ギャグアニメ『クレヨンしんちゃん』の放送が開始されると日本の子供達の間で大ブームとなった。
主人公は5歳の男の子、野原しんのすけ。
ユニークな発想から来るセリフや行動で周囲の友達から大人、老人、そして動物に至るまで、全ての生命体を振り回すパワフル幼稚園児。子供の浅はかさと大人の鋭さを併せ持ち、綺麗なお姉さんが大好きで、面倒事は大嫌い。くだらない事に全力を注ぐ一方、本当に大切な事からは、自分が不利になるとしても道を外れない。
強烈で魅力的で唯一無二のキャラクターは爆発的な人気を博した。
空気を読まない子供だからこその素直な発言が大人の心をグサリと刺すところや、大人なら恥ずかしいと思うような遊びも人前で平気で出来てしまう奔放さは、子供だけではなく大人にもウケた。
その代償として世間からの批判もあった。「教育に良くない」「子供が真似をする」など、放送中止を求める抗議が教育委員会やテレビ局に殺到した。そして「子供に見せたくないアニメ」として常に名前があがった。
このアニメの放送開始はなんと1992年である。記事を書いている今が2026年なので実に34年も前のアニメなのである。34年前はというと多様性が一般的な感覚となった今では考えられないほど「家庭はこうあるべき」「子供らしい態度」などの意識が強かった。そんな時代に“大人に対して生意気な口を聞く子供”が主人公のアニメを目にしてしまったら全ての大人がスルーするワケはない。問題視する大人が一定数現れるのは当然の事であった。
しかし、その「見せたくない」「不快だ」という批判よりも圧倒的に「面白い」「もっと見たい」という声のほうが大きかったのだ。そして、抗議の声に押し切られる事なく『クレヨンしんちゃん』は国民的アニメとなって今も放送が続いている。
その人気は日本を飛び出し海外にも輸出され、今では多くの国で『クレヨンしんちゃん』が視聴されている。
人気に火が付くと書店やコンビニでも『クレヨンしんちゃん』の漫画が目立つところに並ぶようになり、子供は「買って」と頼み、大人は「仕方ないな」と買う。そして、家でその本を開いた大人が衝撃を受ける。
漫画版『クレヨンしんちゃん』はアニメのコミカライズ(コミック化)ではない。漫画こそが元祖なのだ。まず漫画が発表され、その漫画をアニメ化したのがアニメ版『クレヨンしんちゃん』である。
そしてその原作となった漫画が発表されていたのが双葉社が発行している青年誌『漫画アクション』である。つまり『クレヨンしんちゃん』は青年漫画誌に青年向けギャグ漫画として連載されていたのだ。
テレビアニメ化する事になれば公共の電波に乗るし、何より子供向けに製作しているので、子供が視聴するにあたり問題となるような過激シーンは削ったりマイルドな表現に変えたりして作られた。
漫画には、夜、ひろしとみさえがいい雰囲気になって事に及ぼうとしてる最中に起き出してきたしんのすけが部屋に入ってきて2人が慌てるなどの下ネタがあった。そして、しんのすけに「二人とも裸で何してるの?」と聞かれ、時に「プロレス」、時に「相撲」と言って誤魔化していたが、アニメではどういう形で放送されたのだろうか?もしかしたらカットしたのかもしれない。
アニメがヒットしたら漫画も多くの人が読むようになるので、それに合わせ漫画の内容も全般が健全なものにシフトしていったので気まずくなるレベルの下ネタが載っているのは最初だけで、以降は、お尻とかチンコとかくらいの下ネタにとどめてある。しんのすけが頭にブリーフやズボンを被り、ほっぺたを膨らませて、口を肛門のようにすぼめて、顔をケツに見立てるのがケツ顔マンだが、あれはアニメでもカットせずやっていた。
とにかく、日本国民が知る大ヒットアニメは子供向けだが、その原作となった漫画は大人向けに発表されたものだった。という話である。



