婚約の輪 | ぼくはきっと魔法を使う

ぼくはきっと魔法を使う

半分創作、半分事実。
幼い頃の想い出を基に、簡単な物語を書きます。
ちょっと不思議な、
ありそうで、なさそうな、そんな。

数の秘密と不思議な生き物たちが共存する世界、ライド。

それは、人間の知らないところにひっそりと存在する世界。



ライドの東にはとても広い草原があります。

そこにひっそりと暮らしているのは、コルボックルという小人達。

ライドに棲むどの種族よりも知能が高い彼らは、村を作り、農作物を育て、平和に暮らしています。


そんな彼らの中には結婚にまつわる、古い言い伝えがあります。

それは、お互いの婚約指輪にある数字を刻むと、一生別れることなく仲良くいれる、という言い伝えです。

その数字とは“婚約数”です。


婚約数とは、異なる自然数の1とその数自身を除いた約数の和が、互いに他方と等しくなる自然数のことをいいます。

例えば、一番小さな婚約数の組{4875}は


48:{23468121624}、その和は、2+3+4+6+8+12+16+24=75


75:{351525}、その和は、3+5+15+25=48


これが婚約数。


事実、彼らの歴史の中で、今まで離婚をしたことのある夫婦は一組もありません。


ここにレインという男がいます。

彼には今、とても愛おしい女性がいます。

彼女は名前をサニーといいます。

サニーはとても美しい女性です。

レインは小さな頃からサニーに想いを寄せていました。

しかし、問題が発生したのです。

サニーはクラウドという男性と結婚をしてしまいました。

もちろん、彼らは婚約数が刻まれた指輪を交換しました。

クラウドの指輪には“6081680”、サニーの指輪には“9345903”。

「末永く幸せでいられるように」という願いを込めて、コルボックル達が見つけた婚約数の中で最も大きな数字の組を刻みました。


これはレインがサニーに指輪をプレゼントしようとした矢先の出来事でした。

クラウドよりも、決心が一足遅かったのです。

困ったレインは村の祭司様のところへ相談に行きました。


「僕はどうしてもサニーのことが好きなんです」

「しかし、彼らはすでに婚約数の刻まれた指輪の交換をしてしまった」

「どうにかならないのですか?」

「婚約数の言い伝えを覆すことなど、出来ないだろう…」


レインはどうしても諦めることが出来ませんでした。

サニーは昔からずっと想いを寄せていた女性なのです。

そして遂に、サニーを呼び出しました。

彼女に指輪を差し出して言いました。


「僕と結婚してくれ」


指輪にはコルボックル達が発見した婚約数の中で最も小さな数字の組、“48”と“75”が刻まれています。

このとき、とても大きな雄叫びが響き渡りました。


さあ、サニーは戸惑いました。

もちろん断ります。


「私にはクラウドがいるの」


そのとき、巨大な衝撃音と共に大きな揺れがライドを襲いました。

ダイダとラボッチ、二人の完全者の決闘が行われていました。

その揺れでよろめいたサニーとレイン。

レインの手の中の指輪、それがサニーの左手の薬指に。

偶然です、偶然入ってしまったのです。


今、サニーの左手の薬指にはクラウドとレイン、二人の指輪がはまっています。


サニーは…