村上春樹「騎士団長殺し」の感想です。
3回目の読了となりますが、村上春樹ワールドを堪能出来る長編です。
2017年に刊行された際に発売日に購入して一気に読了。
第一部と第二部という構成で、読了して思ったことは、
「ねじまき鳥クロニクル」
「1Q84」
同様に完結編の第三部が刊行されるだろうということでした。
しかし「騎士団長殺し」に関しては第二部で終了でした。
まだ続きがあるのでは思った村上春樹ファンの人は多かったと思います。
私個人の感想ですが、
村上春樹の小説において主人公よりも脇役のほうが強烈な印象を残すことが多いです。
この作品でも強烈なキャラクターが何人も出てきますが、
特に印象深かった3人をここで紹介します。
第一の人物は免色渉。53才。
長編小説としての前作「色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年」
を読んでいる方ならぴんと来たと思いますが、
免色渉という名前自体が前作とつながっています。
前作の主人公は「色彩を持たない」多崎という名前で、
それに対して免色という苗字のキャラクターが登場するわけですから、
村上春樹独特のユーモアのセンスかなと思いました。
そして、免色渉は髪が真っ白の人物です。
そこに関しては「色彩」を持たない人として描かれているとにんまりしました。
免色渉が謎につつまれた人物です。
大金持ちの独身であること以外、明確に何をやっている人物かを作者は説明していません。
独身主義を貫いていますが、
過去に愛した女性が自分の子を産んだと思われることで、
その子を見るためだけに豪邸を購入してしまうような人物です。
主人公は肖像画を専門とする36才の画家ですが、
その主人公に自分の肖像画を描いてほしいという依頼で物語の中に入ってきます。
常に冷静沈着な人物なのに
自分の娘を思われる13才の少女との初対面ではどぎまきしてしまうような一面も持っています。
とても魅力あふれるキャラクターでした。
第二の人物は雨田具彦。
死を間近にしている90代の高名な日本画家です。
彼はひそかに隠していた「騎士団長殺し」という絵を主人公が発見することにより
物語は始まります。
その絵の制作の発端となったと思われる
彼がドイツ滞在中のナチスドイツへの抵抗やエピソードに関して、
帰国後、彼は誰にも語りません。
主人公が傑作と称するその絵を彼は自宅の屋根裏に隠しましたが、
その真相はどうだったのか?
謎を残したまま彼は亡くなってしまいます。
第三の人物は騎士団長です。
彼は実在の人物ではありません。
主人公だけがその姿を見て話すことが出来る、
雨田具彦の絵からそのイメージを借りて出てきた人物で、
とても変わった話し方をします。
その会話がとにかく楽しいです。
私だけではないと思うのですが、「騎士団長殺し」第三部を読みたいです!