祈り続けました。
しかし、一向に花びらは散ろうとしません。
そればかりか、男の病状はどんどん悪化していきました。
耐えかねた女は、ついにその花びらを自らの手で全て落してしまいました。
するとそこへお釈迦様が現れました。
「どうしてもう少し我慢が出来なかった。お前の夫はもう助からんだろう」
慌てて家に帰ると、布団の中には息絶えた男の姿がありました。
女はその場に泣き崩れました。
すみません、すみません…
女は何度も何度も、その言葉を呟いていました。
世が明けるまで、何度も何度も。
そして、慙愧の念に駆り立てられた女は、ついにその湖に身を投げてしまったのです。