去年の12月初旬にさかのぼるのですが、映画「聖の青春」を観ました。
主演は、私が大好きな演技派俳優•松山ケンイチさん。
難病も持ちながら、情熱的に生きた天才将棋棋士•村山聖さんの青春を、限りなく忠実に、演じられていました。
原作の大崎善生著「聖の青春」も、読み終えたので、合わせての感想です。
実際の村山聖の容姿に合わせて、特殊メイクではなく、とにかく食べて増量し、松山さんはかなりの巨体に!
相当無理して、太った努力が実り、容姿再現率高かったです。
村山さんは、元々太っていても、愛嬌がある、人好かれする性格だったそうで、その雰囲気が、よく出ていました。
さすがカメレオン俳優。
ファンの欲目ですが、そこにいるだけで、松ケン可愛いです。
そこにいるだけで、いちいち面白いです。
ドキュメンタリー調で、割とドライな描き方なのですが、村山さん自体が、人間的に魅力があったせいか、一挙一動が面白いです。
新しく通う将棋会館でのシーン、初対面で、黙ってる村山棋士に、近寄りがたいなあ、話しかけづらいなあ、という空気の中で、後輩たちが、
「見てる。めっちゃこっち見てる」
ざわつくところとか。
村山さんが後で、
「東京は冷たい。誰も話しかけてくれなかった」
すねるところとか。
森信雄師匠との、師弟愛にも、胸がじんわりしました。
原作の方が、長く綿密に描かれていますね。
師匠に部屋の掃除をさせ、頭を洗わせ、少女漫画を買いに走らせ、どちらが師匠か、分からない、と言われていたそうです(笑)
森信雄師匠を、リリー•フランキーさんが演じていたのですが、ちっとも威張らない飾らない人柄もあって、甲斐甲斐しく、面倒をみるんですね。
価値観が近かったのでしょうか、散らかり放題の古アパートに、一緒に住み、二人とも風呂嫌いで、下町食堂に揃って食事に行く。
師弟というには、上下関係を抜きにし、親以上の距離感で暮らす日常に、すごく幸せなものを感じて、目が熱くなりました。ほろり。
将棋や、趣味や、人生観に至るまで、語り合い、すごい共感があったのでしょう。
年齢も立場も抜きにして、横の充実した関係。
現実の親とでさえ、ここまでの透明性のある親しさは、生まれないのではないか、と感動したところでした。
私は将棋に疎いので、将棋戦のシーン
は、雰囲気だけで観ました。
すごく惜しいのですが、将棋の勝負の成り行きとか、内容の凄まじさは、理解できないんですね。残念。
勝つか、負けるかの、ギリギリの緊張感。呼吸。
脳の血管が切れるのではという、極限の集中力と、対戦相手に対する気迫、その鍔迫り合い。
棋士の情念、というのだけは、役者さんたちの演技から、感じ取れました。
彼らもあくまで役であって、棋士ではないのですが、本物感を信じさせる程に、迫真でした。
映画館に観に行って、良かったです。
人間の持つ、純粋さというのを、村山聖さん、松山ケンイチさんの演技を通して、感じ方が変わった気がします。
ここでいう、純粋というのは、子どものような天真爛漫や、何も疑わない素直さとは、全く関係ないんです。
絶対に、自分を曲げたりしない。
周りとの衝突とか、考えないで、縛られないで、信じたこと、好きなことを通す。
納得いかない対象への、批判も鋭い。
すごく、趣向のこだわりが強い人で、
「シュークリームならミニヨン、牛丼なら吉野家、お好み焼きなら、みっちゃん、カツ丼なら徳川、•••」
「牛丼は吉野家じゃなきゃ、意味ないんだよ」
買ってきてもらった違う牛丼ブランドを、突きかえす始末。
将棋で戦うために、命を天秤に賭ける。惜しくない訳ではないが、同じ位に大事なもので、リスクを厭わずに、命を燃やしている。
松山ケンイチさんが、雑誌のインタビューで、
「普通なら人って大人になるにつれ、いろんな関わり合いの中でどこか汚れていきますよね。でも、村山さんはほとんど汚れていないんです。とてもピュアな人だった。だからこそ、人には理解しがたい生き方をしたと思うけど、同時に憧れを抱かせるような生き方をしていたように感じました。•••、」
と語っていました。
松山ケンイチさんのすごいと思うのは、役を作る以上に、演じる方への、深い理解と共感があるところ。
映画を見た後で、理解が深まりました。
社会の中に身を置いている以上、常識や世間体に、欲に、肩書きに、人間は染まっていきます。
汚れていきます。
純粋さを保とうと、反発すればするほど、その人は生き辛さに、直面することになります。
要領よく、世間に流されていく、乗っていくのも、柔軟性の一つだとは思いますが、我の強い人って、それができないんですね。
不器用で。
社会の嵐の中で、自我を保って、外界から侵入されることなく、自分の世界を生き切った村山聖さんは、本当に素敵でした。
ここまで強靱な信念を持てること、貫けること自体、天性というものに恵まれなければ、できないんしゃないのかな、と思います。
凡人は、憧れてやまないです。
書ききれないのですが、ご家族から、将棋界の仲間、師匠、兄弟弟子、好敵手であり、公式ヒロインの羽生善治さん皆さんで、魅力ある役者さんたちで、統合して、素晴らしい仕上がりの映画でした。
協和音を、奏でていました。
「体調の良い日なんて、ないんだよ」
淡白にこぼす、松山ケンイチさんの演技が、私の中で、余韻が残っています。
厳しさの中で、充実して生きたんだ、と思います。
時間の長さの問題じゃないんだと。
長い感想を、最後まで読んで頂き、ありがとうございました。