私の直接の上司、トムにはセクハラの傾向があった。私に直接迫ってきたわけではないが、親密度の高い質問をしてきたり、体が触れる位置にわざと座ったりと、居心地を悪くさせる行動が続いた。同僚の話からすると、トムのセクハラ行動は他の女性社員数人にも及んでいるということだった。我慢しきれず、とうとう部長格のトムの上司に報告した。その後、部長はトムと話してくれたようで、トムのセクハラ行動はぴったりと止まった。実際おかしな話なのかもしれないが、セクハラを除いてみるとトムは実に良い上司だった。指導が上手で、いろいろなコツと技術を説明しながら教えてくれた。トムの指導のお陰で仕事が楽しかった。また、トムは普段は人を見下すことが多かったが、私に対しては尊敬の意を示してくれていた。仕事の分担の仕方や私の担当した仕事の評定によってそれは明らかだった。つまり私におもしろい仕事を回してくれたのだ。おもしろい仕事は目立つものが多かったため、良い仕事をすると私の評定も必然的に高くなった。私が個人的な事情で困ったときは、わざわざ自分の財産を犠牲にしてまで助けてくれることを提案した。さすがにそれは丁寧に断ったのだが、真の友情を確信できたようで嬉しかった。
ゲームの制作チームは全員で100人ほどの大きさだった。大きく分けるとチームは、エンジニア、ゲームデザイン、アートの3つの分野に分かれた。私はアートの分野で、更にアート内でも5つほどの小さなグループに分かれたその一グループに属していた。仕事部屋は二人が一部屋を共用する形で、たくさんの小部屋が並んでいた。私の仕事部屋はジェニーという女性と共用することになった。部屋は別々でも社員は自由に各部屋を訪問することができた。自由な雰囲気で、同僚と交流を深めることは簡単だった。お昼や夕食を一緒に食べたり、週末にハイキングに行ったりと、次第に同僚と友達としての付き合いも増えるようになった。ジェニーにはボーイフレンドがいたが、いつも二人の仲が揉めているようであることも電話の会話上明らかだった。部屋を共用しているとついに電話の会話が聞こえてしまうのだ。私の直接の上司は、私の属しているアートグループのグループ長トムという人だった。トムは3Dアニメーションの知識が豊富で、私にとって彼から直接学ぶ技術は貴重だった。ただ、トムは多少人を見下す癖があるようで、社内では彼のことを良く思っていない人は少なくなかった。