「さあ・・・聞いたことありません。そういえば、何なんでしょうね。」
教授が紙に書いた2つの記号
『♂ ♀』
確かに何度か気になったことがあった。
これは何を意味しているのか、と。
「ふむ。」
「“♂”はもしかして・・・生殖器?ですか?」
「いや、それは違う。確かに気持ちはわかるがな。」
さすがに違ったか・・・。
先生はクルリクルリと椅子を何度か回転させた。
そしてこう言う。
「実は“♂”は火星の惑星記号だ。」
「惑星記号?そんなモノがあるんですか?」
「そうだ。惑星一つ一つに惑星記号が与えられていて、占いにも使われることがある。」
「なんでまた火星なんです?」
教授は椅子から立ち上がり、棚からファイルを取り出した。
たくさんの写真の中から教授が指したのは、真っ赤な天体だった。
「これが火星。真っ赤だろう?古代人はこの赤から戦火をイメージしたそうだ。」
「確かに赤いですねぇ」
「それ故、記号自体は槍と盾を意味している。そこから“♂”は男性を指すようになったようだ。」
「なるほど、そうだったんですか。」
「さらに火星は英語でMars(マーズ)。これはローマ神話の戦いの神・マルスに由来しているようだ。火星の名前は各地で男性の名が使われることが多い。」
「それでは“♀”は?これも惑星記号ですか?」
「その通りだ。どの惑星だと思う?」
「え?・・・さぁ。あ、でもまてよ・・・」
「うむ。」
「色・・・?いや、形・・・?名前・・・?」
「いいところまできてるぞ。」
「そうか、金星!」
「ふむ。何故?」
「金星は英語でVeuns(ヴィーナス)です。」
「そういうことだ。」
教授はファイルの別のページを開き、一枚の写真を指した。
「宵の明星と呼ばれている金星だ。その美しさ故、各地で女性の名前があてられている。ヴィーナスはローマ神話の神だな。」
「では、この記号の意味は?」
「これは手鏡の形を意味したものだ。それが転じて女性を表す記号となった。」
「なるほど~!なんだか、いつもいつも『なるほど』って言ってる気がしますが・・・先生、」
「どうした、秋川君?」
「月末の学会の準備はいいんですか?」
「ん~、そうなんだが、こっちの方が性に合っているような気がするよ。」
「ちょっと先生・・・困りますよ。」
「わかっておる。 あ・・・」
「次はどうしたんですか?先生?」
君は知っているかね・・・