キミドリ色ノ世界・2 | ぼくはきっと魔法を使う

ぼくはきっと魔法を使う

半分創作、半分事実。
幼い頃の想い出を基に、簡単な物語を書きます。
ちょっと不思議な、
ありそうで、なさそうな、そんな。

「どうぞ。」

「はい、おじゃましまーす。」

 

美紗は靴を脱いで、部屋に上がった。

細くて短い廊下を通ると、その先には決して綺麗とは言えない、しかし汚くもない悠治の部屋がある。

悠治は白が好きだ。

机も、本棚も、ギターも白色。

 

「あー!」

 

美紗が悠治の足元を見て叫んだ。

 

「何?」

「靴下ー、また左右違う種類じゃ~ん!」

 

今日の悠治の靴下は、左が緑で右が青。

 

「あっ・・・」

「ほんと、だらしないんだから。」

「いいじゃん、どうせ学校じゃ靴はいてんだし、ばれないよ。それに今日は寝坊して1限遅れそうだったんだよ。」

「はいはい。どーせまた深夜に放送してるしょぼい映画観てたんでしょ。」

「しょぼくねーぞ!昨日は『クレイマー、クレイマー』だったんだから。」

「へー、何それ?」

「知らねぇのかよ、あの・・・」

「あ、ゲームしようよ!」

 

美紗は棚に置いてあった『ぷよぷよ』のソフトを手に取った。

 

「ったく、お前が勝手に買ってきて置いてあるんだろこのソフト。さっさと持って帰れよ。」

「私、家にプレステ持ってないもん。」

 

「あー、」と言って天を仰いだ。

 

「そういやそうだったな。じゃあ何で買ったんだよ。」

 

やがて二人はゲームを始めたが、悠治は驚くほどこのゲームが苦手だった。

 

「えー!もうおしまい?」

「だーめだ。俺にはこのゲーム無理。」

「ほんと、このゲーム苦手だよね。いいや、1人対戦する。」

「腹減ったろ?なんか作るよ。」

 

悠治はキッチン・・・といえるほどのものではないが、冷蔵庫を開け、タッパーに入ったご飯といくつか野菜を取り出した。

 

「残り物のご飯とニンジン、ピーマン、タマネギがある。」

「と、いうことは?」

「そういうことです。」

 

夕飯はチャーハンだった。

悠治は料理が得意だった。

 

「相変わらず美味しいお料理ですねー、店長。」

「そう言ってもらえて光栄です、お客様。」

「これだけ料理が出来りゃ、将来奥様は楽できますなー、ね、店長。」

「ホントですよねー、お客様」

 

そんな皮肉を言いい合いもいつもの事。

夕飯を食べてから美紗が帰るのもいつもの事。

 

「じゃあ、また明日。学校でね。」

「はいよ。」

 

帰りに玄関でキスをするのもいつもの事。

 

 



1週間が過ぎた。

 

その日は悠治の家には行かず、美紗は自宅のリビングに一人座っていた。

机には首飾りが1つ置いてある。

あの、悠治曰く「民族っぽい雑貨屋」に売られていたものだ。

それをボーと眺めていた。

お風呂から上がった美紗の母親がリビングに入ってきた。

 

「あら、いたの?」

「うん・・・。」

「何?元気ないわねー・・・。それ、どうしたの?」

「あ、あぁ、これ?悠治に貰ったの。誕生日プレゼントに。」

「へー、よかったじゃない!」

 

 

美紗の誕生日だった。

先週と同じあの授業の後、悠治に紙袋を渡された。

 

『え、何?』

『わかってんだろ。プレゼント。』

『えへへ・・・。ありがと。』

 

美紗は紙袋の中を覗いた。

 

『・・・え?』

『何だよ?』

『これって・・・?』

『美紗が欲しがってた首飾りだろ?ちゃんと買ってやったぜ。』

 

悠治は得意そうに言った。

 

『どうした?ホントに買ってくるとは思ってなかったか?』

『うんん、違う。悠治・・・』



一呼吸、おいた。


『ありがと。』

『おう。じゃあ、また明日な!』

 


 

「お母さん、」

「ん?何?」

「私ね、キミドリの首飾りを頼んだの・・・。」

「え?」

 

 

机の上の首飾りは黄色だった。