最初に結果から発表すると、
「三度目の正直」vs「二度あることは三度ある」
勝利は「三度目の正直」でした。パチパチパチ
予約してから病院へ行ったものの恐ろしく込んでいて、時間になってもなかなか呼ばれない中、今度こそは最低限でいいのでアレやコレやがうまくいくようにと祈り続けた。
ようやく呼ばれて診察。やはり悪化しており自覚のないものまで指摘され愕然とする。それでも今回の先生は淡々と説明し、今後どうするのがベストかを提案してくれた。
入院、手術は避けられないが、以前の医者のように無機質で事務的な感じはまったくなく、こちらの状況を伝えるときちんと受け止めた上でさらに丁寧な説明をしてくれた。オレももう言うとおりにする他ないなと覚悟を決めた。
診察室を出る。
すぐに看護師の方がファイルを持って近寄ってきた。院内の簡単な地図を見せ、ペンで印をつけながら口早に案内をはじめる。
『それではですね、これから採血、採尿、心電図、レントゲンを行います。すべて終わりましたらまたこちらへ戻ってきてください』
「へ?」
そこからは目まぐるしかった。
方向オンチのオレにとって、まるで迷路のような大病院を右往左往しながらひとつずつ課題をクリアしていかなければならないのだ。
なんとかすべてを終えたとき、たぶんちょっと老けて、ちっちゃくなってたと思う。体感。
最後に入退院などについて諸々の説明を受け、やっとの思いで帰路についた。
ただすべてが順調というわけではない。色々とあるが、一番の不安要素は入院日が来年の二月半ばで、それまでこれ以上悪化せずにいられるかどうか。当然そのあいだは痛みや不自由に耐えなければならない。
まあ事前検査も済ませたし、大人気の先生がゆえの予定だから仕方がないのだが。
とりあえず、これで一歩前進しました。
こんなに手こずるとは予想外だけど、ようやく少しは明るい報告ができて安堵しています。
病状が急変した。
二回目に受診した病院の先生はしばらく放置していても問題ないと言っていたが、やはりオレの場合は違うらしい。
昔からそうだ。普通とか常識とかそういう物差しでみんなと同じようになれたためしがない。
何か秀でた才能、例えば絵を描くのがうまいとか歌が上手などといったプラスのことではなく、必ずマイナスな方のハズレをひく。
言っても詮無きことだとわかってはいても、一年以上まともに動けず苦痛に耐えていると知らず知らずのうちにアタマもおかしくなっているのかもしれない。まあもともと毀れてはいるのだが。
急激に悪化した病状は、ネットで調べても出てこず何かとんでもないことになっていると直感した。
寒い時期は別の持病が暴れだすから、春が来てから動くかと悠長に構えていたが、そんなことも言っていられなくなった。
この一年色々オレなりに頑張った結果、得たものは失望だったがまったく希望がないわけではない。
もらった紹介状。最初に行った病院ではあるが、診てもらった医師とは別の医師の名前がある。
なりふりかまってられない差し迫った現状。一縷の望みを賭け動くしかない。
初診で予約。最速でとれた来週に行ってきます。
九月半ばにようやく二度目のワクチン接種を終え、
少しのあいだ心と身体を休めてから再始動を目指す。
これまでの期間で調べられることは調べ尽くした。
その中から最低限でいいから条件を満たしてくれる病院と医師をひとつだけ探し出していた。
条件とは色々こまかいこともあるが、大きなものは日帰りか一日入院で手術が可能という一点だけだ。
我がままで入院が嫌だとかいう単純なことではない。
度々ブログでも言っているがオレにはたぶん精神的な持病があり、それによって外出もままならない状態だ。おそらくはパニック障害。もしくは躁鬱病。まあ病名なんてどうでもいい。堰を切ったときにどんなふうになるかはオレにしかわからないし、オレにもわからないのだ。
たぶんとかおそらくというのは病院にかかっていないからだ。ずいぶん前にいくつかの心療内科や精神科の病院をまわったがムダだった。だが知りたいと思っていたことは知れたのでもう用はない。わかったのは一度発症すると完治しないこと。頓服などで発作的な症状を抑えられる薬もないこと。それがわかればちょっと症状を緩和させる程度のもので通院しろなどバカげていた。ちなみにオレの病は静養などで回復するものではなく、花粉症や食物アレルギーのように徐々に蓄積していく。それがわかっていて通院させようとする医者には呆れる。そういう経緯もあって病院関係が嫌いなのだ。もっと言えば根深いものもあるのだが。
とにかく、ワクチン接種の副反応も軽く済んだようなので目星をつけていた病院へ行くことだ。それがオレにとってどれほど過酷であるかは省略。
その病院の先生はほとんどの手術を日帰りで行っていて入院希望者には別の、入院設備が整っている病院でもやってくれる。区からも名医に推薦されており技術もお墨付きだ。
これでようやく。
オレの手術は術後からが本番のようなものなので、一年近くかかってやっとの思いでスタート地点に立てる、はずだった。
先生の印象はとても良かった。
親切で明快でこちらの話もよく聞いてくれた。まずは病気のこと、持病のせいで入院が困難なこと、さらには通院もたいへんなこと。などなど。
先生はうんうんと頷き『そりゃたいへんだ』とまっすぐにオレを見た。思いがけず込み上げるものを感じてオレはうつむいた。
先生がぽつりと言った。
『でもね、ここじゃできないんだよ』
「え?」
『入院設備のある病院での勤務はもう引退していて、術後の責任が持てないんだ』
「でも日帰りで手術ができるって」
『発熱や出血とかね、入院してないと対処できないものもあるから。大きいところでやってもらうほうがいい。紹介状書くから』
視界が暗くなっていき、先生の声も聞こえなくなっていった。
帰宅するまでの記憶は曖昧で、呆然自失とはこのことかと思った。
手荷物の中から処方された薬や真新しい診察カードなどを取り出し、のろのろと整理する。紹介状。知っている病院名がそこにはあった。最初に行った病院だった。