『生え際の魔術師』という言葉を私が知ったのは、
今から三十年近く前に、多分さだまさしが言ったからだった。
そのとき私は、これが何かを踏まえた『もじり』であることは
直感的にわかったのだが、モトが何だったかを知らなかった。
『窓際の魔術師』?『ネット際の魔術師』?
○際の○は二音節だと思うが、窓際では魔術師が何をするのかわからない。
むしろ、スポーツ関係の絶妙なプレイのことという感じがするのだが、
バレーやテニスのネット際、なんかだと意味はともかくゴロが悪い。
壁際・ライン際・・・、どうにもしっくり来ないんだがホントはなんだっけ?
と私は長い間、疑問だった。
そういえば、『アドリブ・ザ・ブッチャー』というフレーズを聞き慣れ、
ブッチャーの名前を思い出せなくなって困ったことが、一時期あった。
アブドーラ・ザ・ブッチャーですね勿論。
って、関係ないけど今。
で、今夜、例によって広島×巨人をテレビで観ていた主人に、
「何際の魔術師、だったっけ?」
と訊いてみた。
だいたい我が家では、わからないことはまず主人に訊いてみるに限るのだ。
『フジテレビって広島では何チャンネル?』とか
『今度の資源ゴミの日っていつだっけ?』とか
『○○○○(←有名俳優等の名を入れて下さい)ってまだ生きてる?』とか。
すると主人は呆れて言った。
夫「そんなことも知らんのか」
私「すみません」
夫「それは『塀際の魔術師』だ」
私「『へ』?」
夫「『へい』!」
私「へえ~~・・・」
夫「だから塀じゃってば。今時はフェンスとかって格好いいこと言うけど、
昔の野球じゃ『塀』だったわけよアレは」
私「ほぅほぅ。ほんでその塀の上に乗ってパフォーマンスを・・・」
夫「違うっっっ!間違いなくホームラン、ちゅう当たりをやね、
塀によじ登ったりして見事にキャッチする選手がおったのよ」
私「いつ」
夫「戦前の巨人よ。平山菊二って人」
ほ~。
初めて知った。○際の魔術師、の原点は『塀際の魔術師』だったのだ。
長年の疑問だったが、自分がまさかこの年齢になって、
『生え際の魔術師』本人から教えて貰うことになろうとは思わなかった。