その理由を教えて(3-4) | ななちのブログ

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馬車馬のごとく働く社会人ですので、更新スピードは亀ですが、よろしければお読みください☆

「これ以上、あなたを惑わすようなことをしたら…地獄にすら、居場所がなくなるかもしれません。」

「何を言っているんだ?」

 

 俺が地獄に堕ちるのならば分かる。 

 それだけのことをしたと思っているし、この一生をかけても許されない罪を背負っているのだから、俺は地獄に堕ちる。

 

 でも、最上さんに背負うべき罪などないだろう。

 

 不破に向ける憎悪を知っている。

 鬼や悪魔のような表情で、アイツに向かっていく姿を何度も見てきた。

 

 清らかなだけであった少女は、もういないことは分かっている。

 

 それでも、この娘は、地獄にいくほどの罪などない。

 それどころか、救われた人間がどれほどいると思っているのか。

 

「私は、あなたに幸せがおとずれないようにと、ずっと願ってきました。」

「え?」

「……罪深い女なんです、私は。」

 

 救われた人間の代表格たる俺が否定しようとする前に、突然出てきた信じられない言葉。

 

 彼女が、俺の幸せを、願っていない。

 

 俺を誰より幸福にしてくれた少女が言うには、残酷すぎる言葉。

 

「嘘だ。そんなはずがない。」

 

 ユルユル、と勝手に頭が左右に揺れる。彼女の言葉を否定したくて自然と身体が動いた。

 

「いいえ。このことは、社長さんも知っていることです。」

「え?」

「確認をしてくださってもかまいません。……さんざんお世話になった先輩の、幸せを祈れないような最低女なんです。私は。」

 

静かに微笑む最上さん。

その瞳に、嘘の色はない。

 

「だから、私は地獄に堕ちます。けれど…せめて、その呪いだけは解いてください。」

「……………。」

 

「私のために。」と力なく微笑む彼女は、触れたら今にも消えてしまいそうで。

今の彼女を否定しようものなら、俺の手の届かないところに言ってしまいそうで。

 

それでも…それでも、彼女への想いをなかったことにはできなくて。

 

 フルフル、と頭が横に揺れる。

 言葉は吐き出せなくても、身体は彼女の言葉を拒否した。

 

 最上さんは、彼女自身が発芽の魔法をかけ、俺が何度か枯らそうと足掻き、結局大切に育てることしかできなかった、大切な『想い』を消そうとしている。

 

 愛しい少女がいなければ生まれなかった感情。

 

 それを、愛しい少女自身に奪われようとしている。

 

 ドク、ドクと心臓が脈を打つ。

 胃が痛む。

 頭が痛い。

 

「敦賀さん、大丈夫です。『それ』はなくても生きていけます。」

 

 フルフル、と頭が揺れる。

 

「だって、それは、もともとはなかった感情なんですもの。」

「っ!!!!」

 

 完全な、否定の言葉。

 

 その言葉を理解した瞬間に、全ての音と、世界の色が褪せた気がした。

 
 
 
 

 

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