第3章 Doom
「Cチーム、ただいま戻りました」
白衣を着た男はディスクをバトウに渡しながら、トレーラの重装機兵の積み下ろし作業を指示した。
「ご苦労」
「首尾はどうだったか」
バトウが続ける。
「10体のうち、1体は敵の攻撃により損傷。その時点でテストを切り上げて撤収しました」
「なに?」
バトウの顔色が変わる。
「一体どうやって・・・。」
「詳細はディスクに映像を記録していますが、カラーの隙を狙われました。」
「たった2インチほどの隙を狙われたか」
「ええ、敵の増援部隊ですが、撹乱された挙句に精密射撃を食らいました。あの手の連中がごろごろい
るとなると厄介ですね」
「・・・・わかった。ご苦労だったな。」
バトウは白衣の男をねぎらうとディスクを持って足早に研究室に帰っていった。
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「タナカ、これ以外で貫通弾の使える銃はないのか?」
SPAWNが兵器庫のカウンターで並んだ銃を見ながら嘆息する。
「ええ、これだけ、ですね」
タナカが申し訳なさそうに答える。
「でも、とりあえず精密射撃で敵の新兵器は撃退できたんですよね」
「撃退というよりは敵の都合で撤退したといったほうがあっているかも知れぬ。俺たちの火力はやつら
の半分にも満たなかったしな・・・・。」
「それに、倒したといっても時間がかかりすぎる。総出で精密射撃して漸く倒せるようでは、な。」
「確かに」
タナカがSKULLを見せながらSPAWNに問う。
「貫通力で言えばこれが一番だと思うんですが・・・・」
「反動が大きいし、精密射撃というよりは弾幕形成に近い代物だしな・・・・・・。」
タナカもその答えに消沈したように考え込む。
(10体程度でも、そうとうな破壊力だ。味方に精密射撃要員がそろっていたとしても倒すまでの時間
がかかりすぎて、その間に圧倒される可能性が高い。厄介だ。)
SPAWNも並べられた銃を見ながら何とか答えを引き出そうと考えをめぐらせる。
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欧州連合のなかで第4の経済力を誇るベルディエ連邦。
その首都セントレアから南に150kmほどの地中海沿岸に工業都市ラツィオにヴァンガードカンパニー
の本社は存在する。
創業者であるエリック・ヴァンガードは農業機械の開発生産により一代で巨万の富を得た。
農業機械の開発生産で得たノウハウを軍用トラックの開発生産に活かし、会社の規模は複数部門を抱え
た複合企業体として拡大の一途をたどった。
中興の祖であるマーク・ヴァンガードはその一部門に軍用トラックから派生させた「兵器部門」を設立
した。
息子のリーザ・ヴァンガードは父の設立した兵器部門の将来性に早くから着目し、積極的な施策を推し
進めた。銃のライセンス生産からはじめ、各国軍事産業界の信頼を得ると、ライセンス生産の種類を増
加させ、20年ほど前から自社製品を開発、販売するようになっていた。
ヴァンガードカンパニーが「死神」と揶揄される最大の理由はその企業形態が極端な二面性を持つこと
にある。
農業機械のトップブランドでもあるヴァンガードカンパニーは其の製品で世界の農業製品の生産効率を
毎年2%押し上げるといわれている。
南半球に多い、新興国、経済発展途上国からの支持は絶大で、ひいてはそれらの国から食料を輸入して
いる先進国からの信頼をも得ることにつながっている。
もう1つは軍事産業は武器の生産だけにとどまらず、傭兵の斡旋なども手がけるようになっており、世
界の傭兵の7割がヴァンガードカンパニー、またはその系列機関を通じての活動をしていると言われる
ほどだ。
各国、各地域の騒乱、内戦、紛争には必ずといっていいほど介在し、敵味方双方が同社の製品を使って
殺しあう、といった状況も珍しくはなかった。
かつてリーザ・ヴァンガードはCNNからの取材で、この相矛盾する二面性について聞かれた際
「我々は農業機械で世界の食糧事情改善に寄与し、軍事部門では人口の増加抑制に寄与している。これ
ほど世界に貢献している企業はないと信じている。」
と豪語したという逸話がある。
そして彼らの現在の「稼ぎ時」はウラルの内戦、まさに今、であった。
ヴァンガードカンパニー本社のテレビ会議室でリーザがバトウからの報告に聞き入る。
「・・・・以上です。」
バトウが報告を終わるとリーザがゆっくりと話し始める。
「ご苦労だった・・・・。問題はあるようだが、大きな話ではない。」
会議室に居並ぶ重役の顔をぐるりと見渡すと、リーザは一呼吸置いてさらに語気を強める
「ウラルの内戦で重装機兵のアピールを最大限行え!」
リーザは舌なめずりをしながらさらに続ける。
「人がいる限り、争いは絶えぬ。そしてわが社の製品がそれを後押しする。稼ぎ時を見失うなよ、諸君
!!」
第3章 Doom 完
Revengeに続く