171.ハルの微笑み.115 | マリンタワー フィリピーナと僕といつも母さん byレイスリー
ドアを開けると鬼のような形相をした夕子が立っていました、そしてワタクシ目掛けて殴りかかって来るのでした。



ワタクシ「ちょ、ちょっと待て、どうしたんだよー、一体!!」
と言って夕子を押さえつけます、
夕子「アナタ ワタシノコト バカニシナイデヨ!!」


ワタクシ「何だ、何なんだよー!」
ワタクシは雪子が日本に来た事がもうばれてしまったのかと直感しました、ほんの30分前の出来事がもう伝わっている、タイ人のネットワークはワタクシの想像の上をいっていました、マリコさんの時も今回もあっという間に筒抜けになるとは恐るべき情報網を夕子は持っていたのです。


ワタクシ「いや、違うんだよ、日本に来たから別れる話をしたんだよ」
その場しのぎの嘘を言うしかないワタクシです、雪子が日本に来てから混乱しているワタクシの頭を兎に角休ませたかった、その為一時的でもこの場を納めたかったのでした、一瞬夕子の動きは止まりました、
「バカニ シテルジャナイノー!」


ワタクシ「いや、本当だよ、ホント」
どうやらとっさの嘘に引っ掛かってくれたようです、もし本当の事を言えば手首を切った時のように何をしでかすか解りません、この時の夕子は本当に何かしでかしそうな勢いがありました、ハグしてどうにか落ち着かせましたが、手負いの熊のようにいつ襲ってくるかもしれません、刃物類は手の届かないところに隠し夕食も近くのコンビニ弁当を買ってきて夕子と一緒に食べるのでした。

ワタクシ「ハハハ、豚汁、美味しいなーっ、なっ夕子!」
顔はニコニコと作り笑いをし「何やってるんだよー、何でこんなことやってるの、冗談じゃないよー、じょうだんたってマイケル.ジョーダンじゃないよ~!」と心の中で叫ぶしかない格好悪いワタクシでした。


その翌日、夕方よしえママの台湾料理店のオープンの初日を迎えワタクシと夕子はお祝いに向かいました、と言っても「今大変なんでしょ、お金もお花もいらないから食べにきてよ」とよしえママから言われたワタクシは恥ずかしながら手ぶらです、店に行くと見知った顔で溢れていました、タイで拳銃を突きつけられた芝山さん、先日結婚した平岡さんとリサ、他にも数人の懐かしい人達、本当なら本間さんも来ていても不思議はないのですが、実は本間さんに20万ほど用立てたのですが行方をくらましたのです、ワタクシは本間さんの父親に話をし返済してもらったのですが、本人からは連絡はありませんでした、夕子をワタクシが取ったと思い込んでしまったかもしれません。


本間さんは気のいい若者でした、そして彼の存在はワタクシの運命を変えました、タイで溺れた時に助けてくれ、リカコママの店に連れて行ってくれたのも、そして雪子に出会い、上野広小路の店も彼が連れて行ってくれマリコさんと結ばれたのも本間さんがいたからでした、そしてリカコママの店で知り合った江川さん、カッチャン、本間さんが連れて来た横田さん、思えばワタクシの色々な人生の中でも大きな歯車の役割を果たした本間さん、その後彼とは会っていないのですが、もしもう一度会えるならばか騒ぎしながら昔話でもしたいと思っている1人なのです。


皆で楽しく話ていると入り口から1人のタイ人女性が入って来ました、リカコママです、台湾人のよしえママとタイ人のリカコママ、お互いを認め合うライバル同士、いや今やタイ人の女性をおく店は減り錦糸町はフィリピン人をおく店の天下になっていました、よしえママは台湾料理店にリカコママはフィリピンとタイ人をおくパブを開きと新たな活路を見いだそうとしていまて二人はライバルではなくなっていました、この日は友人の1人として祝いに駆けつけたのでした。


ワタクシはリカコママに夕子に気づかれないように会釈を送り、リカコママもワタクシに気を使い軽く手を降って帰って行きました、ホッとしながら台湾料理に舌鼓をうち久しぶりに会った皆と談笑しているワタクシに次なる試練が待ち受けていたのでした。



次回に続きます、ご訪問いただきまして心より御礼申し上げます。