乙川優三郎さんと言う人は初めてだったのですが、武家用心集という時代小説を図書館で借りて、朝の通勤の電車の中で「しずれの音」という短編を読みました。
夫に先立たれて女手一つで息子と娘を育て、息子は嫁をとり、娘は嫁になって家をでた。
ようやく安心したと思ったら倒れて半身不随になって寝たきりになってしまうおばあちゃんの話。
そうなるとあまり体も丈夫でない嫁は看病に耐えきれずに実家に帰ってしまう。
娘は面倒をみたくても、その時代のことで、結婚したらもう実家の面倒などみられない。
居場所がなくなって辛い思いをするおばあちゃんは果たしてどうなってしまうのか。
というようなお話しだったのですが、それが有ったからかもしれません。
帰りの電車でおばあちゃんの隣りが空いていて座れた。
途中から眠ってしまったおばあちゃんの様子を
なんとなく見ていたのですが、
小柄で、手なんか細くてしわが一杯有って、
すごく優しそうなおばあちゃんで、
見ていたら、何か、このおばあちゃんが幸せであるといいなあという気持ちがわき上がってきて、
泣きたい位愛しい想いが込み上げて来てしまったんです。
そんな気持ちが伝わったのか、僕が降りる駅の手前でおばあちゃんが目を覚まし、
次降りるんですかと向うから話しかけてきたんです。
ええ、おばあちゃんは、
私はもう少し先まで、
なんて会話をして、
それじゃおばあちゃん気を付けて、
といって席を立って、
最後に振り返ったらやっぱりこっちを見ててくれて、
手を振ってあいさつして別れてきたのでしたが、
不思議なほど強い心の通い合いが有ったような気がして、それは僕だけの錯覚じゃないように思えるのです。