妄想劇場 -11ページ目

妄想劇場

現実逃避の日々

キーリカでは、閉鎖された森への入り口でもめていた。

子供  「寺院に行かせてよ。姉ちゃんに会いたいんだ!」

青年同盟A  「ここは通行止めだから、通すわけには行かないんだよ。」

村人  「家族に会いに行くのがなんでいけないんだ!」

青年同盟A  「でも、通していいって命令がないと・・・・・。」

村人たちの強い怒りに同盟の門番もたじたじになっていた。

ドナ  「あらあらあらあら・・・・・。」

門番の前にドナが現れた。

ドナ  「いいかげんにして欲しいわね。

     未だに党だの同盟だの、細かいことにこだわってるわけ?

     そんなのバカバカしいって、あんたたち以外はみんな気づいたのよ。

     ・・・・・・あの歌のおかげでね。」

そばで見ていたユウナは照れて笑った。

ドナ  「さ、通してちょうだい。」

青年同盟A  「命令がないと・・・・・・。」

ドナ  「通しなさい、命令よ。」

青年同盟A  「は・・・はいっ!」

門番たちは門を開けた。

子供  「姉ちゃん、待ってて!」

村人たちは走って寺院へ向かった。

リュック  「行ってみようよ。」

ユウナたちも後を追った。




森の中の門も次々に開いていった。

パイン  「すごいな。歌の力って。」

ユウナ  「みんなに想いが伝わったんだよ。」

リュック  「ユウナのね!」

ユウナ  「レンの想い、かな。」

ユウナたちは嬉しそうに走っていく村人たちを追った。




寺院からも党の人たちが下りてきていた。

バルテロ  「ドナ・・・・。」

ドナ  「ふん。」

二人は久しぶりに再会した。

ドナは咳払いをした。

ドナ  「あ・・・・・あんた、自分が誰のガードか忘れたわけじゃないでしょうね。」

ドナはセリフを考えてきてたらしく、棒読みだった。

ドナ  「いつまでも私を放っておくなんて、ガード失格も・・・・・。」

バルテロ  「ドナ~~~~!」

ドナが言い終わる前にバルテロが叫んだ。

ドナ  「あんたねえ!せっかく練習してきたんだから、最後まで言わせなさいよ!」

みんなは大笑いした。

バルテロはそんなみんなを無視してドナの前で言った。

バルテロ  「ドナ、許してくれ!ああ、何度だって謝る!

        だからガード失格なんて言わないでくれ。

        これからずっと離れないから!」

みんなは二人をひやかした。

ユウナ  「お幸せに。」

ドナ  「やめてよ、もう。

     これじゃあ、まるで見世物じゃない。恥ずかしいったらないわ。

     こんなに恥をかかせたんだから落とし前はつけてもらうわ。

     そうね、一生かけて償ってもらおうかしら。」

バルテロ  「ドナ・・・・。」

ドナ  「行きましょ、バルテロ。」

二人は何食わぬ顔で戻っていった。

そして、村の人たちもそれぞれの家族と再会した。




ユウナたちはみんなの心がまとまったのか確認するために、まず青年同盟の基地に向かった。

ビサイドに着くや否や、ワッカが迎えに来た。

ワッカ  「おーい!」

息を切らせながら、満面の笑顔のワッカ。

ワッカ  「男の子だ!見てくか?」

ユウナ  「うん!」

ユウナたちはルールーの元へ走った。

ルールーの腕には小さな赤ん坊が抱きかかえられていた。

リュック  「めちゃくちゃかわいい~!」

ユウナ  「赤ちゃんの手ってこんなにちっちゃいんだねえ。」

ユウナもリュックも赤ん坊の顔を覗き込んで笑った。

ワッカ  「どうだ、かわいいだろ~?

      俺に似なくてよかったな。」

ユウナ  「そんなことないよ。

      口元とかワッカさんそっくり。」

ワッカ  「そうか~?」

照れて頭をかくワッカ。

リュック  「名前は?」

ワッカは渋い顔をしてうなった。

ルールー  「この人、なかなか決められなくてずっと悩んでるの。」

ユウナ  「早くつけてあげなきゃ。」

ワッカ  「せかすなって。

      名前をつけるっていうのは、親としての第一歩だろ。

      立派な父親になるには心の準備って奴がいるんだよ。」

リュック  「いつまで準備する気~?」

ワッカ  「そりゃあ・・・・・・・準備完了までだよ。」

言った後でワッカは一人、自己嫌悪に陥った。




港ではベクレムが同盟に帰るために出航準備をしていた。

ベクレム  「ワッカの子供、名前は決まったのか?」

ユウナ  「まだですけど。」

ベクレム  「煮え切らない奴だ。」

呆れたように笑うベクレム。

ベクレムはしばらく考え込んだ後にユウナに言った。

ベクレム  「すまないが、奴に渡して欲しい物がある。

       戦友の・・・、チャップの思い出だな。俺からは渡しづらい。」

ユウナはベクレムからスフィアを受けとった。

ベクレム  「頼んだぞ。」

出航の声にベクレムは船に乗った。




村に戻る途中でワッカに会った。

ユウナ  「どうしたの?」

ワッカ  「ベクレムに挨拶くらいしとこうと思ってな。」

ユウナ  「もう行っちゃった。」

ワッカ  「・・・・・そっか。」

ワッカは残念そうに言った。

ユウナはベクレムのスフィアを差し出した。

ユウナ  「これ、預かったんだ。」

ワッカ  「俺にか?」

ワッカはスフィアを再生した。


映っていたのはチャップとワッカ。

チャップが討伐隊に入る日、ワッカは必死に祈りを捧げていた。

チャップ  「なあ、兄ちゃん。憶えてるか?

       もう忘れちゃったかなあ。

       ほら、ガキの頃に言ったろ、俺。

       「島のどこかに父ちゃんと母ちゃんが映ったスフィアがある」って。

       ごめん、そんなスフィア、本当はなかったんだよ。

       あの頃の兄ちゃんって、俺が何かするたびに叱ったろ。「親代わりだ」って。

       なんか悔しくてさ。それであんなこと言っちゃったんだ。」

ワッカ  「撮ってるヒマがあるんだったら祈れよ。討伐隊に入るんだからなおさらだ。」

チャップ  「また説教かよ。」

ワッカ  「親の代わりにおまえをしつけるのが俺の務めなんだ。」

チャップ  「親代わりなんて言うのやめて、ちょっとは肩の力抜けよ。

       兄ちゃんは兄ちゃんでいいんだ。」


ワッカ  「兄ちゃんは兄ちゃん・・・・・か。

      言いたいことがあるならちゃんと話せってんだ。」

ワッカはうっすらと涙を浮かべた。

そして何かふっきれたように笑った。

ワッカ  「とにかく、おまえら、夜まで村にいてくれ。よろしくな!」

そう言うとワッカは村に戻って行った。




夜になると、ワッカは村の人たちを広場に呼んだ。

ユウナたちも集まった。

ワッカは咳払いをすると堂々と話し出した。

ワッカ  「みんなに集まってもらったのは他でもねえ。

      このビサイド村に加わった新しい住民を紹介したいんだ。」

ダット  「みんなとっくに知ってるよ~。

      名前、決まったんすか?

      まさかみんなで考えろって話?」

ダットはひやかすように言った。

ワッカ  「んなワケあるかよ。

      名前は、イナミ。

      俺が考えたんだ。

      みんな、仲良くしてやってくれ!」

みんなは嬉しそうにイナミの周りを囲んだ。

ワッカは満足してユウナの隣に座った。

ユウナ  「おめでとう。」

ワッカ  「へへへ。

      俺ってずっと自分をなんかの型にはめようとしてきた。

      ブリッツの選手とか、ガードとか、エボンの民とか、・・・・・・・・父親とか。

      「こうあるべきだ」って考えにすぐ縛られちまうんだ。

      でもよ、結局、俺は俺なんだよな。

      型に合わせて自分を作り変えるなんて器用なマネは無理ってことだ。

      だったら、いっそ開き直って俺のやり方で行くしかねえ。

      そうやって、俺たちの物語を作り上げていくんだ。」

ワッカは笑顔でまっすぐ空を見上げた。

ユウナ  「頑張ってね、お父さん。」

ワッカ  「ま、本当に大変なのはこれからなんだけどな。」

ワッカは父親の優しい笑顔でイナミを見ていた。


夜遅くみんなが帰った後、ワッカはルールーの隣に座って肩を抱いていた。

ワッカ  「すまなかったな。名前一つにずいぶん手間取っちまった。」

ルールー  「いいのよ。ちゃんと答えを出してくれるって信じてた。」

ワッカ  「信じてた?ほんとかよ。」

ルールー  「だから隣にいるんでしょ。

        こう見えても、結構頼りにしてるんだから。」

ワッカ  「精一杯頑張る!だな。」

ワッカは照れながら答えた。

ルールー  「はいはい。」

飛空挺の甲板をステージとして、ユウナは観客の前に現れた。

観客はまだ小競り合いを続けていた。

ユウナはみんなに語りかけた。

ユウナが話し始めるとみんなはユウナに注目した。

ユウナ  「1000年前、・・・・・まだ『シン』もいなかった頃、スピラが二つに割れて争っていた時代がありました。

       それはスピラの過去の過ち。その過ちから『シン』が生まれて・・・・・。

       でも、私たちは、スピラは、悲しい過去を振り捨ててきた。

       『シン』が消えて、たった2年でスピラはとても明るくなった。

       私は、この光を消したくないんだ。

       ねえ、みんなは?

       たくさんの人がいて、一人一人考えが違って、時には争うこともあって・・・・・・。

       それでも心は、一つになれるよ。

       私は信じてる。

       たとえ引き裂かれたとしても、私たちの想いはつながる。

       これは、そんな歌です。」

ユウナはゆっくりと唄いだした。




歌の途中で、レンの想いがスクリーンだった大型スフィアに映し出される。

1000年前のザナルカンド。

ヴェグナガン。

ヴェグナガンを動かそうとするシューイン。

シューインを止めに来るレン。

そして、二人は追ってきたベベルの兵隊に撃ち殺される。

二人の思い出が映される。




1000の言葉



君の言葉は 夢の優しさかな?
ウソを全部覆い隠してる
ズルイよね

旅立つ君に 冷めた背中見せて
聞いていたよ ひとり戦うの?
ズルイよね

「帰ってくるから」
追い越してゆく君の声
意地張って 強いフリ
時を戻して叫べば良かった?
行かないでと涙こぼしたら?
今はできる どんなことも

言えなかった 1000の言葉を
遥かな君の背中におくるよ
翼に変えて

言えなかった 1000の言葉は
傷ついた君の背中に寄り添い
抱きしめる


夢の続きは 君を思いながら
あの日のこと 忘れたふりして
ズルイよね

「手紙を書くから」
視線そらした君の声
意地張って 強いフリ
時を戻して怒れば良かった?
待てないよと肩を落としたら?
今はできる どんなことも

聞こえてる?1000の言葉を
見えない君の背中におくるよ
翼に変えて

聞こえてる?1000の言葉は
つかれた君の背中に寄り添い
抱きしめる

言えなかった1000の言葉を
Lalalala..君の背中におくるよ
翼に変えて

聞こえてる?1000の言葉は
Lalalala..君の背中に寄り添い
Lalalalala....


唄い終わるとユウナは涙を流してその場に座り込んだ。

リュックとパインはユウナを支えて飛空挺に戻った。

パインはユウナをベッドに座らせて落ち着かせた。

パイン  「ユウナ・・・・・。」

ユウナ  「大丈夫、大丈夫だよ。おさまってきたから。」

ユウナは流れる涙を抑えた。

そこにリュックが入ってきた。

パイン  「シンラ、何だって?」

リュック  「えっとね、あの映像はスフィア波のカンショウじゃないかって。

       ユウナのドレスフィアとスフィアスクリーンが反応して、ドレスフィアに焼きついた意識がスクリーンに投影された・・・・・・とかなんとか。」

リュックは一生懸命体を使って説明した。

パイン  「だから、どうしてそんな現象が?」

リュック  「「僕、まだ子供だし。」だってさ。」

パインは呆れたようにため息をついた。

ユウナ  「レンだよ。」

やっと泣き止んだユウナが言った。

ユウナ  「彼女の想いから生まれた歌だから唄ってるうちにあふれて・・・・はじけた。」

パイン  「映ってたのはレンと・・・・・・シューイン?」

ユウナは頷いた。


ユウナが操縦室に戻るとメイチェンがいた。

メイチェン  「すばらしい歌でしたな、ユウナ様。観客は皆、聞き惚れましたぞ。」

ユウナ  「みんなの気持ちが少しでもまとまればいいんですけど。」

メイチェン  「まとまりますとも。

        つまらん争いにかまける愚かしさや悲しさに、誰もが気づいたことでしょう。

        開演前にいがみ合っていた連中も手を取り合って泣き出す始末です。

        かく言うあたしも、そでを絞りましたわ。

        ええ、レンが映し出された時に。」

リュック  「レンを知ってるの!?」

メイチェン  「はいな。語っても・・・・。」

ユウナ  「語ってください!」

メイチェンが言うより早くユウナは言った。

メイチェンは咳払いをすると語り始めた。

メイチェン  「レン、とは、およそ1000年前、ザナルカンドでたいそうな人気を誇った歌姫ですな。

        平和な時代であったなら歌手として一生を終えることができたでしょうが・・・・、時代と、そして彼女の能力がそれを許さなかったのですわ。

        ええ、レンは歌手であると同時に優れた召喚士でもあったのです。

        機械戦争が始まると、召喚士たちは戦場に発つことになりました。

        ザナルカンドは劣勢でしたから、生きて帰れないのは明らか。

        それでもレンはザナルカンドを守って戦う覚悟を決めていたようですが、「どんな手を使ってもレンを死なせない」、そう考えた人物がおったのです。

        レンの恋人だった若者ですわ。」

リュック  「シューイン?」

メイチェン  「さあ・・・、名前までは記録に残っとらんのです。

        ともあれ、彼は敵の機械兵器を奪ってレンを救おうとしました。

        しかし・・・・。」

メイチェンは悲しそうに下を向いた。

ユウナ  「・・・・・うまくいかなかった。」

メイチェン  「ええ・・・・・・痛ましいことですわ。

        さきほどの映像はその時の光景なのかもしれませんな。」

メイチェンはそう語り終わると何も言わずに去っていった。


パイン  「シューインはレンの恋人だった。」

リュック  「レンを守るために、敵から奪おうとした兵器ってのが・・・・・。」

ユウナ  「ヴェグナガンだね。」

リュック  「大事な人を死なせたくなかったんだね。

       あたしわかるな、その気持ち。

       2年前、そうだったからね。

       ユウナ助ける方法、必死に考えてた。」

リュックはユウナの手をとった。

ユウナ  「嬉しかった。

       悲しいくらい伝わってきて・・・・・、それだけで充分だったよ。」

パイン  「レンもそうだったのかな。

      好きな人が最後の瞬間まで自分を守ろうとあがいてくれたんだ。

      悲しい結末だったとしても、笑って言えたかもしれない。

      「ありがとう」って。」

ユウナは頷いた。


ユウナ  「そうだね。

       つながってる・・・・・・けど。」


ユウナは首を横に振った。

ユウナ  「こんなのってないよ。

       レンの想い、彼女が一番伝えたかった人に伝わってない。」

ユウナは下を向いた。




その時、警報が鳴った。

ダチ  「ビサイドから通信があったぞ。

     ルールーの赤ちゃんが生まれたってよ!」

リュック  「おおっ♪」

ユウナ  「会いたいなあ。」

ダチ  「キーリカからも来ているな。

     ややこしいことになってるらしい。」

ユウナ  「またごたごた?」

ダチ  「いや、ごたごたがおさまったせいで、ごたごたしてるらしいんだが・・・・。」

パイン  「なるほど。」

各地域でごたごたが起こっているらしい。

ユウナたちはまず、連絡のあったビサイドに向かった。

戻ると、みんなホッとした顔で出迎えた。

アニキ  「本当によかった。一時はどうなることかと・・・・・・。」

アニキは泣き崩れた。

ダチ  「ユウナにもしものことがあったら、責任取るだの生きていけないだの大騒ぎでな。」

リュック  「なんにも情報がなかったからね。

       通信スフィア、穴に落としたけど、役に立たなかったし。」

シンラ  「あれはまだテスト中だし。」

怒ってシンラが言った。

パイン  「で、何が?」

ユウナ  「うん・・・・・。」

ユウナは異界の深淵でのいきさつを話した。

ダチ  「レン、ねえ・・・・。」

シンラ  「歌姫のドレスフィアの人だし。」

シンラが説明を始めた。

ユウナ  「そうなの?」

シンラ  「あのドレス着てた人、1000年前にね。」

リュック  「なんで黙ってたのさ~!」

シンラ  「聞かれてないし、わかったのは名前だけ。話す意味ないし。」

ユウナ  「驚いたけど、意外じゃない。やっぱり・・・・・、つながっていた。」

リュック  「じゃあさ、シューインって奴が、ユウナのことをレンって呼んだのは・・・・。」

パイン  「ユウナのドレスフィアのせい?」

シンラ  「確かなことは言えないし。」

シンラは自分の席に戻った。

アニキ  「そんなことより、シューイン!

       スピラを滅ぼすなんて許せん!」

ダチ  「だからって俺たちに何ができる。

     ヌージとギップルがどうにかする気だろ。とりあえず、あいつらに任せておこう。」

ダチは関係ないとばかりに自分の席に座った。

パインも操縦室を出て甲板に向かっていった。

ユウナはパインの後を追おうとした。

すると、後ろからリュックが呼び止めた。

リュック  「ユウナ、ユウナ!」

ユウナ  「なに? 」

リュック  「あのさ、シューインって奴、会ってみてどうだった?」

リュックはニヤニヤしながら聞いた。

ユウナはしばらく考えて答えた。

ユウナ  「似てるのは顔だけね。」

リュック  「あいつじゃ・・・・ないんだね。」

リュックは少し落ち込んだ。


ユウナは甲板に出た。

パインが遠くを見ていた。

ユウナ  「預かり物。」

ユウナはパインにヌージとギップルから受け取ったスフィアを渡した。

パイン  「何か言ってた?」

ユウナ  「ううん。」

パイン  「・・・・・・そうか。」

ユウナはパインが話したくないのだろうと、その場を去ろうとした。

パイン  「・・・・・・・・・古い仲間でさ。」

話し出したパインに驚いて振り返るユウナ。

パイン  「みんな、アカギ隊の候補生。3人の班につけられた記録員が私だった。

      アカギってのは2年前、エボン寺院がひそかに訓練していた精鋭部隊で・・・・・、合格したら、各地の討伐隊に派遣させて、指揮を取るはずだった。」

ユウナ  「はず?」

「パイン  「そうなる前に壊滅したんだ。

       演習中に事故があって、みんな死んで・・・・・、私たちもばらばらになった。・・・・・いろいろあって。

       ・・・・・・わからないんだ。あの時、私はあそこにいた。

       でもどうしてあんなことになったのか、未だに・・・・・。

       だから突き止めたくて。

ユウナ  「スフィアハンターになったんだ。」

パイン  「こいつに乗って、あちこち飛び回りたかったし。」

パインはごまかすように言った。

するとリュックも甲板に上がってきた。

リュック  「なに話してんの?

       あ、どーせ秘密にするんでしょ。

       別に良いよ、知りたくないし。」

リュックはすねてそっぽを向いた。

パインはそんなリュックのおでこを小突きながら言った。

パイン  「なんだ、教えてやろうと思ったのに。」

リュック  「本当?」

軽く興奮するリュック。

パイン  「やっぱり秘密。」

リュック  「いじわる~!」

そんなリュックを見て、パインは笑って言った。

パイン  「こんな風に笑ってたんだ。あいつらと。

       ずっと過去を追いかけてきたけど、取り戻したいのか、そうじゃないのか、時々わからなくなる。

       ・・・・・そっちは?」

ユウナは下を向いた。

パイン  「シューインってのは、違ったんだろ?」

ユウナ  「うん。」

パイン  「お互い、過去を追うのはやめにして、これからのこと、考えるか。」

ユウナは考え込んだ。

リュック  「二人とも、カモメ団やめちゃうの?」

パイン  「・・・・・それもアリだ。」

パインはニヤッと笑って言った。

ユウナ  「いろんなことがつながっているけど、つながる先に、・・・・、キミはいないんだ。

       このままスフィアハンターを続けても、会えないなら・・・・・。」

操縦室に戻ると不安そうな顔をしたリュックがパインに言った。

リュック  「ねえ・・・・・やめたい?」

パイン  「こう見えても結構楽しんでるけど。」

パインの言葉に嬉しくなるリュック。

リュック  「だよね?だよね!」

ダチ  「ユウナの方はどうなんだ。やめちゃうのか?」

アニキ  「そんなことはない!」

アニキが即答した。

パイン  「なんでお前が答えるんだ。」

アニキ  「ユウナ・・・・・。」

みんながユウナを見た。

ユウナはやさしく笑って答えた。

みんなはホッとして笑った。




そしてまた、スピラ中が混乱している情報が入った。

ダチ  「ヌージとバラライは戻らず。それにギップルまで行方不明・・・・と。

     有力グループのリーダーが全員消えちまったんだ。

     なんにも知らない連中は不安がったり、おびえたりだ。」

シンラ  「グループ同士の対立が深まる一方、近いうちに大ゲンカだし。」

パイン  「そしてヴェグナガンは野放し。たぶんシューインの手の内だ。」

リュック  「ギップルたちはあれをぶっ壊そうとしてるのかな。」

パイン  「どうかな。

      バラライが言ってたろ。ヴェグナガンは敵意を感知すると起動する。

      壊そうとして近づくと逆に暴れだすんじゃないか。」

リュック  「スッキリしないな~、もう!

       じゃ、あたしたちはどうすれっての!」

リュックは混乱して怒り出した。

ユウナ  「ヌージさんに異界で言われたんだ。

       「あんたは地上を頼む」って。

       そんなこと言われても、って感じだよね。」

ユウナはため息をついた。

ユウナ  「みんなと楽しく騒いでたのに。」


ユウナ  「そんな人に変わったつもりだったけど・・・・・。」


ふうっと一息ついて、ユウナは言った。

ユウナ  「なんていうか、その気になりました。

       頼まれたからにはなんとかします。」

アニキ  「やっぱりユウナはこういう方が似合うな。」

アニキは喜びのあまり泣きそうになった。

アニキ  「よーし!打倒ヴェグナガン!命をかけてスピラを守る!」

ユウナ  「そういうのはナシ。

       戦う以外にできることがあると思うんだ。」

ユウナはみんなに訴えた。

パイン  「たとえば?」

ユウナ  「リーダーがいなくなって、スピラがばらばらだから、みんなの心を一つにするとか。」

リュック  「そうそう。そういうの賛成!」

嬉しそうに飛び跳ねるリュック。

リュック  「で、・・・・・何すんの?」

みんなで考えた。

パイン  「唄ってみる?」

アニキ  「おおお!それだ~っ!

       ユウナの歌と踊りで、スピラをとりこにするのだ!」

リュック  「すごい!」

シンラ  「ステージの設定は僕がやるし。」

みんなノリノリだった。

ユウナ  「ちょ、ちょっと!?」

ユウナは慌てて止めようとしたけれども、無理だった。

アニキ  「カモメ団!発進!」


ユウナ  「キミを探して、旅に出た。でも、つながる先に、キミはいない。

       それでも私、旅していたいんだ。

       つながる先を確かめたいよ。

       キミが、・・・・・・・・いなくても。」


苦笑いのユウナにパインが言った。

パイン  「ユウナが『シン』と戦う時、スピラ中が祈りの歌を唄ったろ。

      私もだ。

      あの時、仲間がばらばらになって一人だったけど、唄う間は信じられたんだ、誰かとつながってるって。」

ユウナは力強く頷いた。


ユウナたちは雷平原でコンサートをすることに決めた。

そして、その情報は人から人へと伝わって、スピラ中に広がった。




ユウナ  「もうすぐだね。お客さん、来るかな。」

リュック  「そりゃあ来るでしょ!雷平原、埋まっちゃうよ。」

浮かれ気分のユウナとリュック。

リュック  「でもさ、ナニ唄うの?」

ユウナ  「えっとね・・・・・・。」

ユウナは静かに目を閉じてハミングで唄った。

リュック  「ユウナが作ったの?」

ユウナ  「作ったっていうか・・・・・・。気持ちが、流れ込んできて。」

リュック  「レン、かな。」

ユウナ  「だと思う。

       どんな人かはわからないけど、少しずつ伝わってくるんだよ。

       彼女が何を感じていたのか、想いの・・・・・・そう、かけらだね。」

リュック  「レンの想いのかけらをつないで、ユウナの歌を作り出す・・・・・・・・そんな感じ?」

ユウナ  「お、リュック、詩人だね。」

感心して言うユウナ。

リュック  「へへ~ん♪」

嬉しそうなリュック。

パイン  「もうすぐ到着するよ。」

ユウナは頷いてコンサートの支度をした。




飛空挺は雷平原に到着した。

大勢の人たちが集まっていた。

ユウナが支度を済ませ操縦室に入ると、ダチが怪訝そうな顔をしていた。

ダチ  「気になることがあってな。

     客の間で派閥争いが起きてるんだ。

     リーダーがいなくなったせいで不安なんだか、気が立ってるんだか。」

リュック  「お客さんたち、雰囲気ヘンだよ。」

リュックも心配そうな顔をしている。


ユウナは外の様子を見た。

リュック  「うわ・・・・ケンカになりそうなんだけど。」

ダチ  「この調子だとおっぱじめそうだな。」

外では青年同盟と新エボン党でにらみ合っていた。

青年同盟A  「エボンの奴らと一緒だなんて聞いてないわ。せっかくの歌が台無しじゃない。」

新エボン党員A  「青年同盟なんぞに大召喚士様の歌を聞く資格があるものか。」

新エボン党員B  「バラライ様がいてくれたらあんな連中に大きな顔をさせないのに。」

青年同盟B  「ヌージはどこいったんだ。あいつがしっかりしないからスピラが乱れるんだ。」

青年同盟C  「みんなが困ってる時に行方知れずだなんて、無責任なリーダーもあったもんだ。」


ユウナ  「いつまでやるんだろうね。」

リュック  「だよねえ。」

呆れ顔で言うユウナとリュック。

パイン  「しかし、放ってはおけないユウナであった、と。」

ユウナ  「それは、・・・・・・まあ。」

ユウナは慌てて弁解しようとしたが、認めざるを得なかった。

パインはそんなユウナを見て、笑った。

パイン  「じゃ、なんとかしよっか。」

パインの言葉に喜ぶユウナ。

ユウナ  「うん、やっちゃおう!」

ユウナたちはポーズを決めた。

ユウナは光の中を落ちていった。

ユウナ  「まっしろ。」

どこからか声が聞こえてきた。

???  「聞こえる?」

ユウナ  「誰?」

ユウナは下に降り立った。

???  「ああ、聞こえるんだね。」

ユウナ  「どこに・・・・・いるの?」

周りを見回すユウナ。

???  「ここだよ。」




気がつくと、ユウナは歌姫の衣装を着て幻光虫が漂う花畑に倒れていた。

立ち上がると、衣装がポウッと光った。

ユウナ  「な、なに?」

現状を把握しきれず混乱するユウナ。

そこにティーダに似ているスフィアの男が現れた。

???  「やっと会えたね。」

ユウナ  「本当に・・・・・キミなの?」

ユウナはおそるおそる話しかけた。

???  「俺だよ、シューインさ。ずっと待っていたよ、レン。」

レンと呼ばれ、ユウナはシューインに背を向けた。

ユウナ  「レンじゃないっす。」

シューインはユウナに近づく。

シューイン  「ねえ、レン。ふたり一緒に消えたのに俺だけが目覚めてしまった。ひとりで君を探してたんだ。

         さまよううちに気がついたよ。スピラはまるで変わっていない。

         相変わらずつまらないことで争って死んでる。

         あともう1000年たったって、進歩しないで醜いままさ。だから決めたよ、きれいにするって。

         このろくでもないスピラも、君を守れなかった俺も、ヴェグナガンで跡形もなく消してやる。

         もう一度二人で消えよう。力を貸してよ、レン。」

シューインはユウナの耳元で囁くようにレンの名前を呼んだ。


ユウナ  「サイアク・・・・・・・。」


そして、シューインはユウナを振り向かせ、力いっぱい抱きしめた。

びっくりするユウナ。

ふりほどこうとすると、力が抜けていくのがわかった。

ユウナ  「入ってくる・・・・ねえ、誰の気持ち・・・・?

       レン・・・・?」


ヌージ  「目を覚ませ!」

ヌージの叫びではっとするユウナ。

意識が朦朧とする。

ゆっくりと目を開けるとシューインはバラライになっていた。

つまり、ヌージの体から出て、バラライの中に入ったのはシューインで、バラライの中のシューインが動いていたようだ。

バラライ  「終焉までまもなくだな。」

そう言ってバラライは異界へと消えていった。

ヌージ  「パインに渡してくれ。結局、俺が見つけたのはこれだけだ。」

ヌージはスフィアをユウナに渡した。

そして異界の方へ歩き出した。

ギップル  「俺はこれだけ。」

ギップルもスフィアを渡した。

ユウナ  「何?」

ユウナは一人立ち尽くした。

ヌージ  「遺書さ。」

ユウナ  「え?」

慌てて聞き返すユウナ。

ギップル  「冗談だって。とにかくパインに渡してくれ。」

ギップルはヌージを追いながらフォローした。

ユウナ  「どういう関係?」

ギップル  「フクザツな四角関係。」

ギップルは手で四角を作って見せた。

ユウナ  「待って!」

ギップル  「こっちは任せてくれ。」

ヌージ  「あんたは地上を頼む。」

そう言って二人はバラライの後を追っていった。


ユウナ  「何が起きたのか、わからなくて、疑問はかなり浮かんできたんだ。

      でも、何より・・・。」


ユウナ  「なんか・・・・ムカツキ。

       人が混乱しているところに次から次へと・・・もう!

       ここ、どこ?」

ユウナは一人でしゃべりだした。

しばらくふらついたがやっぱり何もなく、混乱は絶頂に達した。

ユウナ  「あーーーーーーーっ!」

声の限り叫ぶと、ユウナはその場にうずくまった。

ユウナ  「・・・・・・ひとりぼっちだよ・・・・。」

泣きそうになるユウナ。

その時、指笛が聞こえた。

ユウナははっとして立ち上がった。

ユウナ  「どこ!?」

ぼんやりとティーダのような影が見えた。

ユウナはその影を追いかけた。

ユウナ  「待って!」

ユウナは指笛の音と、その影に導かれて異界の深淵から脱出した。




次に気がついたのはアンダーベベルだった。

ダチ  「ユウナ、応答せよ、ユウナ!」

ダチの通信の声に目を覚ますユウナ。

立ち上がり、ダチの声に答えた。

ユウナ  「ユウナ、戻りました。」

カモメ団  「ユウナ!」

ユウナは飛空挺に戻った。