形成外科医は、
傷を閉じるだけの医者ではない。
その人が、元の人生に戻れるかどうか。
その境界線を、たった一本の糸で決める仕事だ。
だから――
「これくらいでいい」
その言葉を、彼は決して口にしない。
未来を縫う指先
今回、しょっぴーが担当するのは、将来プロのバイオリニストを目指している高校生の女の子。
事故で利き手の指先に深い傷を負い、「もう弾けないかも」と絶望している。
他の医師が「機能的には問題ない」と判断する傷でも、しょっぴーは許さない。
しょっぴー:
「……ったく。救急でこれだけガタガタに縫いやがって。これじゃ、指の腹の感覚が変わっちまうだろ。」
阿部ちゃんやひーくんが緊急で縫った箇所を、わざわざ「再手術」してまで完璧を求める。
絶望してリハビリも拒絶する彼女に、しょっぴーがぶっきらぼうに言い放つ。
しょっぴー:
「おい。いつまで悲劇のヒロインやってんだよ。……俺がどんなに細い糸で、どれだけ時間かけて縫い直したか知ってんのか? 俺が『治る』っつったら治るんだよ。俺の技術を疑うな。」
数ヶ月後の診察室。
彼女が恐る恐るバイオリンを奏でる。その指先には、ほとんど目立たない一本の線。
女の子:
「先生……感覚、戻ってる。前よりも、弦の感触がわかる気がします!」
しょっぴー:
(少し照れくさそうに鼻をすすって)
「……当たり前だろ。誰が縫ったと思ってんだよ。……ほら、次回の定期検診まで練習しすぎんなよ。」
形成外科医・渡辺翔太。
彼は、ただ傷を塞ぐだけの医者じゃない。
「傷跡が残ったら、その子の心に一生影が落ちる。だから、俺は絶対に妥協しない。」
顕微鏡(マイクロ)を覗き込み、髪の毛よりも細い糸で神経を繋ぎ合わせる。
その凄まじい集中力に、看護師たちも息を呑む。
普段は「めんどくせー」なんて言ってる彼が、オペ室から出てきた時は、誰よりもボロボロ。
『あの子の未来、繋いできたから。』
不器用だけど、技術は完璧。
患者を思う気持ちがダダ漏れなしょっぴー先生。
湿度1%の攻防戦
【形成外科の顕微鏡下手術(マイクロサージャリー)の場面】
執刀医:しょっぴー
麻酔科:舘様
助手(見学かねて手伝い):阿部ちゃん
手術開始から数時間が経過。しょっぴーがボソッと呟く。
しょっぴー:
「……ねえ、なんか今日、オペ室乾燥してない? 俺の顔、パリパリになってんだけど。……ナースさん、設定湿度、あと5%上げられない?」
阿部ちゃん:
「しょっぴー、形成の細かいオペで湿度上げたら、顕微鏡のレンズ曇るし、視野もブレるよ?」
しょっぴー:
「俺の肌のコンディションも精密作業に影響すんの! ちょっとだけ! 1%でいいから!」
その時、モニターを眺めていた舘様が、静かに告げる。
舘様:
「……却下だ。」
しょっぴー:
「え、なんでだよ涼太! ちょっとくらい潤わせろよ!」
舘様: (優雅に指を立てて)
「加湿によるレンズの曇りは、術者のストレスを招き、オペ時間を延ばす。……それはつまり、患者が麻酔下に置かれる時間を不必要に延ばすということだ。……そして何より、今、患者の循環動態は完璧な状態を維持している。この環境を乱す者は……たとえ君でも許さない。」
阿部ちゃん:
(心の中で)
「(舘さん、カッコいいけど……結局、しょっぴーの肌より患者さんの状態が優先ってことだよね、正論!!)」
完膚なきまでに論破され、肩を落とすしょっぴー。
しょっぴー:
「……チッ。わかったよ。患者のためなら我慢してやるよ……。」
舘様:
「賢明な判断だ、翔太。……安心しなさい。オペが終わったら、私のとっておきの特製スチーマーを医局で貸してあげよう。」
しょっぴー:
「……マジで!? 早く終わらせるわ!!」
(結局、美容に釣られて爆速でオペを完遂させるしょっぴー)
Snow Man総合病院、第3オペ室。
形成外科医・渡辺翔太には密かな悩みがあった。
『乾燥で……俺の美肌が死ぬ……。』
加湿をねだる執刀医に対し、静かに「NO」を突きつけたのは、麻酔科医・宮舘涼太。
外科医がどれだけ叫ぼうと、
オペ室の環境を支配する「絶対権力」は麻酔科医にある。
患者さんの安全と状態を守るため、幼馴染のわがままさえも優雅に却下。
結局、舘様の「後でスチーマー貸してあげる」の一言でしょっぴーの執刀スピードが3倍になったのは、ここだけの話。
ーー次回予告ーー
完璧な手術をする医者が、
次に気にするのは……夜勤明けの
ナースの肌だった。
次回
「美は現場を救う 」
