三つ子たちはとても仲がいいのです。そのためでしょうか?よく、こうして僕の発言に疑問を感じた時に同じように右側に首を傾げ、僕に問いかけてくるのです。
「え?だって、三人のお父様とお母様は仮面夫婦なのでしょう?ならば、僕のお父様とお母様も立派な仮面夫婦だよ!!」
夫婦歴としては僕の両親より三つ子の両親の方が長いのです。何せ、僕のお母様は一時期、『人質』として録の国に行っていたことがあるくらいですから。
だから、お母様は三つ子の母親にすごく頼っているところがあります。
子どもの育て方についても、すっごくたくさん教えてくれたんですって。
お母様にとっての『良き妻』であり、『母親としての理想』が三つ子の母上なのです。
「「「殿下……。」」」
「え?何?」
「「「仮面夫婦というのはですね。『仮面』な『夫婦』なんですよ。」」」
「?うん。」
『仮面』な『夫婦』という言葉を聞くと、思い出すのは以前行ったお祭りです。
お父様とお母様は円夏に内緒で僕を連れて城下町のお祭りに参加したのです。
そうしたら、お母様が可愛らしいリスの仮面を見つけられて。それをお父様は、自分自身とお母様の分を買い、その日一日中かぶっていました。
ちなみに僕はウサギの仮面です。…僕、犬がいいって言ったのに、お母様がウサギを主張するから買ってもらったものはウサギになりました…。お母様の意見が絶対の家族なのです……。
つまり『仮面夫婦』とは『一緒の仮面を被って仲良くする夫婦』のことを指すんですよね!!
「とっても仲良しの証拠なんだよね。本当、素敵だなぁ、三人の両親は。」
仮面も被っていないのに、『仲良し夫婦』って普段から言い合っているんだもの。すごいことですよね!!
どうしてお父様とお母様が三つ子の両親の『仮面夫婦』アピールにひきつった笑いをしていたのか分からなかったけれど、あまりの『ラブラブ』ぶりに呆れていたんでしょう!!
普段は自分たちが円夏に呆れられているのに。
「「「で、殿下………。ちょっ、本当、なんて的外れ………。」」」
「だから僕、録のお姫様…朱花姫に手紙を書いたんだ。」
先日、訪れた録の国のお姫様。僕と同じ年の姫君は、僕を見るとすぐに真っ赤になって隠れてしまいました。とても可愛らしい方だったけれど、会話が全くできなかったのは心残りでした。
でも、彼女を見つめていると心がほっこりと温かくなって幸せな気持ちになれるんです。
そのことをお父様に行ったら、もしあの姫君が僕を好きになってくれたら、僕のお嫁さんになってくれるかもしれないって言っていました。
円夏曰く、録の王家もそのつもりで僕と姫君を会わせたらしいから。
……僕、あの娘を幸せにしたいと思ったんです。だからきっと、僕の将来のお嫁さんはあの子なんだと思っています。
だから、手紙を書きました。
「結婚できる年齢になったら、僕と『仮面夫婦』になってくださいって。」
「「「……………。」」」
ヒュッと。
三つ子が同時に息を吸い込む音が聞こえました。
その後、沈黙が訪れること、およそ10秒。
「「「国際問題~~~~~~!!!!」」」
「ぅわ!!??」
「もう嫌だ、この王太子殿下!!」
「バカなの!?アホなの!!??一周廻って天才バカ〇ンなの!!!???」
「天然~~!!天然超怖い!!ヤバい、録と戦争とかシャレならん!!しかもこっちが勝っちゃいそうなのもまた怖い!!」
「確実に勝てるだろうけれど、俺らの家は平和であってこそ儲かる商売やってんだぞ!!戦争なんかされてたまるか!!!!」
「陛下~~~!!!陛下~~~~~~!!!」
「いや、それよりも王妃様だ!!王妃様のほうが録では人気なんだから!!」
「そうか!!香蘭様~~~~!!!」
三つ子たちは口々に叫びながら僕の部屋を出ていきます。
「……どうしたの?3人とも。」
あいさつもなしに出ていくって、失礼なことらしいですよ?
あ、よく考えれば、あいさつもなしに乗り込んできてましたね、今日も。
「そうか、いつものことか。」
お父様とお母様はいつも仲良しで。
円夏は毎日眉間に皺を寄せているけれど、特に悲壮感はないし。
雨帖は毎日軍部の特訓の指揮をとっているけれど、一度だって戦う姿を見たことがない。
三つ子はいつも賑やかに現れるし、弟妹達は笑顔で僕に構ってほしいととびかかってくる。
僕が暮らし…そして、いつか治める晶の国。
「いつも通り、平和な一日だね。」
この国は、今日も平和です。