「老後2000万円問題」って結局どうなったの?麻生さんの発言の真相と"今の物価"で検証してみた | 合理的生活と投資の実験室

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こんにちは!rational-labです!

2019年に大騒ぎになった「老後2000万円問題」、覚えている方も多いのではないでしょうか。

「金融庁が2000万円足りないと発表した」
「でも麻生さんがその報告書を受け取らなかった」
というニュースを見た記憶はあるものの、
・そもそもあの2000万円って何の計算だったのか
・麻生さんは何を否定したのか
・円安と物価高が進んだ"今"だと、その数字はどうなるのか
がずっと気になっていたので、当時の経緯と最新の統計を自分で調べ直してみました。

しかも「2000万円」という数字だけ見てもピンとこないので、今回は「自分が65歳になるまであと何年か」で考えてみることにしました。30代・40代・50代でそれぞれ65歳までの残り時間が違う分、物価上昇の影響も変わってきます。

【2000万円問題、そもそもの中身】

・きっかけは2019年6月3日、金融庁の審議会がまとめた報告書
・「高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上・妻60歳以上)」をモデルに、年金収入だけでは毎月約5.5万円の赤字と試算
・「当時の統計で全人口の約4分の1が95歳まで生きる」という前提から、老後期間を30年と設定
・5.5万円×12ヶ月×30年=約2000万円、という単純な掛け算がベース
・参院選を控えていた自民・公明の幹部から「年金不安を煽る」「乱暴な例示だ」と猛反発
・麻生太郎金融担当大臣(当時)は「正式な報告書として受け取らない」と表明し、事実上"なかったこと"に
・つまり否定されたのは「2000万円という数字そのもの」ではなく、あくまで「報告書を受け取る」という手続きの部分

【2019年→2026年、物価はどれだけ上がったか】

・消費者物価指数は2019年から2026年にかけて約14.4%上昇(IMFベースの統計)
・電気代は4人世帯モデルで2020年の月10,800円→2026年は月15,100円と約39.8%も上昇
・食品の値上げ品目数は2022年以降5年連続で年間1万品目超え、2026年は年間2万品目台に達する見込み
・身近な例だと鶏もも肉(100gあたり)は2019年頃130円台前半→2026年5月時点で154〜157円と約1.16倍に
・為替も2019年頃の1ドル108円前後から、2026年には162円台まで円安が進行
・家賃も、都区部のCPIベース(今住んでいる人が払う家賃)で見ると2020年以降上昇が続いており、2023年以降は特に上昇ペースが速まっている



【賃貸でギリギリ生活したら、65〜90歳の25年間でいくら必要か】

2019年の報告書のモデル(高齢夫婦世帯・月間支出263,718円)をベースに、持ち家ではなく賃貸でギリギリ生活する前提で、2026年の物価に置き換えて計算してみました。

・食費:65,804円→約75,300円(物価上昇分+14.4%を反映)
・住居費(賃貸想定):約60,000円(全国平均の2DK目安。都市部はこれより高く、地方はこれより安い点に注意)
・光熱・水道費:19,845円→約26,000円(電気代の上昇率が物価全体より大きいことを反映)
・その他生活費(保健医療・交通通信・教養娯楽・交際費等):137,233円→約157,000円(+14.4%を反映)
・税・社会保険料:約31,000円

合計すると月額およそ35万円。ここから夫婦2人分の公的年金の目安(モデル年金、月22万円前後)を差し引くと、毎月13万円ほどの赤字になります。ちなみに直近の家計調査でも、65歳以上の無職夫婦世帯では依然として月数万円規模の赤字が続いていると報告されており、この赤字構造自体は今も変わっていません。

13万円×12ヶ月×25年=約3,900万円

これが「賃貸でギリギリ生活した場合」の65〜90歳の25年間で必要になる金額の目安です。



【年代別・中央値でみると、2000万円じゃなく4000万〜7000万円?】

物価がこのペース(過去7年で+14.4%、年率換算で約1.9%)で上がり続けると仮定すると、65歳になるタイミングが遠い人ほど、その時点での必要額(名目の円ベース)はさらに膨らみます。今回の「約3,900万円」を年代別に65歳時点まで延伸し、実際の貯蓄の中央値(ゴールドトラスト調べ、二人以上世帯)と並べてみました。

・30代(65歳まで約30年):必要額の目安 約6,900万円/現在の貯蓄中央値 311万円
・40代(65歳まで約20年):必要額の目安 約5,700万円/現在の貯蓄中央値 500万円
・50代(65歳まで約10年):必要額の目安 約4,700万円/現在の貯蓄中央値 700万円

新NISAの生涯投資枠(満額1,800万円、つみたて投資枠+成長投資枠の合計、うち成長投資枠は1,200万円まで)を満額使い切ったとしても、30代でカバーできるのは全体の3割以下、50代でも4割弱にとどまります。

中央値で見た貯蓄額との差は、30代で約6,600万円、40代で約5,200万円、50代で約4,000万円。「2000万円」どころか、年代によっては4000万円〜7000万円規模の差になっている、というのが実際に計算してみた結果でした。



さらに厳しいのが「貯蓄の中央値」そのものの実感です。J-FLECの「家計の金融行動に関する世論調査2025」(二人以上世帯)によると、金融資産保有額は平均値1,940万円に対して中央値は720万円。世帯所得も平均536万円に対して中央値410万円と、平均と中央値でかなりの差があります。よく引用される「平均1,940万円」は一部の高額資産保有世帯に引き上げられた数字で、多くの世帯の実感に近いのは中央値の方です。



【今回分かった一番大事なこと】

麻生さんが実際に否定したのは「2000万円という試算そのもの」ではなく、「その報告書を正式に受け取ること」だった、というのが経緯を追って分かった一番の発見でした。

そして今回、年代別・中央値ベースで計算し直してみたところ、必要額は2000万円ではなく、30代で約6,900万円、40代で約5,700万円、50代で約4,700万円という結果になりました。新NISAを満額使い切っても届かず、現在の貯蓄中央値で見るとさらに厳しい、というのが正直なところです。

今の円安・株高・物価高という状況、そして政府の政策運営を踏まえると、「2000万円問題は終わった話」ではなく、「当時の前提自体が今の物価にはもう合っていない」というのが実態に近そうです。年金だけに頼ると詰んでしまう未来も十分あり得るので、早いうちから新NISA等で備えておくに越したことはなさそうです。

改めて年代別の目安をまとめると——

・30代:65歳までに約6,900万円(中央値ベース)
・40代:65歳までに約5,700万円(中央値ベース)
・50代:65歳までに約4,700万円(中央値ベース)

2000万円ではなく、これくらいの規模感で備えを考えておいた方が良さそうです。

※本記事の数値は各種公的統計・報道をもとにした概算です。前提条件や統計の取り方によって結果は変わります
※賃貸想定の住居費・光熱費・その他生活費への物価上昇分の反映、および年代別の将来延伸額は単純な試算であり、年金の見込み額や生活費の個人差は考慮していません。実際の必要額はご自身の年金見込み額・生活費・資産状況で大きく変わります
※投資や資産形成は自己責任でお願いします。税金・手数料は考慮していません