177.ハルの微笑み.121 | マリンタワー フィリピーナと僕といつも母さん byレイスリー
江川さんが何故アパートが必要だったのか、それは数人のフィリピーナを住まわせる為だったのです。



江川さんとは暫く遠ざかっていましたが、その間に上野広小路の店で知り合った花形さんとフィリピンの店に行っていたらしいのです、そこの店の女の子達に相談を受けて錦糸町に花形さんと300万円づつ出しあって店を開く事にしたらしいのですが、そして女の子達の住むところを確保するためにワタクシに相談してきたのでした。


ワタクシは夕子と相談し敷金代と引っ越しを手伝ってもらう事を条件に横川のアパートを引き渡しました、そしてワタクシと夕子は北口に新しく建った大きなホテルのそばのアパートに移ったのでした、それと同時にワタクシは思い出のある稲荷町の事務所も引き払いました。


思えば夕子もマリコさんも来た事務所、しかし何と言っても雪子がいつもタイ料理を作って持って来てくれ一緒に楽しく食べた事がワタクシの脳裏に残っていました、色々と問題のあった雪子でしたがワタクシにとって一番印象深い女性であったと思います、荷物も全てかたずけて何もなくなった部屋を眺め暫く1人思い出に浸っていたワタクシでした。


一方、錦糸町でフィリピーナ達と店を始めた江川さんと花形さん、飲み屋の集まるビルの4階の店は小さな店で4.5人のフィリピーナ達、チーフは花形さんがやり営業スタートとなったのでした、フィリピーナ達は皆ベテランばかり、それぞれ客を持っているという話という話を信じて始めたのです、しかしワタクシはド素人の江川さんや花形さんがやってうまくいかないのではと見ていました、錦糸町はこの狭い街に当時60軒とも70軒とも言われるフィリピンパブが乱立しており素人が割って入れるほど甘くはないと思ったのです。


本当ならワタクシもその店に顔を出すところなのですが、行きたくても当然夕子が許してくれません、新しくよしえママがオープンし夕子が働く店に行くのが関の山でスッカリおとなしくなってしまった牙を抜かれた猪のようなワタクシだったのです。


その日の夜、いつものようにワタクシがパチンコに興じていると3人の男達が入って来ました、その内の1人は毎夜やって来る常連の1人で10箱以上積んでいたワタクシにいつものように馴れ馴れしく話しかけてくるのでした、
男「アレーッ、また出してるのー、どうしたらそんなに出るのか教えてくれやー」
50代前半のこの男、名前は桐田さんと言い、内装業の社長をやっており現在まで長きに渡りワタクシと関係を持つ人物なのでした、ガラッパチの口調で明るく、憎めない性格、ワタクシは「オヤジ」と読んでいました、しかし曰く付きの人物でもあるのでした。


オヤジ「どこやれば出るかねー」


ワタクシ「そうだなー、奥から左の2番目200回転位回して見れば」


オヤジ「よしーっ、やって見るか」
と思惑通りに出て3万円ほど儲かると1万円を置いて帰るオヤジでした。


23時になりパチンコ屋も閉店しワタクシはよしえママの店の周り、或いは駐車場付近を巡回して回ります、以前2度入国管理局に踏み込まれたよしえママはワタクシに時々見て回ってくれないかと頼まれたのでした、入国管理局が来た時は即座に店に電話しなければならないのです、よしえママの頼みでは断れません、入国管理局のやって来る確率の高いのは月曜日から木曜日の間です、週末に収監すると職員が休めないからでしょうか、過去にやってきた日は少ないのです。


ワタクシが回っていると顔馴染みの韓国人の客引きのリュウ君が話しかけてきます
「社長どおですか、景気本当に悪いでしゅよねー」


ワタクシ「本当だよな、リュウ君は学生なんだろ、勉強してるの」


リュウ君「そうでしゅよ、でもお金ないですから、頑張らないと」
留学生のリュウ君、学費は仕送りしてもらっているものの生活費は自分で稼いでいたのです。


そしてワタクシがグルリと一回りして同じ場所に戻って来ると何やらリュウ君を囲んで騒ぎが起こっているのでした。



次回に続きます、何時もご訪問頂きまして誠に有り難うございます。