『救いたい』
(2014年/日本)

※ 注 意 ※ネタバレです。


『救いたい』は地域医療の苦労と重要性、そして麻酔科医という仕事を広く世に認知させた映画。
鈴木京香、三浦友和がいい。
中越典子、満島ひかり、貫地谷しほりも良い。

被災地で診療所を営み、朝から晩まで寸暇を惜しんで医療に従事する夫、それを献身的に支える妻、医療スタッフ、自衛官、地域住民たち。それぞれが痛みを抱えながら、それでも前向きに生きようとする姿を描く。


妻は自分が、夫にとって充分ではないという思いがあり、その事をある時、口にする。

妻「でも、貴方はうんっと子供好きなのに、私は子供を産めなかった」
夫「そら、半分は俺のせいだべ」
妻「でも、やっぱりそれは」と言い掛けるのを
「もうよせ」と遮り、
たとえ女房でも、俺の大事な女房の悪口を言う奴は許さんぞ
と叱るのでした。

なんと素敵な返しでしょう。
何言ってんだよ。そんな事、気にする事ないって。平気、平気。俺、全っ然何とも思ってないから。」程度の普通の返しでは、「子供が欲しかったハズなのに私に心配させまいとして気を使ってるんだわ。」と思わせてしまい、妻の負い目を消し去る事は出来なかったハズです。
しかし、この言葉はひとつで、「そう自分を悪く言うな」と言う慰めの気持ちと、「俺は我慢なんかしてない。お前に不満なんかない」と言う真実の気持ちが同時に伝わってきます。
女房の悪口を言う奴は誰であろうと許さないと言う事は、そう考える奴が居ただけで腹が立つという事。それはつまり夫自身、そんな気持ちを持つ者の側に居ないという状態を伝える事になるのです。
妻は長年の負い目から解放され、安息を得る事になります。

すごい台詞思いつく人もいるもんですね。

「ワシもあんな台詞言ってみてーわ」と思っても、いいセリフは良い人のモノなんですよね。「振り返ってみれば日頃から大切にされてた」って感じられるから、言葉に真実味が加わるんであって、普段、掃除の手伝いもロクにしない夫がこんなこと言い出しても、「なんだ?新しいゴルフクラブでも欲しいのか?」と勘繰られて終わりでしょう。

次、生まれ変わった時、名言の似合う人間になれたらいいなと思います。今回の人生は諦めます。次、人間に生まれてくるかな?コオロギだったらどうしよう。