職業訓練校の修了まで、あと1ヶ月ほどというタイミングだったが、消防設備士の試験を受けるかどうか迷っていた。
理由は、すでに第二種電気工事士の試験勉強に取り組んでおり、2つの試験に向けて同時に勉強するのはかなりの負担だと感じたからだ。
さらに、再就職先も決まっており、そちらの準備もあったため、精神的にも時間的にも余裕がなかった。
加えて、消防設備士の試験日は電気工事士技能試験の翌週。かなりハードなスケジュールであることも、踏み切れない理由のひとつだった。
そんな中、偶然にも条件が揃い、甲種の試験を受験できることが判明。
それが最終的な後押しとなり、勢いで申し込みを済ませてしまった。
またしても手痛い出費だ。
さらに、参考書として「消防設備士第4類 甲種 上巻・下巻」という分厚い2冊を購入したことで、懐はますます寒くなった。
ここまで準備してしまったからには、もう引き下がれない。
いつものように、自分なりの勉強法で取り組むことにした。
この試験の厄介なところは、マークシートによる選択問題に加えて、記述式問題があること。
つまり、暗記すべき項目が多い。
特に甲種に関しては製図の問題も含まれているため、より一層の対策が求められる。
後半は問題集に時間をかけて取り組んだこともあり、選択・記述問題にはある程度自信がついた。
しかし、問題は製図だった。
試験当日──
いざ製図問題に取りかかると、頭が真っ白に。
見たこともない形式の問題で、全く理解できなかった。
「あ、これは落ちたな……」と思った瞬間だった。
試験後、正解を確認しようとしても、解答例すら見つからない。
あれは一体何だったんだろう。
ただ、不思議と「次があるさ」と思えた自分がいた。
どこかで再チャレンジを覚悟していたのだろう。
そうして気持ちを切り替え、結果を待った。
そして迎えた合格発表当日。
スマホを手に、いつも以上に緊張しながら確認すると──
「合格」
安堵と嬉しさがこみ上げた。
が、気持ちが少し落ち着いたのも束の間。
今度は年に一度しかチャンスがない「第三種冷凍機械責任者」の試験申し込みが控えていた。
息つく暇もない、とはまさにこのことだ。