２０歳のとき心理療法を学びはじめた。
先生が潜在意識の奥にある、
本人さえ知らなかった
秘密のストーリーを引き出すのを
何度も何度も目の当たりにした。
それはまさしく魔法だった。
感動と癒しつきの魔法。
目に見えるものの背後にある
メカニズムを知ることは、
私にとっては最先端の科学だった。
魔法と科学の世界に住めたら
どんなに素敵だろうと、先生の仕事にあこがれた。
セラピストになりたかった。
でも、先生の下で学んでいるうちに、
セラピストというのが命がけの
職業だということを見せられた。
元クライアントさんに
ストーキングされたり、けがをしたり、
セッション中に粗相をされたり、
そして、命を絶とうとする
クライアントさんに向き合ったり。
へぼい私には、
そんなことは到底無理だと悟った。
完全に諦めた。
というよりも、むしろ、
やりたくない職業のナンバーワンになった。
だけど、自分がもっと軽やかに、
もっと充実した人生を送りたかったから、
学びは続けた。
でも、それから、２０年たったとき、
私はセラピストを養成する立場になっていた。
あるとき、覚醒体験をしてみたくなった。
心理を１０年学んだあとで、
ちょっとがっかりしていたときだ。
心理をいくら学んでも、
心理で自分を理解しても、
人は(私は）自分に苦しみを
与えるような思考をし、
行動を続ける。
そして、死の恐怖や
意識がなくなることの怖れという
とうてい乗り越えられそうにない、
恐れがあることを、
わたしは知っていた。
覚醒したら、
悟りを開いたら、
それがなくなるということを何かで知った。
だから、覚醒や一瞥の体験者が
たくさんいるという瞑想のスクールに入った。
４年ぐらいそこで学んだ。
学びは素晴らしかったし、
なにより、私の人生は驚くほど好転した。
まるっきり人生が変わるほどに。
でも、覚醒とか一瞥は、
私には起こらなかった。
もう、覚醒とか一瞥はあきらめた。
完全に。
人生がよくなったから、もういいや。
スクールもやめた。
でも、数年たって、
セッションでヒーリングの代わりに
瞑想をするようになった。
クライアントさんへの効果が高かったからだ。
一瞥体験をする人さえいた。
そのうち、瞑想のクラスを始めることになった。
そして...
どんな男性とお付き合いしても、
お別れしたあと、私はいつも
別れを上手く受け止めることができなかった。
ずっと心が残って、
できることならやり直したいと願った。
別れるのは嫌だとすがっても、
みんな去っていった。
たくさん泣いて、
時間薬を飲んで、
そして最後は諦めた。
完全に。
しばらくすると、
どの人も、自主的に戻ってきた。
もう、心に痛みを感じなくなった頃に。
また付き合ってほしいと相手から言われる。
私が諦めたのは、
私が諦めたと思ってたことそのものではなくて、
私の中にある思考・幻想だった。
私の頭の中にある
「セラピストはこうでなければ」
「覚醒とはこうゆうことだ」
「あの人はこうゆう存在だ」
という幻想。
人生を諦めたわけでも、
自分を諦めたわけでもなかった。
そのときは、
そんな風にしか思えなかったけれど..
ほんとうの意味では、
人生を諦めたり、自分を諦めたり、
命の元にはそんなことはありえない。
だから、だからこそ、
何かを諦めても、
ほんとうに大丈夫。
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