マフラーと燃費の関係 | 虚構の設計

虚構の設計

設計の立場から高専ロボコンに関して書いていました.
今は引退し,カブ90に乗っています.

そろそろ院試とかいろいろ本格的に準備する時期になってきましたね・・・

・・・バイクに乗るととても気持ちの良い季節にもなりましたw

暖かくなったので,久々に六甲山に行ってみたら,最高に楽しい

カブで六甲山は何度も走ってるけど,1年前より大分うまく乗りこなせるようになったかな

 

さて,院試に向けた復習も兼ねて,

よく巷で言われるマフラー変えたら燃費落ちたという話を熱力の観点から考えてみます

まず,マフラーを変えるとどのような影響が起こるでしょうか

計測したわけではありませんので憶測になりますが,いわゆる抜けが良くなった分,

多分,排気工程終了後もエンジン内部に残る排気ガスの量が減るように思います.

その分混合気を多く吸うようになるので,出力があがるのではないかと思います.

そこで,マフラーを変えた際に起きる現象として次の2つを仮定します.

・エンジン内部に残留する排気ガスの量が減る.

・同一スロットル開度であれば吸気する混合気の量が増える.

 

また,内燃機関の理論上の効率は次の式で求めることができます.

 

Q1:受熱量(燃料の燃焼による熱量)

Q2:放熱量(排ガスとして捨ててしまう熱量)

これをオットーサイクル(普通のガソリンエンジンの理論)に当てはめて考えると

なんかいろいろあって,次のように変形できます

(圧縮工程では周囲は完全に断熱した状態で圧縮して,

燃焼行程では限りなく一瞬ですべての混合気が燃えて,

膨張行程ではまた周囲は完全に断熱した状態で膨張といった感じです

ε:圧縮比

κ:比熱比(流体の種類と温度によって決まる定数)

 

この式をみると,エンジンチューニングでよく言われる圧縮比アップがいかに効果的かわかりますね

圧縮比は大きければ大きいほど効率が上がって,出力も上がる,いいことづくめです

・・・机上の計算ではですが...

実際にはノッキング(異常燃焼)の問題とかで,上限があります.

ただ,その上限は年々上がっているみたいで,昔のエンジンより最近のエンジンの方が圧縮比は大きくなっています.

その恩恵もあって,最近の車はガソリン車でも燃費がよくなっているんでしょうね

 

ちょっと脱線しましたね,話を戻すと,理論上は効率に影響を与えるのは圧縮比と比熱比です.

マフラーを交換しただけなら,圧縮比はもちろん変わりません.

なので,もしマフラー交換で燃費が変わるなら,影響を与えているのは比熱比ということになります.

比熱比は

空気だと1.4

二酸化炭素だと1.3

排気ガスには空気より多くの二酸化炭素が含まれているでしょうから,排気ガスの方が空気より比熱比は小さくなります

式を見ると,比熱比κは小さい方が効率が悪化するので,

排気ガスがより多く残留するであろう抜けの悪いノーマルマフラーの方が効率が悪化する???

 

ここで,もう一つ考えなければならないのが,比熱比は温度依存性があります

温度が高くなる方が,比熱比は低下する(らしいです)

そして,純粋な混合気を燃焼させるより,排ガスを含んだガスの方が,燃焼温度は下がる(らしい)

なので,結果的には排気ガスを含もうが含むまいが比熱比は大した差がないようです.

 

さっきの式から離れて,他のことを考えると,

他に効率に影響を与えそうな項目としてポンピングロスが思い当たります.

ポンピングロスはエンジンの吸気側と排気側の圧力差から生じる抵抗です.

これは単純に抵抗ですので,小さければ小さいほどいいです.

そして,これを小さくするには,スロットルをできる限り開ければよいのです

(余談ですが,ディーゼルの燃費がいいのはスロットルバルブがディーゼルには存在しないのも一因です.

スロットルバルブがなければ,ポンピングロスは小さくなりますので)

最初の方の仮定を振り返ると

同一スロットル開度であれば吸気する混合気の量が増える.

ということは,同一の出力を得るのであれば,スロットル開度が小さくなる

→ポンピングロスが増加する

 

よく,マフラーを交換したら以前より小さなスロットル開度で走れるようになったので,

燃費もよくなったといった旨の記述を見かけますが,

ポンピングロスを考えると燃費はむしろ悪化するのではないでしょうか

(余談ですが,自動車ではもはや一般的な装備になりつつあるEGRは,

排気ガスの一部を吸気側に回してやって,圧力差を小さくしてポンピングロスを低減するのが目的の装置です)

 

・・・ここまで頑張って理屈を述べてきましたが,ここまでの考察は,あくまでも燃料が完全に燃焼した場合の話なんですよね

あくまでも個人的な見解ですが,マフラー交換して燃費が悪化する一番大きな原因は空燃比が崩れてしまったからではないかと思います.

実際,私のマシンもセッティングが崩れてしまっている状態で乗ると,燃費が平気で20%ぐらい悪化することがあります.

なので,もしマフラー交換しただけでやたら燃費が悪くなっている方は,一度キャブレターのセッティングを見直すことをお勧めします.

ちなみに,私がマフラーを交換した前後では,多少は燃費が悪くなったところはあるものの,20%も悪化するなんてことは決してありません.せいぜい5%ぐらいでした

 

 

結論

・マフラー交換をするとポンピングロスが増えて燃費が悪化する可能性がある

・でも,やたら燃費が悪くなっている場合は,空燃比が崩れているのでは?

・他にも燃費に影響を与える要因はあるんだろうけど,これ以上は面倒なのでパスw

 

素晴らしく長々とした記事のわりに,ろくな結論が出ていなくてすみませんw