小説:アサルト選抜チーム | RCSPAWNのブログ

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第3章 Desert Eagle

「でははじめよう」

そういうとマイバッハは居並ぶ"ウラルの光"上層部に手を挙げて座るように促した。

上層部といってもマイバッハが将軍で、他のものは大佐クラスが数名と後は中佐と少佐がほとんどだ。

彼らはこのクーデターでそれぞれがウラルの光の最前線を守り、攻撃を司る司令官である。

また、クーデターが起きた際に首謀者とされたマイバッハの下にいち早く集結し、その指示に従った、

いわばマイバッハの信奉者たちでもあった。

マイバッハはウラル国軍の将軍クラスでも実績、人望ともに抜きん出ており、そのため今回のクーデタ

ーを国民たちは大きな失望と憎しみをもって注視しているのだった。

室内の照明が落とされ、モニタがウラルとその周辺国の平面図を映し出す。

さらにその図上に丸や四角や三角といったマーカが表示される。

後方に控える情報将校が説明を加える。

戦況は戦線レベルで言えばほぼ互角。

ただし、重要拠点に関して比較すれば、正規軍がウラルの光の研究拠点や大規模補給拠点を

攻略しているのに対してウラルの光では拠点攻略はほとんどできておらず、

局地的なゲリラ戦での勝利がほとんどだった。

ゲリラ戦での勝利は一時的な戦線の維持には有効であっても押し上げることは難しい。

散発的な戦闘にならざるを得ない原因は物資および兵力の補充と前線、後方支援部隊との入れ替えがス

ムーズにできていない、物資については供給が需要を下回り、思い切った作戦行動の阻害要因となりつ

つあった。

マイバッハは戦況の概略の説明を瞑目、腕組みをして聞き入る。

情報将校は時折マイバッハの反応をうかがう様に言葉を停めるが、マイバッハはその度に頷き、先に進

むよう促していた。

情報将校はさらに説明を進める。

現在のウラルの光では内陸部の敵拠点を攻略するには戦線の兵站が延び過ぎていて、戦闘継続が困難な

部隊が出てくる可能性が高い。

そのため、内陸部での侵攻路以外に沿岸部からの攻略路構築が必要、といった趣旨だった。

「わかった。だが現在展開中の部隊を再編することはできまい。人物金のうち、人に関しては我が軍に

これ以上の余力はない」

上層部の一人が唸る。

「物、金についても潤沢とはいえんがな」

もう一人が応じる。

ウラルの光がウラル国内に侵攻した際、後ろ盾になっていた共産圏国家は、後ろ盾の事実隠蔽のため、

表立った支援は行わず、もっぱら資金面での面倒に終始していた。

ウラルの光はこの資金を元手に武器調達などを行っていたが、それも国際社会からの締め付けで調達先

は日に日に少なくなり、現在ではもっぱら死の商人と呼ばれる集団がその役目を負っていた。

当然、国際社会の監視の目は厳しくなる一方で、その資金武器の調達先の維持

すらも怪しい状況だった。

「もう少し待てば状況は改善するはずだ。総司令によれば新しいパトロンがついた、との事だからな」

(新しいパトロン、か)

マイバッハはこのやり取りを聞いて陰鬱な気分になった。

パトロンとはエラヌスのところで眼にしたヴァンガードカンパニーの事を指している。ただし、この事

実を知っているのはマイバッハとエラヌスの二人だけだ。

(部下の士気は高い。しかし、大儀実現の為に、手段を選ばず、と割り切れるものは少ない。早晩、こ

のパトロンの存在が知れればうちは瓦解するかも知れんな・・・)

「新しいパトロンとはどこだ?。クウェイドか」

パトロンの正体を知ろうと、皆が口々に周辺国や、共産圏の大国の名前を口にして、回りの反応を見始

める。

「静かに・・・」

そのざわつきをマイバッハが収める。

マイバッハはぐるりと居並ぶ上層部を見据える。

上層部のメンバーも襟を正すように席に座りなおし、マイバッハを注視する。

「パトロンは共産国家のとある国だ。故あって名前は明かせぬ。相手に迷惑がかかるからな」

「戦線維持のための物資、資金、兵力はそこから供給しはじめておる。いきわたるまでには時間がかか

るであろう。今しばらく辛抱してくれ」

そういうと、マイバッハは深く椅子に座りなおす。

情報将校が作戦会議の終わりを告げ、出席者は各々席を立つと、それぞれの仕官と帰りの段取りを組み

始め、やがて部屋はマイバッハと情報将校のみとなった。

マイバッハは瞑目したまま動かず、また、情報将校の存在に気付いてはいても、それほど気にしていな

い様子だった。

情報将校は意を決したようにマイバッハのそばに近づく。

「どうした」

瞑目したままマイバッハが問いかける。

情報将校は一礼すると低く押し殺した声で話し始める。

「将軍、パトロンというのは国ではなく企業、ではないですか・・・・」

マイバッハは微動だにせず瞑目を続ける。

暫く間が空いた後、もう一度情報将校が口を開く。

「将軍・・・・」

その瞬間、マイバッハは右手をさっと上げ、その後の発言を制した。

ゆっくりと情報将校の方に顔を向け、瞑目していた眼を開ける。

思わず、情報将校は直立不動の姿勢を取り直し、敬礼を行う。

「パトロンはとある共産国家、それ以外は言えぬ。」

情報将校はマイバッハとは目を合わせず、敬礼のまま言葉を発した。

「エラヌス司令官が取り付けたというパトロンですが、状況から考えて、共産、自由諸国、いずれから

も出てくるのは考えにくいです。

国連の眼をかいくぐって国レベルで資金や物資、兵力までの支援が表のルートで可能だとは思えません。

この状況で手を差し伸べるとすれば軍事産業系で地下にパイプを持つところだけではないかと考えます」

(確かに)

この若い情報将校のつたない情報とその分析力であっても、容易に導き出される結論だった。

「心配するな、支援は受けるが志を引き換えにしたわけではない。」

「わしは信用ならんか?」

情報将校は一歩さがって再度敬礼をする。

「申し訳ありませんでした」

そういうと情報将校は踵を返して部屋を出て行った。

(若者の信心を逆手に取るようで気が引けるが・・・・)

マイバッハはゆっくりと体を起こすと窓際にゆっくりと移動する。窓からは基地に帰るために砂漠を疾

走する高機動車が幾筋もの砂煙を立てて四方に散らばっていくのが見えた。


(そう簡単に悪魔にすべてを絡めとらせはせぬ。大儀成就のために必要な泥はわしが被る・・・・)

第3章 Desert Eagle 完

第3章 Steel Wheelに続く