132.ハルの微笑み.76 | マリンタワー フィリピーナと僕といつも母さん byレイスリー
雪子「トップッカイ(猪八戒)キョウワ アリガトネ」


橋川さん「ハハハハハ、いきなり猪八戒ですか、かなわないなー雪子ちゃんには」西遊記の猪八戒とタイの女の子達からアダ名を付けられているジェントルマンの橋川さんは決して怒らない心の広い男なのです。


梅津君「雪子ちゃん本当に帰るンだよねー、でもまた直ぐ日本に来るんじゃないの」
梅津君が冗談で言った一言がまさか本当になってしまうとは、その時誰も考えてなかったのです。

ワタクシ「じょ、冗談じゃないよー、悪い冗談言わないでくれよー」
焼き肉にパクついているミユキもワタクシと同様にひょっとしたらという顔をしているのです、ワタクシとミユキは雪子の熱くなる姿を見ていただけにあり得ると思っていたのでした。


焼肉屋を出て皆で店に行くとカッチャンがスミレが待っていました、女の子達は雪子の方を羨ましそうに見ています、日本に来た時の代金300万円も払ってもらいおまけに家まで買って貰える、彼女達から見たら雪子はラッキーガール以外何者でもないのです。


雪子は皆に囲まれご機嫌でした、リカコママもやって来てまさにこの世の春と言った感じでかつてない幸せに浸っていたのです、皆にお別れと礼をいいワタクシと雪子は事務所に引き揚げました、残り2日間はタイの家族への土産物をアメ横やアブアブで少し買い物に行く位で後はマッタリと過ごしました、タイ人達とフィリピン人の違いはお土産を余り買わなくて済む点、また日本での観光にさほど行きたいと言わない点でした。


そしてワタクシが雪子を東京入官に連れて行く当日、雪子はワタクシの事務所に名残惜しそうにしていました、この事務所で二人で良く喧嘩し雪子の作って来たタイ料理を食べ、そして愛し合った日々を振り返っていたのでしょうか、珍しく神妙な顔をして狭い事務所を眺めていたのです、
ワタクシ「じゃ、行くか!」


雪子「ウン」
短く一言発して立ち上がりワタクシ達は板橋の東京入国管理局に向かいました、向かう電車の中で雪子はワタクシの肩にもたれ掛かり居眠りを始めました、ワタクシは雪子との始めからの出会いを振り返って物思いにふけっていました、雪と戯れる雪子、いつも朝ワタクシが来るのを事務所で待つ雪子、六本木でナンパされまくる雪子、
雪子「オニイチャン ドウシタネ?」
居眠りから覚めた雪子がワタクシに尋ねます、
ワタクシ「いや、何でもないよ、何でも....」


入官に到着し担当官に連れて行かれる雪子が2日したら飛行機の中で会えるというのに何度も何度もワタクシの方を振り返りました、名残惜しさが何故か残りました、「出来の悪い子ほど可愛い」ワタクシはこの言葉を噛みしめていました、直ぐ熱くなって騒ぎ出す雪子、お金もかかり面倒ばかりなのに何故か別れられない雪子、やはりそこに愛という物が存在していたからに他ならないのです。


そして2日後ワタクシは成田で飛行機に待合室にいました、しかし同じ便に乗るはずなのですが雪子も入官の職員の姿も見えません、ファーストクラスの搭乗が始まりワタクシは関係なく並び飛行機に乗り込みます、奥の席から「オニイチャ~ン、コッチナー」と手を振る雪子がいました、周りに数人のタイの女の子の姿があり雪子と親しそうに話していました、皆強制送還か自分で入官に出頭しタイに帰る子達で他の客に分からないようにファーストクラスの人達より雪子達は先に乗せられていたのでした。


そして、いよいよタイで家を買いに行くワタクシと雪子を乗せ飛行機は飛び立つのでした。



次回に続きます、いつもご訪問頂き誠に誠に有り難うございます。