ケ・セラ・セラ | ぼくはきっと魔法を使う

ぼくはきっと魔法を使う

半分創作、半分事実。
幼い頃の想い出を基に、簡単な物語を書きます。
ちょっと不思議な、
ありそうで、なさそうな、そんな。

昔々、アテナという村にガレというおじいさんがいました。

ガレの髪はすっかり抜け落ち、しかし、立派な髭をたくわえていました。

ガレにはパーラーという素敵な奥さんがいました。

しかし、パーラーは重い病気にかかり、何十年も前にガレより先に天国に行きました。

なので、ガレは村の外れの小さな家で一人で暮らしていました。

 

しかし、ガレは寂しくはありませんでした。

村一の長寿であるガレのところには、毎日のように村人がやってきて相談事をするのです。

 

「ガレ、最近俺の稼ぎが悪くて・・・。俺、このままで大丈夫かな?」

 

ガレは立派な髭をゆっくり撫でながら、決まってこう答えます。

 

「ケ・セラ・セラ。」

 

ガレにこう言われると、みんな不思議にもとってもスッキリするのです。

 

 

「私のお腹の子が来月産まれる予定なの。元気な子が産まれてきてくれるかしら?」

「ケ・セラ・セラ。」

 

予定通り次の月、彼女は元気な子供を産むことが出来たそうです。

 

 

「僕、来年から遠くの学校に行くことになったんです。だからこの村を出て一人で暮らさなきゃいけなくて・・・。上手くやっていけるでしょうか?」

「ケ・セラ・セラ。」

 

その後、彼は無事に学校を卒業して、立派な学者になったといいます。

 

 


相談に来るのは村人だけではありません。

噂を聞きつけ、遠くの村からわざわざガレに相談しに来る人もいました。

 

「私、今度新しい貿易に手を出してみようと考えているんですが、上手くいくか心配で心配で・・・。」

 

ガレはいつものように、立派な髭を撫でながら答えます。

 

「ケ・セラ・セラ。」

 

しかし、初めて相談に来る人にはこの言葉の意味がわかりません。

なのでこう聞き返します。

 

「それはどういう意味ですか?」

 

ガレは教えてくれます。

 

「『なるようになる』という意味じゃ。」

 

この商人も自信に満ち溢れた顔をして帰っていきました。

数年後、彼の貿易は大成功を収め、大金持ちになったといいます。

 

 


ガレの噂は広まり、遂には王様の耳にも届きました。

 

「そんなにすごいのか、そのガレという老人は。」

「はい、どんな相談にものってくれるという話です。」

 

王様は早速ガレに会いに行きました。

 

「どんな相談にものってくれるガレとはお前のことか?」

「そうです。」

「では私の相談も聞いてくれ。」

「もちろんです、王様。」

「実はここ最近、隣国との関係が思わしくないのだ。このままだと戦争も起きかねない。どうすればいいと思う?」

 

ガレはいつもの調子で、立派な髭を撫でながら答えます。

 

「ケ・セラ・セラ。」

「ん?それはどういう意味なんだ?」

「『なるようになる』という意味ですよ、王様。」

「なるようになる?何だその投げやりな答えは!けしからん!」

 

ガレの答えに王様は怒ってしまいました。

帰ろうとする王様をガレは引き止めます。

 

「待ってください王様、『ケ・セラ・セラ』はそんな投げやりな言葉ではありません。」

「どういうことだ?」

「『ケ・セラ・セラ』とは確かに『なるようになる』という意味です。しかしそこには、過去のことや未来のことはいつまでもクヨクヨ考えずに、もっと大らかな気持ちでいれば、自然と前向きになることが出来、きっと信じた世界が啓けだろう。こういう意味が隠されているのです。」

「ほぉ。」

「王様も隣国との関係のことをいつまでもクヨクヨ考えず、もっと大らかになってみてください。そうすれば、自然と上手くいくはずですよ。」

 

 

ガレの家から出てきた王様はとってもスッキリした顔をしていました。

そして、隣国と戦争することもなく、むしろ友好関係を結ぶことになったそうです。

 

 


ケ・セラ・セラ
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