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9 Doctors

Snow Manをイメージした医療物語を綴っています。ファンによる非公式・非営利の創作で、実在の人物・団体とは関係のないフィクションです。

 

 

手術は、たった数時間で終わる。

けれど――本当の治療は、そこから始まる。

一日。
一ヶ月。
そして、一年。

少しずつ、ほんの少しずつ、傷は形を変えていく。

それは、医者の技術だけではなく、
患者と医者が一緒に積み重ねていく時間。

これは、「明日には綺麗になれる?」

そう問いかけた一人の少女と、

その約束を、1年半かけて守り抜いた一人の医師のエピソードである。

 

 

 

 

 

 

笑顔の再建

「マイナスを、ゼロに戻す」。その圧倒的な救済の重みが、彼の心を震わせた。

 

 

しかし、形成外科の現実は甘くない。

 

ユミちゃん:

「……先生。私、明日には綺麗になれる?」

 

術後、包帯を巻いたユミちゃんに聞かれ、しょっぴーは言葉に詰まった。

 

 

移植した皮膚はまだ赤く、ここから1年以上のレーザー治療や圧迫療法が必要だ。

 

研修ローテの2ヶ月では、彼女の「完成」は見届けられない。

 

しょっぴー:

「……。……。あぁ。……でも、ここからは長いぞ。……。……お前が笑えるようになるまで、俺が……」

 

 

言いかけて、彼は口を噤んだ。

 

自分はもうすぐ、この科を去る研修医なのだから。

 

 

 

それから1年半。

 

 

Snow Man総合病院の形成外科外来に、一人の若きレジデント(専攻医)の姿があった。

 

 

渡辺翔太。

 

 

「直美」への道を捨て、あえて過酷な再建の道を選んだ彼は、今や病棟で一番「縫合が美しい」と評判の若手になっていた。

 

 

「次の方、診察室へどうぞ」

 

 

入ってきたのは、見違えるほど背が伸びたユミちゃんだった。

 

 

彼女はもう、フードを被っていなかった。

 

ユミちゃん:

「……渡辺先生」

 

しょっぴー:

「……お。……ユミ。今日で最後のレーザーだな」

 

 

移植した皮膚の色は周囲と馴染み、レーザー治療の成果で、赤みもほとんど消えていた。

 

 

しょっぴーはいつものようにぶっきらぼうに、愛用の(世界で一番映りのいい)手鏡を彼女に差し出した。

 

しょっぴー:

「……見ろよ。……俺の美学に合格だ。……最高に、良い顔してるぞ。」

 

 

ユミちゃんが鏡を覗き込む。

 

 

そこには、右の口角が綺麗に持ち上がった、満面の笑みがあった。

 

ユミちゃん:

「……。……。先生。私、……笑えた。……。……。ありがとう。」

 

 

彼女の涙が鏡を濡らした瞬間、しょっぴーの苦労は、すべて報われた。

 

 

研修医時代に見た「手術室の光」が、

 

――

 

目の前で本物の「人生の輝き」に変わったのだ。

 

 

 

夕暮れの医局。

 

 

ふっかがコーヒーを持ってやってくる。

 

ふっか:

「しょっぴー、お疲れ。……ユミちゃん、今日で卒業だろ? ……結局、ガッポリ稼ぐ夢はどうなったの?」

 

 

しょっぴーは、自分のよく手入れされた指先を見つめ、ふっと笑った。

 

しょっぴー:

「……。……あぁ。稼ぐのは、もう少し先でいいわ

……俺、気づいちゃったんだよね。……宝石や美容液で飾るより、失われた『笑顔』を再生する方が、よっぽど贅沢で、よっぽど俺の肌に合うってさ。」

 

ふっか:

「……。……。やっぱり、翔太は最高のツンデレだね。」

 

しょっぴー:

「うるせぇ。……。……。俺は世界一の形成外科医になって、ついでにいつか、世界一高い化粧品ブランドを作ってやるんだよ。……欲張りなんだよ、俺は。」

 

 

形成外科医・渡辺翔太。

 

 

彼は今日も、誰よりも肌をピカピカに保ちながら、誰よりもストイックな手技で、人々の「人生」という名の皮膚を繋ぎ合わせ続けている。

 

 

その指先が、今日も一人の患者の「明日」を創り出している。

 

 

 

 

 塚地ナースの「極秘メモ」

 「……ちょっと見て。渡辺先生、ユミちゃんが帰った後、カルテの最後に『Smile verified(笑顔、確認)』って書いて、一人で満足そうに頷いてたわ……!! ……。……。研修医時代は『直美に行く』って言ってたあの人が、今や病棟で一番レーザーの出力設定にうるさい先生になるなんて。……あぁ、しょっぴー先生。……その不器用な信念が、この病院の未来を、一番綺麗な色に塗り替えてるのね……!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

【あとがき】

第6話①、②はThreadsでは投稿していない新しく作ったお話です。登場人物のユミちゃんは、Threadsのフォロワーの方からお名前をお借りいたしました。ありがとうございました!

 

 

 

ーー次回予告ーー

 

次に渡辺翔太が向き合うのは、“傷”ではなく、
夢を奏でるための「指先」。

そしてオペ室では、
形成外科医の美意識と、麻酔科医の絶対権力が激突する——。

『……乾燥で、俺の肌が死ぬ。』

『……却下だ。』

次回、
「妥協しない理由」