郭先生に夢中 | 転妻よしこの道楽日記

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今月からNHKラジオで中国語講座を聴いていることは前に書いたが、
最近は、朝8時15分からの『まいにち中国語』のほかに、
昼0時25分からの『アンコールまいにち中国語』も聴くことが多い。

アンコールのほうは昨年度4~9月分の再放送なのだが、
私は去年、午後3時45分からの『ラジオ英会話』を聴いていたときに、
その直前に放送されていた、当時はアンコールでなく本放送だったこの講座の
エンディング部分をたびたび耳にすることになり、
講師の先生の独特の日本語が、とても印象に残っていたのだ。
「毎日、笑顔で、楽しく、この講座で、勉強しましょうネ」
と必ず最後に仰るときの、先生のイントネーションや声の表情が、私には、
それまで知っていた日本語にはなかったものとして、新鮮に聞こえた。

この先生は、シンガポール生まれの郭春貴(カク・ハルキ)氏で、
78年来日以来、外務省研修所や日中学院で講師をなさり、
NHK国際放送アナウンサーもお務めになったかただ。
先生の日本語発音は、日本人の日本語とは違う点が多々あるが、
私はある意味、最近の、表現力に乏しい殺伐とした日本語よりも、
郭先生の中国語風アクセントの日本語のほうが、よほど温かく、
言語本来の美しさにあふれているではないかと思っている。

中国語の会話文を発音する前に、先生は、よく
「笑顔も、忘れないでネ」
と仰るのだが、言語の習得のときに、発音より何より、まず「笑顔」への
注意を喚起なさるという講座の雰囲気が、私にはとても好ましく思われる。
確かに、正確な発音を心がけるあまり、眉根を寄せた思い詰めた目で、
「你好(ニーハオ)」と言われたら、それは会話ではないだろう(苦笑)。
どんなに初歩でも、その言葉が実際に発せられる場面で言うように、
発音する練習をするのが、言語習得、とくに会話練習の第一歩だ。
たとえ画面がなくても、笑顔は音声にちゃんと反映する。

郭先生はまた、聞き取りのテストのコーナーでは、答合わせのあと、
「全部できたヒト!よくできました、おーきなマル!!」
と言って下さる。
答案の真ん中に、大きなマルや花マルを書いて貰う雰囲気だ。
これが嬉しくない学習者なんて、いないのではないか。そして、
「間違えたヒトも、シンパイしないで下さい。必ず慣れマス」
とフォローも素晴らしい郭先生だ(笑)。

前回の会話では、「对不起(すみません)」を練習したのだが、
中国での「对不起」は、自分が悪かったときに使う言葉なので、
「申し訳ありませんでした」に通じる、明確な謝罪の意味合いがあり、
日本語の「どうもどうも、すみません」「ちょっとすみませんが」
などとはニュアンスが違う、ということを先生はお話になっていた。
日本語の「すみません」は、場の雰囲気を和らげる枕詞だったり、
『ありがとう』のかわりだったりすることも多いし、
少しでも相手の迷惑になることをこれからするかもしれないから、
礼儀として、先回りして詫びておく、みたいな使い方もある。

来日なさって三十年の郭先生は、今や「90パーセント日本人」であり、
中国で中国語を使うときも、最近では「对不起」をつい頻繁に言ってしまい、
「何も間違ったことをしていないのに、謝る必要はありませんよ」
と相手から指摘されることがおありなのだそうだ。

しかし郭先生は、
「私は、日本の、謝る文化が好きです。
自分から一歩下がったら、道が広くなるヨ
と仰っていた。
ああ、こんな平易な語彙で、なんと深く温かいことが表現できるのだろうか。
今時の日本人で、こんなに豊かな日本語を使う人は、滅多に居ないと思う。