107.ハルの微笑み.51 | マリンタワー フィリピーナと僕といつも母さん byレイスリー
パタヤからバンコクにトンボーイの運転する車で戻ったワタクシ達はホテルでチェックインし食事を取りに外に出ました。

外に出て5分ほど歩いたでしょうか、すると空がミルミルと真っ暗になり雷が「ドドォーン!」と凄まじい音をたて始めると同時にいきなりの豪雨に見舞われたのでした、バケツをひっくり返したような雨とは正にこの事なのでしょう、ワタクシ達はびしょ濡れになりながらもアーケードの下に避難したのですが雨水が数分で膝にまで達していったのですがハルや夕子達を見ると涼しい顔をして全く落ち着いているのでした。


日本であれば道路が20cmも水びたしになれば大騒ぎでしょうがタイ人達は豪雨も道路が川のようになってしまうのも毎度の事で慣れっこなのでした、雨は止みましたが水捌けが悪く雨水はなかなか引きません、しかしタイ人達は慌てません側にいる屋台のオバサンと談笑したりタバコを吸ったりとノンビリしたものなのです。


これが「マイペンライ精神」というものなのでしょうかタイではこの「マイペンライ」という言葉は色々な時に使われます、日本語では「気にしないでいいよ」「いいからいいから」的な言葉で寛容差や寛大差を示す時に使う事が多いのですが、「気楽にいこう」「なるようにしかならない」の意味合いもありタイ人の気質や精神にもつながる言葉でもあるのです。


結局水は2時間位で引き何事も無かったようにレストランで食事をする美女3人、日本人の色男(ちなみにワタクシです)1人、トンボーイの3人連れにタイ人達は「何だろう、あの連中は」と好奇の目を向けているのでした。


ワタクシが不審に思っていたのはトンボーイの存在なのでした、始めは車を出して運転手までしてくれる親切な連中だと思っていたのですが彼女達はいや彼らは男の心を持つ女性なのです、彼ら自身は自分は男と思っているのです、どうしてハルや夕子に親切にするのかそれは自分の女にしたい或いは自分の女だから親切にするという事なのです。


ホテルに帰ったワタクシはハルにその事を聞いてみたのですが、やはりなのでした、ハルは臆面もなくトンボーイと寝たことがあると言うのです、唖然とするワタクシです、といっても体は女同士なのでレスビアン的Sexをしていたと言うのです、ハルには女同士だから浮気に当たらないとアッケラカンと言うのですがワタクシは何だかよく理解しがたいのです。


余り怒る気にならずさりとてアッサリ許す気にもなれずただただ沈黙してしまう二人、その日はそのまま寝込んでしまうのでした、次の日の朝夕子達と一緒に食事する時も気まずい雰囲気でお互い口も開かないまま時ばかり過ぎていったワタクシ達。


一回ヘソを曲げてしまうと自分からは絶対謝らない頑固なハル、それから帰る日まで自ら口を開く事がなかったのでした、そして最後の日、ついに空港の入り口まで喋らない二人に一緒に見送りに来てくれていた夕子が見かねて声をかけます、ワタクシはハルをハグしキスし
「じゃあ帰るから、またな」と言ってもハルは答えません、ワタクシもいつもなら何度も振り返るのですがこの日は一度も振り返らず入り口の奥に入っていったのでした。

奥に消えていくワタクシを見送るハルは一言日本語で「バカッ」と呟きしばらくその場に立ちすくんでいました、「バカッ」とはワタクシに言ったのか頑固で意地っ張りな自分に向かって言ったのかは今となっては定かではありません、何故ならばワタクシがハルの顔を見たこれが最後となってしまったからなのでした。



次回に続きます。
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