「ぬくぬく」(天野祐吉)
山に住む寒がりな妖怪「ぬくぬく」の昔話。
寒がりで他人も冷やしていた妖怪が、ある日、山に迷い込んだ女の子に出会って、何かが変わる・・・
あらすじ
山に雪が降り始めると、ぬくぬくはこっそり麓に降りてきて、枯れた草むらや岩陰に身を潜めた。
そんな時、近くを人が通りかかると、ぬくぬくはぬっと姿を現し、「ぬくぬく、ぬくぬく」と体を摺り寄せてくる。
その気持ち悪いこと。ぬくぬくに出会った人たちは、家に逃げ帰っても、震えが止まらず、三日は寝込んでしまうのが
常でだった。
「ぬくぬく、ぬくぬく」とうなされて・・・
こんな出だしで、ぬくぬくという妖怪を紹介している。大きな災いはなさそうだが、藁で全身を包んでいる気味の悪い妖怪である。
そんなぬくぬくが、ある日、山で可愛い女の子に出会う。
その女の子はぬくぬくを気持ち悪がらず、ぬくぬくに付きまとう。
そして、一日中付きまとって、疲れた女の子は、ぬくぬくの膝に頭をのせて寝てしまう・・・
夜になり、ぬくぬくは女の子の体が冷えないように、自分の体を包んでいる藁を半分掛けてあげる。
そして、女の子を背負うと、里に下りていって、村の民家の戸口まで女の子を届ける。
人を驚かすのが好きで寒がりな妖怪ぬくぬくが、愛情のようなものを見せるのであった。
その次の日から、ぬくぬくは、女の子がその後どうなったのか気になって落ち着かない。
しばらくすると、女の子が子供たちを連れて、みんな藁でくるんだぬくぬくの格好をしながら行列を作って山までやってくる。
「ぬくぬく、ぬくぬく」と声をあげなて笑いながら。まるで、ぬくぬくごっこだ。
ぬくぬくも楽しくなって、その行列に混ざって歩く。
最後は上機嫌でぬくぬくは山の奥へ帰っていく。
感想
ぬくぬくは、物語の途中、女の子の体が冷えるのを心配して、自分の体に巻き付けている藁を分けてあげた。
その女の子と出会うまで、考えたこともなかった行為だと思う。
雪がシンシンと降り始めてから、女の子を村に届けてあげる。
多分、途中で村人に出くわしたら、ぬくぬく自身に危険が及ぶ可能性もあったと思うのに・・・
妖怪「ぬくぬく」の存在はこの本を読むまで知らなかったけど、
日本の妖怪って、なんか、こういう心がある話が多いから好きなんだよなぁ。
女の子も、村の子供たちを誘って「ぬくぬく」大行進をして、ある意味恩返しのようだった。
最後は、心が「ぬくぬく」する話だった。
作者さん情報「天野祐吉」さん
"出身地は東京府東京市足立区(現在の東京都足立区)。愛媛県の松山一高併設中学校(旧制松山中学校、現在の松山東高)、松山南高を卒業し、明治学院大学を中退後、創元社、博報堂を経て独立し、雑誌「広告批評」を創刊する。広告に対する批評で知られる。
1984年、朝日新聞において後に「CM天気図」と改名する「私のCMウオッチング」を開始し、2013年10月16日まで1132回連載した。
2000年、67歳のとき31歳下の伊佐子と再婚する。朝日新聞の連載コラム「天野祐吉のCM天気図」はまず妻に読ませ、反応を見ながらより分かりやすい文章に仕上げていた。
2002年11月から2007年3月まで、中学・高校時代を過ごした愛媛県松山市にある松山市立子規記念博物館館長を務め、2007年4月より名誉館長に就任している。
2013年10月20日午前10時38分、間質性肺炎のため死去した。80歳没。没後に新刊が刊行された。"
(引用 : Wikipedia「天野祐吉」)