友人よりCookeSpeedpanchro 40mm T2.3を譲ってもらった。
35mmムービーカメラ専用レンズCooke Speedpanchroは20世紀の映画産業を支えたレンズといっても過言ではない。
映画館のスクリーンという究極の大伸ばしを想定して設計、生産されたレンズはもちろん1本1本手作りで、一切の妥協のないつくりである。
今回のレンズはシリアルから1960年代のレンズでコーティングはブルー。シングルコーティングだと思われる。
レンズヘッドがアリフレックス用ハウジングに入っているような形状である。
ムービーカメラではよくある作りだ。
Taylor&Hobson社のレンズらしく隙間にぎっしり文字が刻印してある。かっこいいです!

Kinetalなどは後玉周辺の見えないところにも刻印が入っています。
ブルー~紫色のコーティングです。
レンズの左右に切り欠きが見えます。通常1つなのですがPanchroには2つあります。
このことによりレンズを上下ひっくり返して付けることができます。
そうすると・・
メーター表記とフィート表記を切り替えることができます。
あとフォーカスノブ(このレンズにはついてませんが、ピント合わせ用のつまみ)を左右逆にすることができます。アシスタントがピンを合わせる際に体をいれるスペースがない際や俯瞰での撮影などに役立ちます。完全に現場でしか必要ない機能ですが。
プロの現場でブラッシュアップされてきたパンクロならではの機能と言えます。
35mmシネカメラ用レンズの最高峰と言えるSpeedpanchroのライバルといえばZeissのCine-PlanarやAngenieux,Kinoptikであろう。特にCine-Planarは宿命のライバルと言える。
実は、このライバル関係は1900年初頭に始まる。1897年にCarlzeissのルドルフがPlanarによりダブルガウス型の基礎理論を確立する。
1920年にTaylor&Hobson社のリーがOpicでその可能性の扉を開く。その後1932年にリーによりSpeedpanchroが世に送り出される。
生みの親がZeiss、育ての親がTaylor&Hobsonと言える。
この2社の関係が良ければ最強のタッグになっていたであろうが、そうではなかった。
これは世の中的な流れであったと思われる。
20世紀初頭、斜陽であったとは言え世界の中心は大英帝国であった。もちろん産業革命以後世界の産業もイギリスが牽引していた。
この時代のドイツは急成長を続けヨーロッパの産業の覇権を取ろうと虎視眈々と機会を伺っていた。
そんな関係下での両者の関係が良好なはずはなかった。
Taylor&Hobson社はTessarをはじめとするドイツ勢の4枚玉をTripletのコピーだといい、PlanarをはじめとするダブルガウスもOpicタイプと呼んでいた。
Zeiss側がTessarをTripetのコピーではないと主張するのはこのことがきっかけであると思われる。
この関係性は一時期の日本とドイツの関係にも似ていて興味深い。
さて一時期Sonnarの陰に隠れガウスタイプは日陰の時代を送るが、戦後のコーティング技術解禁によりダブルガウスの時代が来る。PlanarとPanchroは映画業界という最高の舞台でしのぎを削ることとなる。
その戦いは両社の技術力の戦いであり威信を賭けた戦いであった。
それから80年にわたり両社は映像用レンズの世界で未だに技術を競い合っている。
ZeissのPrimeLensシリーズとCookeのPrimeLensシリーズは現在も映像世界で最高のレンズである。
余談であるが、現在のCooke社はTaylor&Hobson社のレンズ部門なのだそうだ。
Taylor&Hobson社が測定機器専門の会社になるにあたり、レンズ部門をCooke社としたそうである。
以前Cooke社が設計したTripletレンズをTaylor&Hobson社が生産していたことから考えると、今は昔の逆の関係になっていて面白い。
さて最後に写りです。
正式に撮影に投入していないのであくまで試写になります。
なんの写真かというと
鳥の群れがいます。
夕暮れです
拡大すると『Computer』の文字。どこにあるか探せないと思います。
正解はここ・・・って見えません。
和歌山ラーメンです
泡が立つのは美味しいラーメンの証拠と勝手に思い込んでいます。
口径食とエッジの共演
美しいです。
見ていただいてわかるとおり驚異的な解像力です。特に無限遠での解像力は最強だと思います。
F値は2.8です。
カメラがPEN E-P3であることを忘れてしまいそうです。1200万画素の写りではないと思います。
このレンズは四隅に若干ケラレを生じますが、フルサイズでも使えます。
α7Rで」撮影したら一体何が起きるのか、見てみたいです。