390.サイレント.ナイト.1 | マリンタワー フィリピーナと僕といつも母さん byレイスリー
夜の繁華街を一際ガッチリとした体格の男と3人のいかにも鼻の下を伸ばした男達がニコニコしワイワイと楽しそうにある場所を目指して歩いていた。



ガッチリした男の名前は大山大地、名字、名前と同じくガッチリと厳つい見掛けだが、実は一流の国立大学の法学部を出ていて空手の有段者でもある、弁護士も夢ではなかったが彼は非上場ながら当時ウィスキーでは日本でナンバー1の会社に入り営業として活躍していた、この時、37歳独身、この日、係長に昇進したので取引先の酒屋の社長達3人がご馳走してくれたのだ、浅草にあるドジョウ屋だったがドジョウ尽くしはどうも口に合わなかったようだ、その後、二次会に社長の1人が言い出し向かったのがフィリピンパブだったのだ、時は1985年、今から29年前、バブルにまっしぐらの時代だった。


大山「杉田社長、フィリピンパブって、フィリピンの女の娘たちがたくさんいるところですよね」

杉田社長「そうだよ、なに大山さんはひょっとして初めてなの?」


大山「えー、どうも外人の店というのは抵抗ありまして」


杉田社長「あれ、黒いの駄目なの?」


大山「いや、色は関係ないんですが、なんとなく近寄りがたいんですよね」


杉田社長「ふう~ん、まあ、一回行って見ればどんなところか解るから」

大山「ハア~」
余り気乗りのしない大山、これまでアジアの人たちと話しらした事のない大山だった、胸に突っ掛えるもの、それは「自分は国立大を出たエリートだ、こんな貧しい国の奴らとは近づきたくない」という物があった、「どうせ、2時間位付き合えば解放されるさ」と考えて我慢して付き合う事にした。


ビルの地下にあった階段を降りて行く4人、杉田社長がドアを開けると一斉に「イラッシャイマセー」と女性たちの大きな声が聞こえた、中に入ると右のソファーから立ち上がった10人ほどの女性たちが一斉に4人を見やる、杉田社長「どう、大山さん、この中にタイプの娘いるかな?」


大山「えー、いや、ちょっと、まだ、ハアー」


杉田社長「ハハハ、まあ、いいや、とにかく座ろうか」
杉田社長と2人の社長はオヒイキの娘の名前を言い、後は適当に付けてくれとボーイに頼んだ、店の奥では英語の歌を得意げに女性とデュエットしている客たちが、店は結構奥行きがあり入口の女性たちの他に20人ほどの女性が接客している。


フィリピンパブが初めてだった大山は珍しく周りをキョロキョロと見舞わしてしまった、そこにボーイに連れられて4人の女性がやって来て握手してそれぞれの隣に付いた、杉田社長と他の二人の社長はそれぞれ隣に付いた女の娘たちと顔馴染みのようだ、女性たちは茶褐色の肌の娘もいれば、日本人と変わらない顔立ちの娘も、大山の隣に座った娘はエンジェルと名乗った、ミニスカートがよく似合い、胸の分け目が目につくセクシーな娘だった。


杉田社長「エンジェル、その人フィリピンパブは初めてだよ、ガッチリしていい男だろ、ラッキーだなお前ー」


エンジェル「エー、ウソ、ジャア フィリピーナノ ハナスノ ハジメテ?」

大山「へっ、そうですね、始めてという事になりますねえ」


エンジェル「アラ、アナタ スゴイ マジメミタイネ、ワタシ スキニ ナッチャオウカナ~」


大山「えっ、本当ですか、いや、ちょっとそれは、まだ会ったばっかりだし、まずいですよー!」

エンジェル「ホ、ホントニ アナタ マジメネー、アコ ビックリシタヨ~」

杉田社長「大山さん、冗談だからねえ、本気にしちゃ駄目だよ」


大山「えっ、そうなんですか、冗談なんですか、あー、びっくりした」


エンジェル「チガウヨ、ジョーダンジャ ナイヨ、アコ マジメナ ヒトガ ダイスキダカラ」


杉田社長「そうか、じゃあ恋人になっちゃえよ、大山さん独身だぞ」


大山「いや、杉田社長待って下さい、勘弁して下さいよ~」


エンジェル「オー、アコタチ コイビトナルナ、ナッ!」

大山は戸惑った、始めてのフィリピンパブ、始めてのフィリピーナ、またその押しの強さとアッケラカンと言う話し振りに仕事一筋、硬派で真面目一筋の大山はどう対応すればいいのかが解らなかった、これまで自分が歩んできた道とは全く違う世界に飛び込んでいるような気がした。


エンジェルは大山のたくましい腕に豊満な胸を押し付けるように寄り添った、
エンジェル「ネエ、シングルナンデショ、コンド イッショニ ゴハンイコウヨ、ネッ」


大山「あっ、ご飯くらいなら、いいけどね」


エンジェル「ヨクソクネ、ゼッタイダカラネッ!」
エンジェルは名刺を渡し明日でも電話が欲しいと念を押した、携帯電話がない時代、電話をもらわなければその後はない事が多い、当時のフィリピーナは一度捕まえた相手を逃がしてはなるまいと必死に食らい付いた、4人は2時間ほどして店でた、出際にエンジェルから頬にキスしてもらい、電話の駄目押しをされた大山だが電話はする気はなかった。


それから1週間後、会社で伝票整理をしているときに一本の電話が入った、受けた女性は怪訝そうな顔をして電話を回した、そして、この一本の電話から大山の人生の歯車が狂い始めるのだった。



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