『もし時間があったら、私がいつも降りる駅で途中下車してくれませんか?渡したいモノがあるんです!』
数秒後、返信がきた。
『わかった。改札前にいて。』
よし。
私はクローゼットを開け、下ろし立てのコートを取り出した。
机の引き出しを開け、小さな箱を取り出した。
箱を軽く振り、コートのポケットに入れた。
姿見で襟を直し、マフラーを巻いた。
部屋を飛び出し、カギをかけた。
そして、
自転車に飛び乗り、駅へ向かった。
駅の駐輪場に着くと、メールが来た。
『今、高見駅。もうすぐ着く。』
駐輪場を後にし、寒空の下、夜空を眺める。
下弦の月が眩しい。
私は両手でハートを作り、そっと空を覗き込んだ。
月が見えた。
大丈夫、いける!
これが私流、恋のおまじない。
私は小走りに駅の改札に向かった。
あなたまではあともう少し。