第2章
**********Combination
「どうだ?」
いづいは双眼鏡を覗き込んでいる天才に声をかける。
「見張りが5、いや6名。思ったよりも手薄な感じだな」
双眼鏡から目を離すと天才はマスターのほうに振り返り、ちょっと困ったような表情を
浮かべる。
「どうする? すぐに制圧できちまう」
「それはそれでいい話ではあるがな」
その表情を見ながらいづいは苦笑いをしながら答える。
チームはウラルの西の国境近くにある研究施設の近くにいた。
反政府組織の拠点は攻撃、兵站のほかに、襲撃によって得られた政府系組織も含まれていた。
今チームが目標といしている施設も元は政府の研究所だった。
今回はこの研究所の内部に潜入して開発案件の資料を持ち出すことが任務だ。
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「研究所への潜入と資料の取得?」
いづいは思わず聞き返す。
「そうだ」
ガヤルドは表情を変えずにデスクに座ったままでいづいを見据える。
「悪いが俺たちは”傭兵風情”だ。こういった高尚な任務は正規軍の役割じゃないのか?」
例の一件もあり、いづいは皮肉を込めてガヤルドに問いかける。
「正規軍を今回の作戦に投入する余力はない。我々としても君らに頼むのは心外だ。」
ガヤルドはさらに続ける。
「この前はすまなかった。君らは正規派兵だったな。訂正する。 心外なことは訂正しないが」
いづいはそれに答えることなく踵を返すとドアに向かう。
「1週間以内に報告する。待ってろ」
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「OK。天才 リグ ロンズ Risa ハマ ジョー、制圧行動に入れ。俺とハマーン、SPAWNは内部に潜入する」
ばらばらとメンバーはそれぞれ行動に移り、天才が制圧の指揮を執る。
「標的確認」
コミュータから天才の指示が飛ぶ。
それを見ながらいづいとハマーン、SPAWNは研究所の裏手にある通風孔に近づく。
見張り役の兵士は周囲を警戒してはいるが3人の動きに気付いていないようだった。
(気が抜けてるな。無理もないか、ここを襲撃してと考えるやつはそういないからな)
ハマーンはそう考えながら傍らの刀に手をかける。
(近接戦闘なら戦闘要員だけ狙えるしな)
「いいぞ」
いづいがコミュータで天才に伝える。
とたん、3人の近くにいた見張りがもんどりうって倒れかかる。
SPAWNがそれと同時に飛び出し、その兵士が倒れるのを抱える。銃声が聞こえない分、人が倒れるような音は
より目立つ。
(よし)
いづいは軽く右手を挙げると通風孔に消えた。
それを見た天才がコミュータでさらに指示を出す。
「殲滅」
研究所の外にいた見張り兵がつぎつぎと倒れる。
「OK。俺たちも潜入するぞ」
通風孔は大人がしゃがんで通れるほどの広さで、3人はいづいを先頭にゆっくりと進んでいた。
通風孔のところどころにはダクトがあり、廊下を除き見ることができる。
廊下を行き来するのは白衣の人間ばかりで当然、通風孔の3人に気付くものはいない。
また、研究所といっても人数はそれほど多くないようで行き来もそれほどの頻度では無いのがわかる。
暫く進むと通風孔は行き止まりになっている。
「ここから内部に入る。気付かれたら個別に処理する、いいな。」
いづいから2人に指示が飛ぶ。
通風孔のダクトを用心深くはずし、内部に3人が降り立つ。研究所内部は青白い照明でてられている。
「ところで資料ってのは何だ?」
身支度をするハマーンがいづいにたずねる。
「細菌兵器だ」
「細菌兵器?。穏やかじゃ無いねぇ」
ハマーンがややおどけた口調で答える。
「開発中の試料、機器はすべて破壊。資料の類は持ち出す。敵の開発推進力は不明だがつぶさねばいずれ脅威となりうるからな」
「探すぞ」
そういっていづいはドアを用心深く開ける。
廊下に出ると3人はその光景に驚く。
幅2mほどの廊下は先が見えないほど長く、分岐がほとんど無い。
「気付かれたらアウトだな。」
SPAWNが念を押すように言う。
3人は小走りで奥へと向かう。
と、ドアが開き、中から軍服の男が出てきた。
男は3人を見た途端、銃をぬいた。
(反応が早い。逃げ場が無い!)
そういづいが思った瞬間、ハマーンが刀を手に前に踊りでる。
それを見た男は咄嗟に左手で腰からナイフを取り出す。
勢いのまま踏み込んでハマーンは刀を横に払う。男はその剣筋が見えているかのようにしゃがみこむ。
ハマーンは振り払った反動を利用して体をひねり、今度は蹴りを繰り出す。
(ほう。体の割りに敏捷だな)
SPAWNは後方の援護体制のままハマーンの挙動を観察する。
ハマーンの蹴りは男の側頭部を捕らえ、男は大きくよろめき後退する。しかしすぐに体勢を整え、ナイフで応戦する。
順手、逆手とすばやく握り替えてきりつける男にハマーンも応戦する。
二人の刀とナイフが接触するたびに金属音が鳴り響く。
(長引くと応援が着そうだな)
「ハマーン!けりをつけろ」
いづいの声がコミュータを通じてハマーンに届く。
「おう」
そういった瞬間、ハマーンが渾身の力で振り払った剣先が壁にめり込む。敵はしゃがみこんだ状態で右手の銃を構える。
人差し指が動き、硝煙がかすかに上がる。
(しくじった!)
ハマーンが死を覚悟した瞬間、男の右ひざが破裂したように血飛沫をあげる。
同時に拳銃からは軽く火花が散って当たるはずの弾丸はハマーンからそれるように
壁に当たっていた。
ハマーンは咄嗟に剣から手を離し男の首筋にひじを突き当て、即座に失神させた。
後ろを振り返るといづい、SPAWNが銃を構えていた。二人の銃口からほのかに硝煙が漂っている。
「何が起こった」
銃をしまいながらいづいとSPAWNが答える
「お前の刀が壁に刺さった瞬間、その刀身に弾を当ててやつの膝を狙った」
「俺は跳弾を使って拳銃の弾をはじいた」
「ハマーンもよくあの場面で突っ込んでしとめたな」
ねぎらういづいの言葉を聴きながらなお、ハマーンは目を見開いて思わず唸る。
「そんなことができるのかよ!」
「造作も無い。俺たちは選抜なんだぜ」
******Combination 完
******Boys And Girl に続く