読書日記

読書日記

最も好きな日本の作家は村上春樹、外国の作家はスティーブン・キングです。
日本文学史における最高の作家は三島由紀夫、世界文学ではドストエフスキーだと思っています。

村上春樹「騎士団長殺し」の感想です。

3回目の読了となりますが、村上春樹ワールドを堪能出来る長編です。

 

2017年に刊行された際に発売日に購入して一気に読了。

第一部と第二部という構成で、読了して思ったことは、

「ねじまき鳥クロニクル」

「1Q84」

同様に完結編の第三部が刊行されるだろうということでした。

 

しかし「騎士団長殺し」に関しては第二部で終了でした。

まだ続きがあるのでは思った村上春樹ファンの人は多かったと思います。

 

私個人の感想ですが、

村上春樹の小説において主人公よりも脇役のほうが強烈な印象を残すことが多いです。

この作品でも強烈なキャラクターが何人も出てきますが、

特に印象深かった3人をここで紹介します。

 

第一の人物は免色渉。53才。

長編小説としての前作「色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年」

を読んでいる方ならぴんと来たと思いますが、

免色渉という名前自体が前作とつながっています。

前作の主人公は「色彩を持たない」多崎という名前で、

それに対して免色という苗字のキャラクターが登場するわけですから、

村上春樹独特のユーモアのセンスかなと思いました。

 

そして、免色渉は髪が真っ白の人物です。

そこに関しては「色彩」を持たない人として描かれているとにんまりしました。

 

免色渉が謎につつまれた人物です。

大金持ちの独身であること以外、明確に何をやっている人物かを作者は説明していません。

独身主義を貫いていますが、

過去に愛した女性が自分の子を産んだと思われることで、

その子を見るためだけに豪邸を購入してしまうような人物です。

 

主人公は肖像画を専門とする36才の画家ですが、

その主人公に自分の肖像画を描いてほしいという依頼で物語の中に入ってきます。

常に冷静沈着な人物なのに

自分の娘を思われる13才の少女との初対面ではどぎまきしてしまうような一面も持っています。

とても魅力あふれるキャラクターでした。

 

第二の人物は雨田具彦。

死を間近にしている90代の高名な日本画家です。

彼はひそかに隠していた「騎士団長殺し」という絵を主人公が発見することにより

物語は始まります。

その絵の制作の発端となったと思われる

彼がドイツ滞在中のナチスドイツへの抵抗やエピソードに関して、

帰国後、彼は誰にも語りません。

主人公が傑作と称するその絵を彼は自宅の屋根裏に隠しましたが、

その真相はどうだったのか?

謎を残したまま彼は亡くなってしまいます。

 

第三の人物は騎士団長です。

彼は実在の人物ではありません。

主人公だけがその姿を見て話すことが出来る、

雨田具彦の絵からそのイメージを借りて出てきた人物で、

とても変わった話し方をします。

その会話がとにかく楽しいです。

 

私だけではないと思うのですが、「騎士団長殺し」第三部を読みたいです!

 

 

 

 

 

 

私の読書スタイルは、好きな作家の小説を繰り返し読むことです。

そのぶん、新しい作家との出会いが少なくなりますが、

好きな作家の小説を繰り返す読むことにより新たな発見があります。

それが好きなんです。

 

私の読書優先度は以下の通りです。

 

No1・村上春樹の作品を繰り返し読み、最新刊は発売日に買って読む。

No2・スティーブン・キングの作品を繰り返し読み、最新刊を読む。

No3・京極夏彦の京極堂シリーズを繰り返し読み、最新刊を読む。

No4・好きな歴史小説を繰り返し読む。

No5・話題になっている本、作家の作品を読む。

 

No1に関しては断トツの1位です。

毎月必ず村上春樹の本を読んでいると思います。

エッセイや短編集も好きですが、やはり村上春樹の長編小説を繰り返す読むのが好きです。

世間では村上春樹ファンのことを「ハルキスト」と呼びますが、

そのネーミングは軽々してあまり好きではありません。

 

何故村上春樹の小説に心を惹かれるのか?

それは別の機会に書きたいと思います。

 

スティーブン・キングの小説も大好きです。

多くの作品が映画化され、イマイチの作品もありますが。

「グリーンマイル」「ショーシャンクの空に」「キャリー」「スタンドバイミー」は傑作です。

 

好きな歴史小説は司馬遼太郎の「竜馬がゆく」と池波正太郎の「真田太平記」ですね。

その2作品が断トツです。

吉川英治の作品はほとんど読みました。

やはり、「宮本武蔵」が最高傑作だと思います。

 

東野圭吾の作品を読みますが、再読はしません。

ただし、東野圭吾の作品は映画化されることが多いので、

小説を読んで、ドラマと映画も楽しむ感じです。

東野圭吾の小説はハズレがありません。

どの作品も面白く、多作でしかもすべて面白いというのがすごいと思います。

 

ランキングには入れませんでしたが、栗本薫の「グインサーガ」は大好きです。

100巻以上ありますが、自分は40巻まで読みました。

栗本薫の56才での死去は残念でなりません。

 

日本の文豪で好きなのは三島由紀夫と夏目漱石です。

作家としての三島は尊敬しますが、その死に方に関しては残念でなりません。

 

 

 

 

 

 

 

原題「The Institute」(2018年)

 

日本語タイトルが秀逸です。

原題はたんに「The Institute」ですが、

「異能機関」という内容が想像しやすい日本語タイトルにしています。

 

内容からすると「超能力養成機関」とかが無難だと思いますが。

「異能」というふだんは使われない言葉にしたことでこの作品への興味をぐっと引き寄せています。

この日本語タイトルをキングがどう思うか知りたいです。

 

日本語版では本作品が最新作となるキングですが、

70才を超えても創作意欲は旺盛で、ファンとしては嬉しいです。

本作も期待を裏切らない大作でした。

 

少年少女たちが力を合わせて悪に立ち向かうという展開は、やはり「IT」を思い浮かべます。

「IT」は凶悪不滅のモンスターとの闘いですが、本作は国家の闇の部分との対決となります。

つまり、戦う相手がもっとも大きな組織となっています。

そして、国家の闇の部分という点に関しては本作では明確に示されてはいません。

そこに作者の意図があると思います。

 

本作では正義とは何かを読者に問う展開になっています。

国家の正義のために利用される超能力を持つ少年少女たちですが、

その戦いの果てに待っていたのはたんなる勝利ではありません。

 

もう一つのテーマとして、

毎年数多くの少年少女が行方不明になっていることの問題定義があると思います。

もちろん、現実問題として本作のような異常な機関にとらわれているようなことはないでしょうが、

果たして行方不明の彼らに何があったのか?

それを考えさせる作品になっていると思います。

 

「IT」に匹敵する大作でありますが、

主要キャラクターの魅力という点では劣っている気がします。

登場人物が多いのが難点で、もっと主要登場人物の内面を掘り下げてほしかった気がします。

しかし、読みごたえ充分の作品であることに間違いはありません。

 

下巻のクライマックスへ向かう展開の面白さ、迫力ある描写はさすがキングです。

 

この大作を初めて読んだのが1990年か1991年です。

当時世界は激動の時代を迎えていました。

 

1989年にベルリンの壁が崩壊、

それをきっかけにして東西に分断されていたドイツが統一されました。

同年、日本は昭和天皇が崩御されて、平成が始まります。

1990年には第一次イラク戦争がありました。

1991年には、ゴルバチョフの登場によって大きく揺れ動いていたソ連がついに崩壊します。

 

そして、今も世界は激動の時代を迎えています。

アメリカのトランプ大統領の当選に象徴されるナショナリズムの台頭です。

自国第一主義ですね。

ロシアにはプーチンという独裁者がいるし、

イギリスのEU離脱もそうだし、

ドイツもきなくさい状況になってきました。

 

「愛と幻想のファシズム」をおよそ28年ぶりで再読しようと思ったのは、

そういう時代の流れを感じたからです。

 

再読してみて、改めてこの小説のすごさを感じました。

とんでもない小説だと思います。

 

読み終わって残念だったのは、

エンディングでの主人公、鈴原冬二の相棒・相田剣介(ゼロ)の自殺です。

これから鈴原冬二の日本統治が始まるという時にゼロの力が必要だったはず。

あまりにも悲しく予想外のエンディングでした。

何故ゼロを自殺させたのか、村上龍さんに教えてほしいです。

 

この小説で唯一残念だったのはそれだけです。

小説の構成、世界観、ストーリー、すべて文句なしです!

一人のハンターがある出会いをきっかけにして、カリスマになっていく、

その過程が実にユニークで面白いです。

 

登場人物たちも皆それぞれ個性が際立っていました。

政治結社・狩猟社の党首である鈴原冬二を支える主要メンバーである、

千屋裕之、洞木紘一、山岸良治、高榎通孝、片山敏治は皆、魅力のある人物でした。

特に私設軍隊「クロマニヨン」のリーダーのリーダーである山岸良治は強烈なキャラクターでした。

 

「愛と幻想のファシズム」を再読する前に

「コインロッカーベイビーズ」を再読しました。

 

何故なら、本作の主人公トリオである鈴原冬二、相田剣介(ゼロ)、フルーツは、

「コインロッカーベイビーズ」のキク、ハシ、アネモネの生まれ変わりだからです。

著者の村上龍が本作のあとがきで述べています。

 

なので本ブログで「愛と幻想のファシズム」に興味を持って読んでみたいと思った方は、

まず「コインロッカーベイビーズ」を読んでからにしてください。

 

この小説の主人公・鈴原冬二は、

日本文学においてトップ10に入ると断言出来るほど強烈で魅力あふれる人物だと言えます。

 

三島由紀夫が生きていたら、この作品を絶賛したと思います。

ちなみに今日は三島由紀夫の命日です。

 

「愛と幻想のファシズム」を現代風にアレンジして映画化してほしいなあ。

鈴原冬二を演じることの出来る俳優は誰だろう?

カリスマを演じることの出来る目力があって、半端ない存在感のある俳優です。

 

本作が発表されてから約30年経ちました。

村上龍さんに続編を執筆してほしいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

傑作です!

賞賛の言葉以外、見当たりません。
読みながら何度感激の涙を流したことか・・・。

主人公・国岡鐡造が石油ビジネスで成り上がっていく過程を通して、
明治・大正・昭和の激動の日本を見事に描いています。

全盛期の黒澤明監督&三船敏郎コンビで映画化出来たらなあと思いました。
脇役には、仲代達也、志村喬、藤田進などの名優を揃え、
主人公・国岡鐡造の妻には香川京子です。

三船敏郎は、主人公の国岡鐡造のイメージにぴったりで貫録があるし、
黒澤明監督ならきっとこの小説を気に入ったでしょう。

それはさておき・・・。

物語は昭和20年8月15日に始まります。
国岡鐡造は、妻と娘たちを疎開させていた地で、敗戦を知ります。

茫然自失としながらも、日本の復興を信じて、
会社を立て直すために東京に戻ります。

幹部たちからリストラはやむをえないという声に断固反対して、
国岡鐡造は、社員を誰1人クビにしないことを明言。
そのために私財を投げ打つ決意をします。

そこから2年間は、まさになりふりかまわずに仕事を探し、
本業以外のことでお金になる仕事を得て、
艱難辛苦の末、昭和22年に待望の石油ビジネスに戻ることが出来ます。

そこまでの2年間を描いたのが、序章及び第一章「朱夏」です。
主人公・国岡鐡造の60才~62才までの2年間です。

そして、第二章「青春」では、時代をさかのぼり、
国岡鐡造誕生の明治18年~昭和20年の敗戦までが描かれます。

若き国岡鐡造は、生涯の恩人である日田重太郎から出資金を得て、
25才で事業「国岡商店」を立ち上げます。

日田重太郎が国岡鐡造が独立したいのを見抜いて、
出資をすることを伝えるシーンは目頭が熱くなりました。

第三章「白秋」は、時間軸としては、
第一部のラストからの続きとなります。

国岡鐡造が国内外のあらゆる難敵と戦いながら、
イランの石油を輸入する過程を描いています。

第四章「玄冬」は、昭和28年~49年まで。
国岡鐡造が亡くなるまでを描いています。

大長編ですが、読み終えて、またすぐに読みかえしたくなりました。

大中小を問わず、会社経営者の方すべての人に読んでほしい本です。
会社とは何か、経営とは何か、経営者はどうあるべきかを教えてくれる小説です。

尚、国岡鐡造は出光興産創業者・出光佐三がモデルとのことです。
この小説を読んで、出光佐三がいかに傑出した人物であったかがわかりました。

面白いです!
ぜひ、お読みください。

【文庫版】海賊とよばれた男 上下巻セット 百田尚樹 講談社