そのオトコ、相棒につき(前編) | 創運の算命学士

創運の算命学士

朱学院系算命学の師範、せなです。


その男と再会した時には、まったくツキに見放されていたよ。

ある時、俺は騎士だった。
後にバルト3国と呼ばれる地を駆け、次々と城を陥落させていった。その日の目標は小さな城だったから、俺は油断していたのかもしれない。罠に掛かった愛馬が転倒し、俺は敵の眼前に放り出された。あと少しで、城を落とせるってのに。
 あどけない少年兵が脅えながら俺の顔を覗き込んだよ、そして小さな声で
「しょうがないだろ、戦いなんだから」と呟いて俺の喉に槍を突き刺したのさ。


いくつかの人生を交差させた後、
私たちは敵味方という関係性から抜け出す事ができた。


 精霊と薬草を操り自然の理に通ずる彼女は我が軍にとって重要な存在であったが、彼女と軍の関わりは極秘とされた。彼女も軍と関わるのは本位ではなく、半ば領主に脅されていたようだ。
 彼女を信頼していた領民の様子が変わったのはいつ頃からだろうか、
「悪魔に魂を売り払って力を得、さらに力を得るために人々の魂を狙っている。悪魔に力を貸している女、あいつは魔女だ。」そんな噂を耳にするようになった。
 領主が魔女討伐を命じたのは、それからしばらくたっての事だ。あの噂の出所が領主だとはにわかに信じがたいが、英知を知る者への畏怖と独占欲、なにか大きな欠乏感が領主を支配していたのだろう。
 私は部隊を編成して魔女を討った。
「討て!」号令の後、私は「仕方ないだろ、命令なんだから」と呟いた。


さらにいくつかの人生を交差させた後、俺とそいつは夫婦となった。

 協力しあう事も出来れば邪魔しあう事も出来る

 高めあう事も出来れば罵りあう事も出来る

 愛しあうことも出来れば、憎しみあうことも出来る

 尊敬しあうことも出来れば、軽蔑しあうこともできる

 とても自由な関係だ。

 敵同士で考え方が違えば殺しあわねばならないが

 夫婦だったら口げんかで済む、素晴らしいとは思わないかい?」



さて、事の始まりに話を戻そう