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里守り犬(1)

地域交流センターの米村と長谷川です。

今、地域交流センターが取り組んでいる、鳥獣害対策事業について話題提供をします。


現在、全国的に野生動物による農業等の被害が拡大化しています。
地域交流センターが調整事務局をしている中部西関東市町村地域連携軸協議会では平成19年度より農水省の補助事業として広域連携で鳥獣害対策に取り組んでいます。


初年度の平成18年度はこの広域圏で鳥獣害対策検討会を立ち上げ、被害の状況を把握し、広域圏としての対策について検討しました。


この結果、平成19年度からは同じく農水省の補助事業を受けて広域鳥獣害対策のソフト事業として、主に長野県側ではシカ対策を、山梨県側ではサル対策を進めることにしました。


今回は山梨県の北杜市と南アルプスをモデル地域として実施している「里守り犬」事業の紹介です。


【サルの被害はどうして増えた?】


サルの被害は全国的に深刻な問題となっていますが、山梨県では甲府盆地特産のモモ、プラムなどの果物の被害が深刻です。20年くらい前にはほとんどサルによる農作物被害がなかったのに、最近ひどくなってきたのは、サルが生活の場を山から里へ移し、農作物を餌とするようになったからです。


サルに対しては一般的には電気柵などのハード施設を整備していますが、サルの学習能力は高く、新しい柵を工夫してもほとんどすぐに破られてしまうケースがほとんどです。


里守り犬の考え方はサルの被害がほとんどなかったころと今の違いに注目することから生まれました。つまり昔は林業も盛んで多くの人が山でも仕事をし、特に中山間地では犬は放し飼いが当たり前、野良犬も結構いたことが、サルと人の住む場所を分けていたのではないか、との考えから生まれました。


もともとニホンザルの最大の敵(捕食者)はニホンオオカミだったと考えられます。(欧米では野生動物の被害を軽減するためにオオカミを放すということがまじめに議論されているほどです。)


日本ではニホンオオカミが絶滅してからは、里山で放し飼いにされていた犬や、野良犬が里に近づくサルなどの野生動物に脅威を与える存在だったと考えられます。


しかし今の日本ではオオカミはいないし、犬は放し飼い禁止、野良犬もほとんど駆除されてしまい、サルの直接脅威になる動物はほとんどいなくなったことが、サルが安心して里の近くに住みつくようになった大きな原因の一つと考えられます。


しかし昔のように犬を放し飼いにすれば良いかというと、犬の放し飼いによる問題も大きいわけで、だから犬の放し飼いが禁止された経過があるわけです。


そこで最近ではモンキードッグの名のもとに、サル対策として犬を活用する方法が注目されています。「里守り犬」は広い意味ではモンキードッグの考え方に近い方策ですが、従来のモンキードッグの問題点を踏まえて取り組まれています。


「里守り犬(2)」へつづく