9冊目『オールド・テロリスト』(村上龍 文藝春秋) | 図書礼賛!

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死ぬまでに1万冊の書評をめざす。たぶん、無理。

 

 

村上龍の待望の長篇小説である。休日に合間を縫って、どうにか500頁をゆうに超える本書を読み終えた。
大学一年のときに、村上龍の大長編である『半島を出よ』を読んで、一気にファンになった。その後も『愛と幻想のファシズム』をはじめ、村上龍の作品は短編であれ、長篇であれ、多く読んできた。

今回の『オールド・テロリスト』は、村上龍得意の近未来を舞台にし、なんと老人たちがテロで日本を震撼させるという斬新でありながら、壮大なスケールを持つ、圧倒的なリアリティが孕まれた作品だ。

ただ、村上龍の作品としては傑作とは呼べないだろう。登場人物のぞんざいな扱い方や(たとえば、ジョー)、最後に老人たちの華々しい戦闘行為が行なわれるかと思いきや、あっけなくドローンの無人攻撃機によって殲滅してしまうことなど、拍子抜けしてしまうことも多々あった。
とはいえ、あくまで小説という虚構の設定でありながら、近未来の日本は、ますます階層化が進むことになると予言的に書いているあたりは、やはり鋭い洞察だと思った。