はじめまして、皆さん。
息子です。
あ、今、「お前誰だよ?」って思いましたよね?
僕もそう思います。
でもね、僕、本誌で出番がなかったから。
というより、生まれてもいなかったから。
コミックス最終巻の最後に、チラッとイラストだけ出てただけだから。
あ、なんか分かったそちらのお嬢さん。
その通りです。
晶の国の王子(7歳)として掲載されていた僕です。
お母様の前にいたでしょ?あれが僕。だから、名前が公開されていません。
横顔だから分からないかもしれないけれど、両親どちらに似ているかと言えば、お母様かな?
円夏からはとても喜ばれています。
「性格がいい!!ちゃんと育ちそう!!苦労しなくて聡明な子ども、万歳!!多少ショタっ子っぽくても可!!」
……本当に喜ばれているんでしょうか?謎です。
ちなみに皇太妃陛下からは。
「………。魔性の性質を受け継いでいるのか?」
と、久しぶりにお会いした時に言われました。
その後、なぜか頭を撫でてくださり、その上で美味しい飴をくださいました。
今度、一緒にモ〇ハンをする約束をしています。初めてされるそうなので、「優しく教えてあげなさい」とお母様から言い含められています。
一緒に寝てくださるそうなので、それも楽しみです。
「皇太妃様もこの宮殿の魔窟に長らく住まう人間だからね。癒しが必要なのはわかるな~。」
お父様に皇太妃様から飴をもらったことと、遊びに行くことをご報告したら、嬉しそうに笑っていらっしゃいました。その後、「私も癒しが必要だから、ちょっと行ってくるね。」と言ってどこかに行ってしまわれましたが……その後に聞こえたのはお母様の悲鳴でした。
でも、よくあることなので、気にしません。
円夏も言っていました。
「宮殿で聞こえる王妃様の悲鳴の原因は陛下。そのため、かけつける必要はありません。」
僕もそう思います。
だって、お母様の危機にはなぜかお父様が必ず駆けつけて颯爽と助けてしまうのですから。
お皿を落としそうになったり。
転びそうになったり。
木から落ちそうになったり。
そうする度にどこからともなく、お父様は現れるのです。
そして、その後に円夏の怒鳴り声が響くのです。
仕事を放棄してお母様を助けるお父様を。
王妃なのに、なぜか料理をしたり木登りしたりするお母様を。
毎日毎日、怒ってばかりの円夏の眉間には、深い皺が刻まれています。
あれを刻み付けたのは多分、僕の両親です。
本当にごめんなさい。
それにしても、国の王妃の危機がお皿が割れそうとか、転びそうとか、木から落ちそうとかですんでしまうこの国は『とても平和で住みよい国』なのだそうです。
僕はまだ他の国を見に行ったことがないのでよく分かりません。
ですが、僕のお父様の『治世』になってからというもの、多くの物事が変わったそうです。
それは『庶民』であるお母様がお父様の正式な妻になれたことも大きな変化の一つなのだそうです。
僕は僕が大好きになって、相手も僕を大好きになってくれた人と結婚をするようにと両親から教えてもらっています。
でも、それは少し前の常識ではありえないことなんですって。
「まぁそうだよな~~~。他の国で庶民の王妃なんてさすがにいないからな~~~。」
「いけて愛妾だよな。」
「どこの王家の夫婦も大概ひどいからな!!よくて王妃との間に子ども作ってからそれぞれの好きな相手と遊びまくる。悪くて愛妾のみを愛して後宮泥沼劇場。」
「そうそう、それが常識。」
「その点、うちの国は王家のお家騒動も全くないから平和だよな~~。」
「王家のお家事情は国にも反映するからな!!そういう意味でも安泰、安泰!!」
その辺の事情を僕に教えてくれるのは、棟家の三つ子たちです。
彼らは彼らのお父様である叔豹おじ様の影響もあり、他国の情報をたくさん仕入れています。商売のついでに他国へ赴く時には、三つ子の誰か一人はついて行っているそうです。
年齢も近いことがあって、今後、家を継ぐ者以外が僕の側近候補になってくれるのだそうです。
お父様にとっての円夏と雨帖みたいなものなのだそうですが……。
……どうなんでしょう、僕、彼らがとても円夏や雨帖みたいになるとは思えないんですよね……。
だって、彼らの父親と性格が似ているんですもの……。
ちなみに三人とも、家を継ぎたくないそうなので、家より自由度の高そうな僕の側近の地位を狙っているそうです。
……帝の側近って、自由なんでしょうか?よく分かりません。
「ところで殿下はどんな女性が好みなんです?」
「おッ前、バッカ、まだ7歳の殿下に好みもクソもないだろが!!どっちかっていったら『お母様が僕の好み』なころだろうがよ!!」
「え~~~?でも、俺らにそんな頃、あった?」
「「あ、ないか!!だって俺らの親、仮面夫婦だもんな~~~~!!」」
「親父と母さんの関係見てたら、好みが母親にはならんわな~~~!!!」
ハッハッハ!!と楽しそうに笑う三つ子たち。
「?え?でも、『仮面夫婦』なんでしょう?」
「えぇ、それはもう、仮面な夫婦ですよ?」
「俺らが生まれる前も、生まれてからも、成長期の今も、安定の仮面夫婦ですよ?」
「えぇえぇ、多分、俺らが成人して独立して、二人がジジババになっても、安定の仮面夫婦ですよ。」
「?だったら、お母様に憧れるものではないの?だって、僕のお父様もお母様も『仮面夫婦』なんだから。」
「「「………………。え?」」」