技能試験当日。空は晴れわたり、強い日差しが照りつける中、息を整えて試験会場へと向かった。

車で向かったため駐車場の確保に苦労したが、ギリギリのところでなんとか停めることができた。


会場は、受験者であふれかえっていた。この資格がいかに人気で注目されているかを実感した。

もし今回不合格だったとしても、あと一度だけ技能試験のチャンスはある。

しかし、受験には時間もお金もかかる。この一発で決めたいという思いが強かった。


試験会場の机は長テーブルに2人掛けの形式。作業スペースは狭かったが、事前にダイソーで買ったボード上で練習していたことが功を奏し、少し安心できた。

空調も効きすぎるほどで、暑さの心配はなかった。

ただし、準備も含めた全ての行動が制限時間内に求められ、ゴミ袋や紙製定規の設置さえ許されなかった。


試験課題が配布されると、少し透けて見えたことで内容をなんとなく把握でき、心の中でガッツポーズ。

苦手な課題ではなく、むしろ得意で比較的シンプルなものだったからだ。

――だが、この“安心感”こそが油断につながった。


試験開始と同時に複線図を作成。ここは問題なくクリアし、気持ちに余裕が生まれた。

続いてケーブルを寸法通りに切り分け、シースを剥き始めたそのとき、思いがけないトラブルが発生。

絶縁被覆を傷つけてしまったのだ。見た目には分かりづらいが、曲げると銅線が覗いてしまう。

これまで練習でも一度も起こさなかったミスに、頭の中は真っ白になった。


「この程度ならバレないかも」「いや、一発欠陥だ、やり直した方がいい」

悪魔と天使が脳内でせめぎ合う中、判断を迷ったまま作業を続けてしまった。

その不安が集中力を削ぎ、さらなるミスを招く。

今度は露出型コンセントのシースを剥く際、寸法を間違えてしまったのだ。


ここでようやく腹を括り、最初のケーブルを短くリサイズして、やり直す決断を下した。

配線図に示された寸法の50%を下回らなければ欠陥扱いにはならない。

それを信じ、残り時間との勝負に挑んだ。


空調が効いていたはずなのに、汗が滝のように流れた。

しかし、なんとか制限時間ギリギリで組み上げることに成功。

見た目の印象が大事と聞いていたため、最後は形を整え、丁寧に仕上げた――つもりだった。


あとは神頼み。結果を待つしかない。


約1ヶ月後。恐る恐るインターネットで合格発表を確認したところ、番号があった。

念願の資格だっただけに、喜びはひとしおだった。


免状を取得した後、まず試してみたのは、自宅の片切スイッチの交換。

ワイドハンドル型のものに無事取り替えることができた。


……実際にやったのは、今のところそれくらいである。