塩谷 哲&松本和将 2台ピアノジョイントコンサート | 転妻よしこの道楽日記

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昨夜は、塩谷 哲&松本和将 2台ピアノジョイントコンサートに行った。
@安芸区民文化センターホール、18時開演。
プログラムは、以下の通り。

(第一部)
ミヨー:スカラムーシュ(2台)
 Ⅰ Vif Ⅱ Modere Ⅲ Brazileira
松本和将ソロ(当日発表)
 ショパン:夜想曲 第8番 変ニ長調 作品27-2
 ショパン:ワルツ 第2番 変イ長調 作品34-1
塩谷 哲ソロ(当日発表)
 ビル・エヴァンス:Waltz For Debby
塩谷 哲:Valse(2台)

(第二部)
モーツァルト:2台のピアノためのソナタ ニ長調 K.448
 Ⅰ.Allegro con spirito Ⅱ.Andante Ⅲ.Molto Allegro
塩谷 哲: 組曲「工場長の小さな憂鬱」より(2台)
 Ⅰ.純白の野心 Ⅱ.森に棲む妖精たちのラベル貼り
 Ⅳ.慈愛  Ⅶ.彩られる明日へ
塩谷 哲:Spanish Waltz (2台)

(アンコール)
塩谷 哲:あこがれのリオデジャネイロ(2台)
ミヨー:「スカラムーシュ」よりBrazileira(2台)

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最初から最後まで、ふたりのピアニストの丁々発止のやりとりと、
そこから発散される「陽」や「正」のエネルギーを満喫させて貰った。
塩谷氏の、表現者としての、また作曲家としてのスケールにも圧倒されたし、
日頃はクラシック演奏家である松本氏の、モダンな即興演奏も素晴らしく、
ジャンルを超えた「音の楽しさ」が溢れるほどに感じられたコンサートだった。

初めの御両名の登場時、やや遅れて出てきた譜めくりストさんたちが、
とても可憐なお嬢さん御二人だったので、よく見たら、
コンクールの常連であり地元では既に将来を大いに期待されている、
中学生のMちゃんと高校生のKちゃんだった。
二人とも、演奏後いきなりステージ上で名前を紹介され、
塩谷氏からインタビューまでされて、本当はとても戸惑ったと思うが、
はにかんだ笑顔で、素直に答える様子が大変かわいらしかった。
昨夜は、このような演奏を、譜めくりを担当しつつ間近に観たり聴いたりでき、
きっと二人にとっても、またとない大きな収穫があったことだろう。

ところで、昨日のコンサートは、「2台ピアノジョイント」だったが、
私の印象としては、松本氏のクラシック音楽のフィールドよりも、
塩谷氏のラテンやジャズ、即興などの分野のほうに、
より力点の置かれた内容だったように思った。
純然たるクラシックは、松本氏ソロのショパンと、2台のモーツァルトだけで、
そのほかはすべて、近現代音楽と塩谷作品だったし、
演奏形態としても、「即興」が醍醐味となる構成になっていたからだ。

私は十代の頃からずっと、ロックでもクラシックでもOK(^^)、
という雑食系の音楽ファンで、ライブという形態も大好きだったが、
実はその一方で、意識的に「パス」して来たジャンルがいくつかあって、
そのうちのひとつがジャズ、特にモダン・ジャズなのだ。
ディキシーあたりなら、自分なりに好きか嫌いかの基準を持って聴けるが、
ジャズの時代が下り、長いインプロヴィゼーションが入る演奏形態になると、
私は自分の感覚がついて行けなくなるのを感じる。
長大な即興演奏の間、本来なら一緒に展開を楽しむべきなのに、
「今どのへんなのかな」「どうやったら終わるのかな」
と私はなぜか「完結の仕方」を探し求めてしまって、勝手に疲れる。
「どのへん」も何も、筋書きなどないのが即興の魅力である筈なのに、
私はその世界にうまく入ることが、感覚的に出来ないのだ。

そういう意味では、昨夜のコンサートは、
1曲目のミヨー『スカラムーシュ』は文句なく楽しかったが、
塩谷氏のビル・エヴァンス『Waltz For Debby』、
それに2台での塩谷作品『Valse』になると
自分的にやや、忍耐ゾーンに差し掛かった自覚があった(汗)。
私の感覚の中心に居座る、
「今、曲全体の中で、どの部分を弾いていることになるのか?」
を追い払うことが、どうしても出来ず、
音楽の展開に、無条件に自分の感覚を添わせることが出来なかった。
これは全く理屈ではなく、味覚とか嗅覚みたいなもので、
こちらのセンスがその部分をカバーしているかどうか
という問題なのだから仕方がなかった。

だから私としては、本プロの見事さは十分に頭では理解しながらも、
感覚としては、最後はクラシック……、
でなくとも、即興でないものを聴きたい、と途中から思い始めていた。
別にベートーヴェンなどを望んだわけではなかったが(爆)
その場その場の展開に必死でついて行くのではなく、
私のような者でも、もう少しラクに追える曲が最後に演奏されたなら、
今夜の私の幸せが完成するのだが…、という気分だったのだ(^_^;。
そうしたら、まるでそれを叶えるように、アンコールの途中から、
リフレインのように「スカラムーシュ」っぽいフレーズが登場して、
最後の最後がBrazileiraで終わったのは、最高だった。

このような形式のコンサートでなかったら、
私が決して自分から聴くことはなかっただろう、
と思われるジャンルの曲をいくつも聴くことができ、
自分の感覚が多少なりとも、新たに開拓されたのを感じたと同時に、
やはり自分がごく自然に、心から聴きたいと願うものが何であるか、
ということも、改めて認識できた、面白いコンサートだった。