とある王様の物語(3/3) | 創運の算命学士

創運の算命学士

朱学院系算命学の師範、せなです。


 私は、いつものように 宮殿のバルコニーからこの国の街並みを見下ろしていた、宮殿の正面に民が集まり始める、そのような光景を見るのは始めてだった私が、これから起こる事件を想像できるはずもなかった。



 側近の一人が落ち着いた様子で駆け寄り、私に耳打ちした。
「暴動が起きました」
 私が、その意味が分からず問いただそうとして振り向いた瞬間、不意に私の視界が床に這った。

 冷たさを感じる首を触ろうと手を上げるが、上手く触ることが出来ない。我が手を見ようと視線を移したその先に、首を切り落とされた体が私の服を着て横たわっているのが見えた。流れ出る血の行く先には見覚えのある靴が並んでいる、見上げると大臣達の歪んだ笑顔が並んでいた。

 誰かが私の髪を掴み、私を高々と持ち上げると、歪んだ笑顔たちはいっそう歪み、くぐもった笑い声を発した。それは、欲望が達成される喜びと、邪悪な支配者から逃れることができた喜びに満ちていた。

 私の服を着た体が持ち上げられ、引き裂かれた。足が、腕が、胴が、刺され、切られ、裂かれていき、体はただの肉片になっていく、それを見る視界の端で、人知れず宮殿を後にするシヴァの姿を見たのが、私が王として記憶している最後の光景である。

大臣達は、私だった首を高々と民衆に突き上げ
「民の苦しみは今、終わったのだ」と宣言した。
それが始まりであることを気づく者は静かにその場を去り、
民衆は歓喜に震えた。

シヴァは、私を裏切ったわけでも私から逃げたわけでもないことは知っている。あの日私の人生が終わり、シヴァの人生は続いていた、それだけのことだった。




シヴァがあの日以降、何処で何をしていたのか私は知らないし、知る必要も無い。私にとっては<シヴァがやっている>というだけで十分だ。シヴァが選択したことならば、きっと誰かを幸せにしているはずだから。


再会した私達は、幾つかの修正プランを受入れた。

「教育とは、自分の才能を使って奉仕や表現をすることが出来るようにサポートすることである。」
「命の使い方は、命の長さと同じだけの敬意を持って優先される。」

「通貨の価値は金ではなく奉仕と表現によって測られる。お金は交換の支配的な仕組みではなくなり、数多くある仕組みの一つとなる。」

「歌唄いとごみ処理従事者、ダンサーと下水処理者は、同じ敬意と尊厳をもって扱われる。」

「寄付や奉仕、表現の大小で、その者の価値が微塵も変わることはないが、多く与える者は、それが自身の励みとなる」
「すべての存在とシステム(全世界)に敬意と尊重をもち、存在の一部としてシステム参加・奉仕していることを自覚する。」

・・・・・・

時間と空間という制限がない場所で、私とシヴァは多くを語り、理解し合った。


私は新しい体に入り、シヴァは残った。今の私が何をするのかは、私には分からない。私はゲームの中に身を投じ、私以外だった多くの人生の課題を終える必要もあるのかもしれない。
 今の体で、あの日から30年間で新しい世界の基礎を創るのかもしれないし、その作業に指導者としてではなく多くの人の一人として係わるのかもしれない。

次の体に入るときは、シヴァと同じ時代を選ぶのだろうか、それとも私が上に残るのだろうか。


私は、新しい世界を迎えるこの星の姿を、地上から見届けるつもりだ。



最後までお読みいただき、ありがとうございます(^^;