著者の真島久美子さんは、私より少し年齢が上で、
ライフサイクルの点で、いつも数年先を行かれているので、
書かれる本も、私の現在進行形の体験に近いテーマのものが多い。
私が結婚する前に『お見合いの達人』を出版されたのを皮切りに、
私の新婚時代には『結婚の達人』『結婚、見つけた!』、
私の育児時代には『たたかう!落ちこぼれママ』を、そして近年は、
『兄弟は他人の始まり――介護で壊れ行く家族』を書かれている。
文章から察するに、この方は非常にストレートな考え方をなさっていて、
私自身は、もしお友達だったら、やや、苦手なタイプかもしれない、
という気がするのだが、反面、直球勝負の本音が書かれている文章は、
わかりやすく、読み手を惹きつけるものだとも感じている。
同意するにしても反発を覚えるにしても、真島氏の本は、
最後まで読者を離さず、話を聞かせてしまう「力」があると思うのだ。
今回は、そんな真島氏の本として、やはり我が家にも無関係ではない、
『やっぱり公立!それでも私立?』というのを読んでみた。
お嬢さん二人の教育の問題は、この世代としては当然のことながら、
重要なテーマだし、内容的にも、私たちが日頃思い迷う部分、
――ゆとり教育の導入以来、公立で大丈夫なのか、私立は本当に良いのか?
というところに触れていて、タイムリーなものだったからだ。
例によって真島氏特有の、ぐいぐい引っ張る展開で一気に読ませて貰ったが、
内容的には、正直なところ、私には全面的に同意できるとは言えないものだった。
我田引水の箇所が多いのではないか、という気がしたからだ。
結論としていずれも公立中学に進むことになった二人のお嬢さんの、
それぞれの現状に、母親としての真島氏は肯定的であり、
よく言われるように「入学した学校が、結局、その子に最適の学校」
という話として読めば、とても納得感はあると思った。
しかし、それを一足飛びに、「公立か私立か?やっぱり公立!」という、
進学問題全般の結論として位置づけるには、取材範囲が狭いと思うし、
都合の良い具体例や証言のみの引用、という印象も拭えなかった。
上のお嬢さんは中学受験を敢えてせず、公立中学から都立日比谷高校、
下のお嬢さんは中学受験に失敗した結果として、公立中学へ進学、
それらの体験を通してわかったことは、
・大手塾は生徒ひとりひとりをカバーできないので問題が多い、
・私立中学高校に進んでも、満足している人は全体の二割、
・同程度の偏差値の高校を較べると、大学進学実績も私立より都立が上、
・大事なのは教科書中心の勉強、公立学校のスタイルが本来である、
等々であると、真島氏はこの本の中で書かれている。
それらの根拠となっているのは、友人知人の範囲のママ仲間の証言や、
娘さんを通して知ることとなった塾の先生のご意見だ。
一面の真理はあると思うし、私も自分が公立出なので、
真島氏の主張は理解できる部分が少なくないが、
それでも、一般論とするには強引な展開だというのが私の印象だった。
また、都立と私立の進学実績を、在籍者数や受験者数を見ないで、
単純に「合格者数」で比較しているのも、やや乱暴だという気がしたし、
同次元の「個人の体験」という話でなら、我が家の娘を通して見た、
私立の実態は、この本に書かれているものと、かなり違うとも言えた。
上のお嬢さんは、真面目で自己管理ができ、成績も良いようなので、
もし中学受験していたら「トップ校」に合格したかもしれない。
そこでの6年間が有意義で、更に成績が伸びたなら、きっと真島氏は、
「公立では望むべくもない教育環境」と絶賛なさったことだろう。
また、下のお嬢さんの場合、勉強はさほど得意でないようだが、
中学受験では、「作戦ミス」のせいで勿体ないことになった面が、
どうもあったと思うので、もしもっとうまくやっていれば、
第一志望でなくとも、どこか希望校に合格できただろう。
そうなっていたら、高校入試のない6年間の過ごし方に、
「教科書一辺倒でない、本人に合ったユニークな教育は私学ならでは」
と真島氏も満足なさったかもしれない。
であれば、その場合この本の題は『やっぱり私立!』だったのではなかろうか、
……などと、読みながら、ついパラレルワールドを想像してしまった。
当たり前のことだが、公立にも私立にもピンからキリまであり、
そこに子供ひとりひとりの個性の問題や、親の理想が絡むと、
どちらが良いなどと一概には決められないものだと思う。
また、二つ以上の学校に同時に在籍して比較検討することは不可能で、
受験体験談は最終的には、結果に対する満足度で語られることになるので、
行った学校が本人にとって楽しければ、
「なんと言っても公立は良い」「やはり私立を選んで正解」
のいずれの結論も、容易に導けるものだと私は思っている。
しかし、公立私立に関係なく、子供の入学した学校に親も満足し、
子供の選択を肯定できる、というのはとても良いことだ。
その意味で、真島氏のスタンスは娘さんたちを勇気づけるものであるし、
母親としての、あり得べき姿だとも思う。
また、今回の内容には直接関係ないが、
これまで、真島氏の著作を複数読んできた感想として、
この時期には、弟さんの独立の問題で悩んでいらしたのだ、とか、
こんな大変なときに、同時にご実家では介護問題があったのだ、などと、
一冊の本には直接書かれていない、周辺の出来事もいろいろと思い出され、
真島氏が複数の悩み事を抱えながら、果敢に乗り切って来られた年月に、
改めて、思い至ったりもした。
多くの場面で、頼る人も少なく、おひとりでことに当たられ、
さらに文筆活動も続けて来られたバイタリティに、
心から、敬意を表したいと思う。